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青と檸檬

九月の蝉

2018.09.11 06:17

九月の蝉が鳴いている間は

うつつの欠伸

かくり世の午

透かし彫りの太陽が照らす白い庭に

今日も星だけが茫然と満ちる

夜はだいぶ前にこちらに背を向けて、

まだ帰ってはこない


とつ、とつ

甘く焦げた匂いのするアスファルトを踵で刻むと

靴の先にへばりついた影が手を振って、わらう

「やあ相棒、またなのかい?」

病を孕んだ黄色い身が弾けて宙を舞うのはうつくしかった


「娘よ

どうかその手のなかに

あの音を迎え入れてはくれないだろうか

あのような声で泣くものだから

そろそろ

明日が彼らに気づいてしまいそうなのだ」


願ったつもりが空気を滑って

流行りの歌になって

老人を追い越すクラクションに紛れて、消えた


だから、いまや九月の蝉は

私の中にあるだけだ