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更夜飯店

プリンス&プリンセス

2018.09.12 07:02

プリンス&プリンセス

Princes et Princesses

2004年8月18日  シネセゾン渋谷にて

(1999年:フランス:70分:監督 ミシェル・オスロ)

去年観たミシェル・オスロ監督のアニメーション『キリクと魔女』はとても好きな映画でした。

これはオスロ監督が1989年からテレビ用に作ったアニメーションシリーズ『もしもの映画』から6本を選んだものだそうです。

6つの各国・時代のおとぎ話が美しい影絵で繰り広げられます。

最初に少年と少女が連れ立って映画館へ行く。そこで映画技術師のおじいさんと3人で「もしも、わたしが、ぼくが・・・」というアイディアを出し合って話を作っていくという構成。

「わたしはエジプトの女王になってみたいわ」と少女が言えば、3人の前のモニターには古代エジプトの資料映像が映し出される。「じゃぁ、どんな話にしようか?」「どんな衣装を着ていたのかしら?」「どんなことをしていたのかしら?」と模索するのが、まず楽しいです。

中世の魔女とはどんなだったのかしら?日本だったら19世紀、北斎の絵が好きだから使ってみたい・・・影絵ですから輪郭が正しければ、どんな国の話でも自由自在。基本的には男の子と女の子と一人の大人というパターン。そして6つの話、それぞれ結末が違うのですね。ハッピーエンドはハッピーエンドかもしれませんが、終わらせ方が違うのが上手い~。

どの話もおとぎ話に欠かせない「同じことをくりかえす」という基本パターンを踏んだ上で短い時間の中にも驚くような謎やほのぼのとしたユーモア、哀切などが融合していて絵が綺麗なだけでなく、物語を作り語ることの上手さがつまっています。

①「プリンセスとダイアモンド」:魔法で閉じこめられた王女様とダイアモンドを探してその魔法を解く少年。

②「少年といちじく」:古代エジプトの女王と冬のいちじくを捧げる少年。

③「魔女」:ヨーロッパ中世の魔女とそれを退治しにいく少年。

④「泥棒と老婆」:19世紀の日本。高価な肩掛けを持つ老婆とそれをねらう泥棒の青年のユーモアあふれる思いがけないいきさつ。

⑤「冷酷なプリンセス」:未来西暦3000年の冷酷な女王とその心をとかすウタドリの飼い主の青年。

⑥「プリンス&プリンセス」:ロマンティックなはずの相思相愛のプリンス&プリンセス。しかし口づけをしたことから、2人はどんどん変身、変身・・・そして最後には?

どの話も好きなのですが、④の日本を舞台にした「老婆と泥棒」は感心しましたねぇ。最初に資料で北斎の絵が紹介され、北斎の絵を背景にして、俳句の風景などもきちんと描いているし、なぜ「赤富士は赤いのか?」までちゃんとお話に入っている。いやぁ~こんなに日本の文化を理解してくれてるって嬉しいです。純粋に。ラスト・サムライなんか遠くへぴょ~ん。

⑥の「プリンス&プリンセス」は最後に持ってくるだけあって、「おとぎ話」のパロディになっているのが楽しい。意外な結末っていうのもユーモアありますねぇ。

影絵を手法とした理由は予算が少なくてすむから・・・だったそうですが、シンプルな背景の色にくっきりと写る黒い影。とても饒舌ですね。

各話は10分弱なのですが、3話のあとで、「ここで一分間の休憩。どうぞお話してね!」という一分間休憩には笑ってしまいましたが、子供からしたら、ここでひといきついて「あ~だ、こ~だ」と言いたくなるだろうし、「子供に観せる」という生理にも優しい心使いがかわいいし、納得もしました。夏休みいっぱいやっていますから、子供も大人も是非観てね!

(ちなみにこれは日本語吹き替え版。少女が原田知世で少年が松尾貴史。松尾貴史の声って素敵~)