山形国際ドキュメンタリー映画祭2023 ①
4年ぶりのリアル開催となった山形国際ドキュメンタリー映画祭2023(10月5日〜12日。以下YIDFF)に参加しました。
隔年開催で前回がオンラインだったために4年ぶりとなったワケですが、筆者のように待ち侘びた人たちが山形に集結し、今年の参加者は20,400人(10月11日時点。映画祭発表)。会場の一つであるフォーラム山形ではどの上映も長蛇の列となり、久々の人の熱気を体感して喜びひとしお。何せこのところ地方都市を回ることが多く、閑散とした街中を数多く見てきたもので。実に感慨深いです。
というわけで、今年の受賞結果はこちらで。
えーっと、その中で筆者が鑑賞したのはインターナショナル・コンペティション部門で審査員特別賞を受賞したエキエム・バルビエ、ギレム・コース、カンタン・レルグアルク監督『ニッツ・アイランド』のみ。
え? なにしてたの? と思われるでしょう。
でもこれ、”山形あるある”なんです。
同時多発的に各会場で様々なプログラムやイベントが行われているので、網羅するのはムリ。
逆に言えば、人それぞれの山形があるから面白いんですけど。(ちょっと言い訳💦)
何をしていたかは徐々に報告するとして、まずは『ニッツ・アイランド』について。
ドキュメンタリーの概念を覆す異色作です。
オンライン・ゲーム「Day Z」のコミュニティサイトに映画クルーが侵入してユーザーたちにインタビューし、どんな人たちが参加し、何故に彼らは何時間もゲームに没頭するのか?になどに迫ったもの。全編オンライン上の映像で展開します。
中には現実世界から逃れるかのように仮想空間にやってきたものの、現実社会と変わらぬ、いや、それ以上に厄介な人間関係が構築されていて、無惨に殺されたり、自ら命を断つ者も。
963時間も取材していたクルー自体も、殺されること何百回(だったとか)。カルト的な集団の脅威に晒されることもあり、疲労困憊し、感覚が狂わされていく様子も生々しく伝わってきます。
そして見ているこちらは、終始どこかに「本当にドキュメンタリー!?」という疑心半疑なところもあって、感情が揺さぶられまくり。
まぁ間違いなく賛否両論を呼ぶ作品ですが、でも確実にドキュメンタリーの新たな波の到来を予感させるのです。
実際に同作はスイス・ニヨンで開催されたヴィジョン・デュ・レール国際映画祭で、
国際映画批評家連盟賞と前衛的な作品を集めたバーニング・ライツ・コンペティション部門で審査員賞を受賞しています。
またカナダのオタワ国際アニメーション映画祭では長編アニメーションのコンペティション部門に選ばれ、ルーマニアのトランシルヴァニア国際映画祭では「What's Up, Doc?」部門で選出されるという……。各映画祭も既存の枠に収まらない作品の登場に混乱してますね(笑)。
ちなみに上映後のトークセッションに参加したギレム・コース監督によると、映像はきちんとゲーム会社の許可を得ているとか。
ただし「バグってるところを使うのはやめてね」と言われたそうですが、遠慮なく使ってます。その方がリアルですしね。
今のところ日本公開は未定ですが、YIDFFでは上映作品をセレクションしたドキュメンタリー・ドリームショーを東京で開催するのが恒例です。開催を楽しみに待ちましょう。