将来この業界に来てくれるみんなへ。
僕がツイッタを始めたばかりの頃、とりあえずファッション業界の人をたくさんフォローしだして感じたのは、一様に景気が悪そうなつぶやきが多いこと。
今フォローさせてもらっている人たちは、その中でも業界の将来を案じ、前向きこの業界に向き合っている人たちがほとんどで僕自身いつも心の拠り所にさせてもらいつつ激励してもらっている様な、そんな感じである。
先日そんな人々に感化されて、少し青臭いことを口走ったが、心から思っていることを呟かせてもらっている。
欲しいしか言ってない笑
だが事実、どの会社を見ても話題の特定会社を除いて今この業界に明るい話題は少ない。というか、ない。
僕は生地を作る仕事をメインにしているけど、生地作ってる工場も、糸屋さんも元気ない。
川上が元気ないということは、発注元である川中、川下はいよいよ元気ない。
仕入先工場からは「静かやなぁ」と力無い会話から始まり、「なんか(仕事)ないか?」という流れになることも多い。
なぜこんなに業界全体が活気を失っているのだろうか?
理由はいくつかある。
海外で安く物が作れる様になったから国内仕事が減った。
衣料品の供給が過剰で物が売れなくなった。
商品が同質化してしまった。
二次流通が台頭して新品の服を買わなくてもファッションを楽しめる様になった。
などなど、既に議論されている諸説があるので、その辺を改めて言うつもりはない。
なので、僕が思っていることを主観で語る。
異論もあるだろうけどとりあえず僕の主観で語る。
この業界の大人達の多くは良かった時代のやり方を変えることができず、偉くなっちゃった自分の自己保身が大切で、周囲の環境変化に対して真正面から受け入れることができなくなっている。
目新しい動きを取り出したチャレンジャーを一様に否定するところから始める。
「あんなのすぐ失敗する。」とか「あれはファッションじゃない」とか。
市場が受け入れても、彼らは受け入れることができない。
改めて新しいことを受け入れて苦労することに我慢ができない。
そして既存仕入先さん達に「言うことを聞かなければ仕事を切る」などの方法で仕入原価を恫喝の様に圧縮し、売れ行きが悪ければ販売スタッフや企画のせいにしたりする。
そんな人たちが核にいる会社の服が社会に出て受け入れられるわけがない。
企画も無能化している。先述の厄介な大人達のせいで、デザイナー企画陣が異常なSKUを1人で負担しているケースが多い。
1人頭で抱える量が多いと言うことは、服一枚の企画にかける時間が減る。
どこかで見た商品のコピーでネームだけ変える様な企画が増えてくる。(これは売れている商品を作らなければいけないと言う上のプレッシャーにより、他社で売れている商品をコピーする部分もある要はパクリ)
それでも作り続けなければ店頭が寂しくなるからやらなければいけない。
生地もデザインに合わせて作るなんて知識を持ち合わせていない。
とりあえずそれっぽい生地を生地屋から引っ張ってくる。もしくはOEM業者に製品セットで提案してもらっちゃえばいいやってノリで仕入先に丸投げ。
売れてるやつ教えてくださいなんて、企画の人が言っちゃってる。
そんなとりあえず作らなきゃいけない企画商品に人が魅力を感じるわけがない。
OEM業者、および生地問屋等の川中業者、またそこに従事する工場も、売り上げを上げていくことに意識が集中しすぎていて、アパレルメーカーへ向けて提案するものも製造ロットの奥行きが欲しいため同じ様な商品を提案しがちである。売れている素材が集中すると言うことはそれだけその生地を使っているブランドが多いと言うことだ。どこそこで採用されたその情報を元に営業をかけてる。
「〇〇はこの生地でプルオーバー作ってめっちゃ売れてるみたいです!」とか「この型は〇〇がやった企画で・・」なんてのが横行してたら、そりゃ店頭が同質化する。
そうやってメーカーに媚びてかないと数字取れないと思ってる中間業者が多すぎる。
まぁこれは媚びないと仕事くれないややこしい大人がお客さんだから仕方ないって泣き寝入りしてる工場さんたちもたくさんいるので気の毒ではある。
「〇〇(ブランド名)みたいなショア感がある企画提案してよ」なんて脳みそ一個も使ってない提案要求してくる企画者に振り回されてサンプル作っては、サンプルが思い通りに上がってないと受け取りや支払いをしてくれない人たちに怯えながら仕事している。
この様な事例はごく一部の人たちと言いたいところだけど、大手メーカーのほとんどはこんな状況である。
この一連で生み出された商品が原価率25%前後で売られている。
ひどいところだと15%とか。
買わないよね、絶対。
ただでさえ欲しい服がなく、「ファッション」売ってるはずの大手の人たちが右倣えの企画やってたら、パーソナライズが主流になってる今の市場に合うわけない。
ブランドっていう言葉の意味が全くわかっていない。
前職時代に中国企業に買収された某社の素材調達長みたいな人が自嘲的に言ってた「今この瞬間に、隣の店とうちの店の服入れ替えたって誰も気づかないですよ笑」。
いや笑うなよ、ぜんぜん笑えん。
夢を持ってこの業界に入ってくる若者たちに対して、今のこの状況はあまりにも失礼だ。
もちろん素晴らしい会社もいっぱいある。そういうところだけ目指して頑張る学生もいるだろう。
就職活動の時期が来て、大手メーカーに入ることを目標とするならば、こう言う状況だと言うことを理解しておいた方がいい。
やめておけと言っているわけじゃない。
少しでもよくなる様に僕なりに関わることがあれば矯正できる様に動いている。
依頼があれば工場見学のツアーだって受ける。
工場見学中、若いスタッフの人たちは目を輝かせていることが多い。
僕はそういう本当に興味を持っている人たちに対して自分の知識や経験を伝えていくことや、素材を提供するなど仕事で関わる様にしている。
なぜならそういう人たちが作った服なら、きっと今世に溢れている服よりも意味をもつから。
中堅どころの半分腐った奴らは見学中ロクに話も聞いてない。
そういう人たちの依頼は、商売上やむを得ない依頼(間のメーカーに頼まれたり)以外は基本的にお断りさせてもらっている。
なぜならそんな商品に関わることは社会の役に立たないことだから。
変革の目はある。ただ、今はまだ残念ながら腐った奴らの層が厚すぎる。
本当にこの業界を好きになれないと続けることは難しいだろう。
華やかな部分より、泥臭くて面倒なことが多い世界だ。(これはどの業界も同じだと思う)
でもどんな辛い思いをしても、自分が関わった一枚が世に出てその服を着て幸せそうにしている人を見かけたら全てが報われた気がするんだ。
そういう服が作れるように心の芯を腐らすことなくこの業界で仕事を続けられていたら、その時は僕も仲間に入れて欲しい。
僕もみんなが楽しく服作りができる様な業界にできる様に一生懸命やってみるから。