オリーブの林をぬけて
2018.09.09 09:37
オリーブの林をぬけて
Zir-e Derakhatan-e Zeyton
2004年10月1日 渋谷 ユーロスペースにて
(1994年:イラン:103分:アッバス・キアロスタミ)
これは映画撮影の課程を描きながらキアロスタミ監督のストレートなメッセージが込められている映画でした。
地震にみまわれた(以前映画を撮影した)土地に戻って、『オリーブの林をぬけて』という映画を作ろうとする監督が主役の女性を選ぶところから始まります。
キャストは素人、スタッフも5人くらいですが、色々な事が起きます。素人を使って起きるハプニングをフィクションにとりこんで映画にしている、というちょっと不思議な世界です。
地元の人との話から地震の被害の大きさを知り、キャスト同士のいざこざからもイランの情勢や風習などをストレートに語らせています。
監督の未来にかける気持ちというのが子供に接する姿や主役になった青年ホセインの話を聞く姿に表されています。
ホセインは結婚するなら、字の読み書きが出来て子供を教えてあげることのできる女性でないと駄目だ、と言い張ります。
教育を受けられなかった自分を教育を受けた女性で埋めたいというのは今の日本では考えられないのですが、お互い足りない部分を補うというシンプルでストレートな気持ちを言いつのるホセインにだんだん共感がわいてくるのがまた不思議。妙な説得力がありますね。
そしてラスト、ホセインがオリーブの林を駆け抜けて・・・・白いシャツが点になるまでを凝視する5分にわたるロングショット。それはとても力強くて感動的で美しく目を離すことが出来ません。台詞はなくても風景で饒舌に語る名ラストシーンです。