ドラキュラ~乙女の日記より
ドラキュラ~乙女の日記より
Dracula:Pages from a Virgin's Diary
2004年11月28日 有楽町朝日ホールにて(第5回東京フィルメックス)
(2002年:カナダ:75分:監督 ガイ・マディン)
これはカナダのテレビ会社からの依頼でロイヤル・ウィニペグ・バレエの同名のバレエを映画化したものだそうです。
バレエを撮る・・・となると大体、客席から観客が観るようにダンサーの全身の動きや群舞の美しさなどを引きのカメラで撮るのが普通かもしれないのですが、そこは、それ・・・・ガイ・マディン監督、ただバレエのステージを撮るなんて野暮なことはしません。
彩色サイレント映画の世界から始まり、最初はバレエのバの字も出てこないのですね。美しい娘、ルーシーに突然襲いかかるドラキュラ伯爵、それに対抗しようとするルーシーの婚約者や婚約志願者の男たち、そしてヴァンパイア・ハンターのヴァン・ヘルシング博士の登場。
監督はこの映画を作る前に、バレエを観せてもらったけれど、ハンディ・ビデオを持ってでダンサーたちの間に入り込み、実際に踊っているダンサーたちの息づかい、観る者にはわからない振動などを体験して、この映画を作ったらしいです。
ですから、昔のサイレント・モノクロ・ホラー映画のように始まり、途中で急にバレエの群舞が始まるというのが実にスムーズにつながっています。
モノクロですが、血は赤く、そしてドラキュラ伯爵の隠し金は、鮮やかな緑色に着色して、なんともいえない不思議なドラキュラ物語を展開してみせてくれます。乙女の純白のドレスと黒の伯爵のマントが、モノクロの映像で際だって美しく見えます。
話は古典通りなのですが、ドラキュラ伯爵役を中国人ダンサー(この人が、とても美しい人なのだ)が演じていたり、曲はマーラーの世紀末感が漂う音楽で統一したり・・・と、バレエを習っている人から、今までのバレエ映画には不満が多かったけれど、この映画はまさにバレエをやっている人の息づかいが感じられる、という感想があったのが印象的でした。