切なさと儚(はかな)さ・・・あふれる叙情ロマン 「雪中相合傘」(鈴木春信 作 1767年頃 大英博物館所蔵)
(「美の巨人たち」テレビ東京放映番組<2014.2.8> 番組を視聴しての私の感想綴り)
東京に45年ぶりに、27センチの大雪が降り積もった翌日(2014.2.9)、両国の江戸東京博物館へ、実物作品を観に行った。
本作品のテーマも、「雪化粧」。
抒情と感性の美意識を、観る者に迫ってくるというか、滲ませてくるものであり、しばし作品の前に佇み、感動のため息をついた。
こんなにも、観る者に想像性を掻き立て、たたずまいを整えながらも、心をゆさぶる作品が、今から250年ほども前に描かれ、今日までイギリス(大英博物館)で保存されていようとは・・・
学ぶべきは、その技法の繊細さと卓越さと感性の豊かさである。
「空摺り」「きめ出し」など、「浮世絵」を手にとって観賞する際の、その風合い、感触も「美意識」のひとつと捉えていた点。単なる描写のみならず、今で言う3D、立体的な空間感性ともいうような、構図構成クリエーター的な感覚を持ち合わせていた絵師(というか、アーティスト)といえると思う。
鈴木春信の作品は、本作品を含めそのほとんどが、海外に流出してしまっている。
彼の生涯は不祥な点が多く、40代から脚光を浴びることとなるものの、40代半ばには、残念なことに突然の病で、この世を去ってしまう。
「三傘暁小袖(みつからかさ あかつき こそで)」といった、歌舞伎の心中をテーマをもとに題材とした「見立て」。「雪中烏鷺図」から、「カラスと白鷺」「善と悪」「陰と陽」など、永遠にひとつに結ばれない、「対極の存在」をモチーフにしているのではとも、推測されている。
「眺めて観る」「触れて観る」「感じて観る」・・・この作品は、間違いなく観る者の想像性を、幾重にも掻き立てられる、ロマン満載の最高傑作のひとつであろう・・
写真 : 「雪中相合傘」(鈴木春信 作 1767年頃 大英博物館所蔵)
「美の巨人たち」テレビ東京放映番組<2014.2.8>より転載。同視聴者センターより許諾済。