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補法と瀉法の基本刺鍼(tonification&draining technique)

2018.09.09 13:33
補法の基本刺鍼(tonification technique)

補法は虚(deficient)、即ち生気の不足を補うのが目的。


毫鍼篇

☑古典

「補に曰く、之に随ふ。之に随ふの意は、妄りに行くが如し、行くが若く按ずるが若く、蚊虻の止まるが如く、留るが若く還るが若く、去ること弦絶の如し。左をして右に属せしむ。其の気、故に止まる。外門巳に閉じて、中気乃ち実す。」〈霊枢・九鍼十二原篇〉


☑技術革新

  1. 先ず選穴した要穴の標準位置付近でその穴が属す経上で最も凹んだ場所を探す。
  2. 捉えたらやや手前に戻り押し手の示指の尺側面で、その穴が属す経上に載せて切経し、ピタッと取穴する。
  1. 半月になるように、母指と示指の下面を合わせるようにして押し手を構える
  2. 穴に対して1㍉も沈めず1㍉も浮かさず重からず軽かろず圧0の重さで押し手を置く。
  1. 刺し手にて極めて軽く鍼を持ち、
  2. その鍼を経の上の方から引いてきて押し手の母指と示指の間に入れる。
  3. 鍼尖を穴に静かに接触させる。
  1. 接触させたまま鍼が撓まないように静かに押し続ける。
  2. 押すとは鍼尖が皮膚から離れないように接触し続けること。
  3. 気が至るまで接触し続ける。
  1. 気至るを度として押し手の母指と示指で左右圧をかける。
  2. 押し手の母指と示指で鍼尖が在るのを確認する。
  3. これを左右圧の限度とする。けっして左右圧をかけすぎない。
  4. 鍼体ではなく鍼尖の所在を確認することで押し手の下面が締まる。
  1. 抜鍼に至っては去ること弦絶の如く抜鍼するが、
  2. 鍼に付いた油を拭き取るように抜鍼する。
  3. と同時に間髪いれずに鍼口を押し手の母指か示指で閉じて蓋をする。
  4. 刺鍼の方向と一直線になるように、肘で引くように抜鍼し、大きく気を動かすようにする。
  5. 1拍おいて押し手を取る。


②鍉鍼篇

☑古典

「鍼、長さ三寸半、てい鍼は鋒黍粟しょぞくの鋭なるが如し、脉を按ずることを主つかさどる。陷すること勿なかれ、以って其の気を致いたすなり。」〈霊枢・九鍼十二原篇〉


※丸い玉が付いている方が尻尾、鋭利な方が頭。


☑技術革新

  1. 先ず選穴した要穴の標準位置付近でその穴が属す経上で最も凹んだ場所を探す。
  2. 捉えたらやや手前に戻り押し手の示指の尺側面で、その穴が属す経上に載せて切経し、ピタッと取穴する。
  1. 半月になるように、母指と示指の下面を合わせるようにして押し手を構える。
  2. 穴に対して1㍉も沈めず1㍉も浮かさず重からず軽かろず圧0の重さで押し手を置く。
  1. 刺し手にて、てい鍼を極めて軽く持ち、
  2. その鍼を押し手の母指と示指の真上から垂直に、押し手の母指と示指の間に入れる。
  3. てい鍼を淀みなくそーっと進める。
  4. てい鍼の尻尾が抵抗にあたったらそこを限度とし進めるのを止める。
  1. てい鍼を抵抗に当て続けたまま保持する。
  2. 気が至るまで保持し続ける。
  1. 気至るを度として抜鍼する。
  2. 抜鍼に至っては左右圧はかけない。
  3. 押し手の母指と示指の間を徐に垂直に抜き上げ抜鍼し押し手を通過させる。
  4. 押し手を通過していい加減のところまで抜き上げたら、1拍おいて押し手を取る。
  5. 鍼口は閉じない。
瀉法の基本刺鍼(draining technique)

瀉法は実(excess)、即ち邪気を取り除くのが目的。


☑古典

「瀉に曰く、必ず持ちて之を内れ、放ちて之を出す。陽を排して鍼は得れば邪気泄るることを得る。」〈霊枢・九鍼十二原篇〉


☑技術革新

  1. 最も邪の客している実所見を探す。大体が盛り上がっている。
  2. 最も盛り上がっている頂点に刺鍼するのではなく、その手前の盛り上がり始めに取穴する。
  3. 盛り上がり始めているところは登り坂や登山口のように角度がついていて虚したようにもみえる。
  4. 角度がついているので経に逆らって切経していくと山のふもとでピタッた止まる。
  1. 半月になるように、母指と示指の下面を合わせるようにして押し手を構える。
  2. 穴に対して1㍉も沈めず1㍉も浮かさず重からず軽かろず圧0の重さで押し手を置く。
  1. 刺し手にて補法よりもしっかりと鍼を持ち、
  2. その鍼を経の上の方から引いてきて押し手の母指と示指の間に入れる。
  3. 鍼尖を穴に静かに接触させる。
  1. 経に逆らって鍼を押す。
  2. 止まったら押すのを止める。
  3. 押す止めるを繰り返すと、ある時に鍼を押そうとして押せなくなる。
  4. この感覚を得たら、生気と邪気が分かれたとして、これを度として押すのを止める。
  1. 押し手の母指と示指で鍼が滑らないように意識し鍼先の方向に下圧をかける。
  2. 押し手の下面から出ている鍼先を意識し、その鍼先が止まるところまで下圧をかける。
  3. 鍼先が止まったらそこを度としてそれ以上は下圧をかけず抜きにかかる。
  1. 抜鍼に至っては、押し手の母指と示指で鍼に付いた油を拭き取るように徐に抜鍼する。
  2. 抜鍼後、1拍おいて押し手を取り去る。
  3. 鍼口は閉じない。
瀉法の各論
  1. 浮実(気の変化) 
  2. 弦実(血の変化)


  1. 塵(気の変化)
  2. 枯(気の変化)
  3. 堅(血の変化)


和法(Waho)は虚でもなく実でもなく、即ち気血の滞りを流し中和させるのが目的。

陰陽虚実補瀉調整の目的は生命力の強化

疾病とは、内因(怒喜思憂悲恐驚)、外因(風暑湿燥寒火)、不内外因(飲食労倦)の三因により、私たちが生きていくために必要な五つの大切な働きである五臓(肝心脾肺腎)の生気が不足することに端を発します。


四診を総合的に判断して証を導き、五臓を原とする主たる変動経絡の虚実を弁え、補瀉調整(生気の不足を補い、生気を妨害する邪気を瀉す)し、生命力を強化して、病体を治します。

その結果、病は癒えていきます。

「内傷なければ外邪入らず」「陰主陽従」に基づき、治療は陰経の補法から始めます。

整脉力豊かに陰経を補うことができれば、相剋する陰経や病症に関連する陽経に邪実が浮いてきます。

脉状に応じて各論的瀉法(瀉法・補中の瀉法・和法)を施します。

十二経の気血が平らかになり、五臓六腑のバランスが整います。

これを経絡治療の本治法とします。

鍼灸術の奥旨とは、正に生命力の強化に尽きます。

補法の基本刺鍼~応用編

ロングバージョン

ショートバージョン

補法の鍼~臨床篇
止め鍼

治療の最後は止め鍼をして、ドーゼの多少を調節します。

実際の本治法