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映画チア部まなの不定期連載(仮)No.1『サウルの息子』

2016.02.28 15:00

突然の記事掲載。こんにちは、映画チア部のまなです。関西のシアターで上映している作品をこれから不定期連載という形で紹介していくのでよろしくお願いします。ネタバレはしないように書いてあるので、鑑賞前の方も気軽に読んでください!


今回取り上げるのは『サウルの息子』。

まさに今日!アカデミー賞外国語映画賞受賞して盛り上がっている本作(おめでとうございます!)は、ハンガリー生まれ、パリ育ちのネメシュ・ラースロー監督の長編デビュー作。カンヌ国際映画祭でもグランプリを受賞している。


—あらすじ

時は1994年10月。アウシュビッツ=ビルケナウ収容所ではゾンダーコマンドたちが働いていた。ゾンダーコマンドは、ユダヤ人でありながら同胞の死体処理に従事させられている特殊部隊で、本作の主人公であるハンガリー系ユダヤ人のサウルもその一人。ある日サウルは、収容所で息子らしき少年を目にし、殺された彼をユダヤの教義にのっとって埋葬しようと動き始める。


—映画の視点

映画は徹底してサウルの目線で描かれる。カメラはほぼサウルの表情を捉え、周りの様子はカメラに映っていても、ピントがずれてぼんやりとしている。画角もスタンダード*と狭く、画面から得られる情報は少ない。観ている側は、客観的な視点ではなく、サウルの目線—かなり主観的な目線で映画の世界を観ることとなる。それ故にとにかく観ていてしんどい。窮屈でたまらない。ゾンダーコマンドたちが感じていたであろう感覚が観客にも押し寄せてくる。

*スタンダード…横縦比が1.375:1の画面のこと。


—映画の背景

サウルが息子とおぼしき少年の埋葬に拘る理由というのが、少しわたしたち日本人には捉えにくいかもしれない。まずユダヤ教の教義では、火葬では死者が復活できないとされているので、サウルが埋葬に拘る理由はここにある。正直、私もはじめは「ユダヤ教の教義だとしても、そこまで拘らなくてもいいんじゃ…」なんて思ってしまったが、自分の息子とおぼしき少年が、他の死体と“処理”されていくのは日本人でも嫌なのではないだろうか。日本では火葬がメインだが、同じように焼かれるにしても“処理”ではなく、きちんとした形で弔ってやりたいと思うのではないか。そう考えると、サウルの考えも分かる気がした。ユダヤ教の教義といった、宗教・歴史・文化・民族的な背景は本作で説明されることはないので、観る前や観たあとに、少し勉強するとより本作をより深く考えられるように思う。


—劇場で活きる作品

また、ラストシーンの解釈や、サウルの「息子」についても解釈も人によって異なるところだと思うので、人と感想を言い合うもの楽しい作品かもしれない。とにもかくにも、少しでも気になっていた人には劇場で観てほしい一本!あの窮屈さは家のテレビでは味わえないので、劇場でネメシュ・ラースロー監督の意図した通りに、恐怖を肌で感じてほしい!


関西では、シネ・リーブル神戸、シネマート心斎橋、シネ・リーブル梅田、京都シネマで上映中!『サウルの息子』公式サイト・予告編はコチラ

あと誰か連載タイトル考えてください!(まな)


(Writer)まな:映画チア部の一期生。最近は台湾映画を好み、つい先日ツァイミンリャンのBlu-rayBOXを購入したせいで財布の中身が乏しい大学生。今年は神戸から出て、他のシアターにももっと沢山行ってみたいと思っている。