見知らぬ女からの手紙
見知らぬ女からの手紙
Letter from an Unknown Woman(一個陌生女人的来信)
2004年10月27日 六本木ヴァージンシネマズスクリーン2にて(東京国際映画祭)
(2004年:中国:98分:監督 シュー・ジンレイ)
原作はシュテファン・ツバイク、アメリカ映画では48年に『忘れじの面影』として映画化されたものを中国に置き換えて映画化したものです。
時代は1948年の北京。1人の男が見知らぬ女からの手紙を受け取る。そこには、その男をひたすら慕い続けて死の床にある女の思いが綴られていて男は過去を振り返る。
18年前、13歳の少女の隣家に作家の男が引っ越してきた。その知的で洗練された男をひとめで好きになった少女。
しかし男にはつきあいがたくさんあって少女の秘めた想いまでは想像することも出来ない。
少女が遠くから憧れの人を見つめて、ちょろりちょろりと近寄っていくその課程がなんとも微笑ましいです。ピュアなドキドキ感が伝わってきます。
1935年当時の中国の石畳の街並みの風景も綺麗なのですが、なんといっても照明・・・光と影の使い方が美しいです。
夜のランプ、正月の花火、ダンス・ホールのきらめき・・・男の家の中の知的な雰囲気と洗練されたムードの照明。
映像も光と影をくっきりさせて色使いも抑えめで透明感あふれる、空気が綺麗な、というイメージを受ける映像が心地よいです。
よどんだ感じはしないのですね。
モノローグで少女の見返りを求めない恋の気持ちほど強いものはない・・・というように、彼女の思いはその後何があっても男に見返りを求めない、とても強いものです。少女が胸をこがすのは何よりも男の知性。
少女時代を演じた少女の目の力と、シュー・ジンレイの秘めた想いをいつもたたえている黒い瞳がとても情熱的。
少女が一生を捧げる男には、名優チアン・ウェンですが、外見ハンサムというよりまず、知的で包容力があって人間味あふれる魅力の方を強調していますね。
昔の中国からいったらインモラル的な生き方なのかもしれませんが、これはモラル的とかインモラル的という事よりも強く生きた1人の女の姿です。そして最後の最後になって手紙で事実を知る男の絶望。もういくら過去を取り戻そうと思ってもどうにもならないやるせなさ。
誰が悪い訳でもない、時代が国が悪い訳でもない・・・1人の人間が選んだ道をそれをまげることなく貫く強さって、中国映画に出てくる女性というのは強いことが多いのですが、このヒロイン、最強に近いかもしれません。