提案『素読の薦め』
これまでに読書に関する記事を提案してきましたが、ここからは子供達が声に出して文章を読むことの意味を素読、音読、朗読、黙読という4つの視点からそれぞれの効果について4回に分け提案して参ります。今回は欧州も驚くほどの圧倒的な識字率を上げたと言われる素読について話を進めます。我が子供たちも論語の素読はとことんしてきました。読む内容の意味も分からず何度も繰り返すことに「どうなの?意味あるの?」という意見を耳にしますが、文章を読みこなすためにはとても重要な読み方であることは間違いありません。今回はその素読について話を進めます。
『素読とは』・・・江戸時代寺小屋に於いて論語などの漢文を子供達が大きな声で一斉に読む教育法のことで、その文章を解釈をせず、内容を理解しようとせずに淡々と声に出して読むという教育方法のことを指します。これまでの偉人の記事をお読みになっている方は湯川秀樹博士や夏目漱石や森鴎外など多くの日本人の偉人がこの素読教育を受けていたと気づいておられたらそれは目の付け所が良いと思います。これは私の体験ですがある日突然日本語から外国語が飛び交う中にポンと放り込まれたら戸惑うことはもちろんですが、子供は柔軟さを持っているので数ヶ月である程度の意思疎通はできるようになります。外国語を入門から着実に積み上げるという方法ではなく、習うより慣れよということで進めていくと習得は早まりますし、効率よく色々な学びの可能性が広がることは間違いありません。その習うより慣れろを進めていくといきなり高いところに持っていくのでいざその学びが具体化し学び始めると一度刻み込まれていることが容易に引き出すことができるようになります。それが素読の魅力だと考えています。素読というと漢文を白文に読む下して声に出して読むことだけだと思うかもしれませんが、学びの幅も論語などに拘らずさまざまな文学に当てはめてもいいと思うのです。例えば英語の教科書でミス・グリーンやミセス・ブラウンを学ぶよりもシェイクスピアやジェームス・ジョイスの小説、ウィリアム・ジェームス哲学書を読んでも良いだろうし、それがあまりにも難しいのであればJ・K・ローリングのハリーポッターを英語で素読してもよいだろう。
高い頂でその素読をする世界観を味わいやがて学習する段階に入りそれを紐解いていくことは、段階を追って学ぶよりも遥かに意欲を持って学ぶことができます。何よりも文字を目で追った視覚経験を思い出し、自ら読んだ発声した声を聴覚で聞き、素読を家族や友人と行った経験は学んだ人々の声も耳から入り同時にその人々が身近にいたという皮膚感覚で感読する経験をしているのです。つまり五感で素読をしているという点で刺激の多い学びであることは間違いないのです。
それでは素読の特徴とその効果を考えてみましょう。
1、大きな特徴は日常使う言葉とは異なる言葉を文字として捉え読み、その言葉の響きとリズムを何度も反復することで脳を活性化するのが素読の大きな特徴です。目で見た文字を視覚認知し、自分自身の言葉で発声し、そしてその言葉を自分自身の言葉を耳で確認するこの3つの流れが脳を活性化することになります。
2、何度も繰り返し読むことでその言葉を心の言葉として刻み込み、その言葉の意味を理解できる年齢になると解釈を自分自身の中で思考しながら成長していきます。時間をかけて時には何十年もかけて精神的にこれらの言葉を理解していくのです。
3、共に多くの子供達が同時に素読を行うことができる環境にあれば子供達は素読を通して共鳴し合い、一体感を味わい共感することができます。この経験は共通の認識をもたらし心の融合を言葉を通して行うことになるのです。
4、素読は姿勢を正して大きな声を出し、ある程度の速度とリズムで滑らかに読むということと意味を理解しようとせずに何度も繰り返し読むということ意外に縛りはなく、区切るところや抑揚など気にせずに自由に読んで楽しむことが重要だと思うのです。
私が子供の素読の効果を親として感じたのはずいぶん年月が経ってからです。しかし素読から音読、朗読、黙読という段階を追うためには最も重要な入り口であることは間違いありません。