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Haruna Terazono

「アニバーサリー」/窪美澄【女性が仕事をすべきか否かは不毛な論争だ】

2018.09.13 09:55

自分が育てたいようにすればよい

アニバーサリー」/窪美澄

子育てにまつわる3世代のストーリー。

主に、マタニティースイミングの講師である晶子(昭和10年生まれ)とその生徒である真菜(昭和55年生まれ)の交流を描いているのだけど、その中に、真菜と対立する母、真希(おそらく昭和30年代生まれ※正確な記載はなし)も登場する。

時代の変遷の中で、それぞれがどんなことに悩みながら子育てをしてきたのかが描かれている作品。


主要な登場人物をまとめると・・・

晶子は、戦争の飢えを経験しているので、戦後、家電などが発展してどんどん便利になること日々の中で、豊かさに感謝しながら子育てできた世代。

真希は、女性が働く機会を得るために奮闘しながら子育てしてきた。

そして、真菜は、豊かさの中で、生きる目的を見いだせないまま大人になる。


物語が動き出すのは、東日本大震災が発生した当日の東京。

震災によって帰宅困難となった晶子が、マタニティースイミングスクールで心配な生徒だった真菜の家を訪ねる。


真菜には、良好でない母親との関係や、シングルマザーである現状、震災など、孤立して子育てに息詰まる要因がありすぎる。

そのため、反発しながらも、晶子の手を借りて子育てすることに。


私が感じたのは主に3つ。

①真希の生き方ってかっこよくない?

母である真希が仕事第一だったことに、真菜は否定的で、全体を通して、子育てが上手くできなかった人のように感じられるのだけど・・・

真希って、稼ぎまくってるから、夫に仕事を手伝ってもらえるし、娘の不祥事をもみ消せる。

もちろん、そこにひっかかりはあるんだけど、家庭を言い訳にせずに、何を犠牲にしても仕事を優先するという潔さを、あえてカッコいいと言いたい!

真菜が幼児の時に、公園で、”いい大人が働かずに何やっているのだろうと思い、働くことを決意するシーンが結構好き。

私にはできないからかもしれないけど、嫌いじゃないんだけどな。


②自分が育てたいように育てればよい!

・・・と言うことが「アニバーサリー」読了後、最も印象に残った。

真菜が母親としての真希を否定して違う方法を選んでも、晶子に影響を受けて晶子流で育てても、子供にとって良いかは分からない。

結局は自分がしたいようにすればいいということに気づかされるシーンに心が震えた。

この作品を読むと分かるけど、時代が変わって、子育ての環境のみならず、生きることへの価値観も変わった。

戦争中にお腹がすいて眠れない体験をした晶子から見て、ノストラダムスの大予言で世界が滅びなかったことに途方にくれる真菜は、甘々に映るけど、それぞれの時代に生きづらさはある。

結婚や出産、子育てと、どうするか決めるのは自分。

アニバーサリー」は、周りの声に左右されず、自分がベストだと思う選択をしていこうと思わせてくれる作品だった。

自分の生き方ややり方を肯定するために、自分とは違うやり方をする人を批判したり、排除しようとする人っているもんなぁ。

人の意見を聞いて決めると、後で後悔するけど自分で決めたことは、諦めがつく。

自分がどうしたいか考えることを止めないようにしなくては!


③感性だけでは息詰まる!!!

これは、真菜が、カメラマンを目指し写真を撮り始めた頃に、真菜の子供の父親になる男性(生物的にだけ)が放った一言。

私も、20代のときには、明るく元気に思うがままに発言したら面白がられたりもしたけど、30代になったら、何だか色々伴って来てないと思うようになった。

20代って言われてみれば、勢いと感性だけだったー。

これから、真菜と一緒に努力していこう!


そんなこんなで「アニバーサリー」を読みながら、自分は今のままで良いのかち考えつつも、毎日元気に子どもと過ごせていることは幸せだと感じた。


ここ数年に目を向けると、自然災害が頻発するようになって、これまでと違う意識を持たなければならない時代に突入したことは明白だ。

これから、自然の驚異を感じながら生きていくのは簡単ではないだろうけど、対応するしかない。

娘たちにも、どうか力強く生きて行ってほしい。

今週も、北海道の商品がスーパーに並んでいた。

大きな地震があったにもかかわらず、変わらず働いている人がいるんだ。

ありがたい。

北海道という文字に、北海道は大丈夫なんだと言う安心感を頂いている。


怖い思いや悲しい思いをした子どもたちや、子供たちに不自由な思いをさせて心を痛めているお母さん、お父さんが、心から笑える日が早く戻ってきますように。