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ulcloworks

矛盾。

2023.10.20 07:36

物事は視点を変えれば善も悪となり悪も善となる。

ことお金に関わる話は、ともすれば生活者を苦しめる一方で生活者が労働する場面で得をしたり、逆に労働面で苦しんで生活者面で得をするなどある。


この手の話を政治的な側面から批判する声もあれば、経営層に対して『搾取だ』という声もあったり、とりあえずめっちゃデリケートゾーンなのでそこら辺まで踏み込んで書くのはやめておく。


世界的インフレ圧力が高まりをみせたここ1-2年、そもそもの設定が低すぎた論も混在する中、ある程度価格転嫁の大きな波が押してきて、全体的に仕方ない感も漂いだしたので、品質内容同条件で相対的に見たら昔より全然高い世界になりつつある繊維製造界。

何度かXでポストしているが、高くなっただけで品質(対応も含めて)が落ちている業者もちらほら見え隠れしている。


もちろん、機に乗じて収益構造を好転させるのは企業として当然の行いなので、それが悪いという話でもない。ただ、高くなっただけで対応などの品質低下は当然の結果として顧客離れを起こす。ここのバランスは非常に難しい。


出口の部分では、やるべきことをきっちりやった上で、品質担保するのは当然のことながら、価格転嫁も目立って大きくない範囲でやりつつ、事業内容の収益構造をポジティブにするには、矛盾するようだが仕入先様の中でも価格と技術を篩にかけていく作業が出てくる。

同品質内で価格が安い方を選択するのは、自身の生活者としての場面を想像してみれば非常に単純かつ合理的な判断として正当性がある。


先日、長い付き合いの仕入先様から、ウチの他社で作っている定番的な素材に対する価格の打診があった。簡単にいうと、スライディング営業である。

条件が同じで価格が安いなら、選ばない理由はない。まして長い付き合いである程度の信頼関係もあるのだから、決してどこかで血を流させて値段を削っているわけではないというのもわかる。これがもし、誰かが泣いてるなら、それは筋が違うが、既存で作ってもらっている仕入先様との関係値を秤にかけても、提案のあった仕入先様に振り替えていくことに何もためらいはなかったので、先月はその件で大阪に飛んだのである。


これは悪だろうか。悪かもしれない。既存の仕入先様からしたら、裏切られたと思うだろう。

ただこちらも、振り替えるべき理由は明確にあった。価格面はもちろん、対応含めて品質が著しく低下しているところに対して再三の注意虚しく、品質の欠陥は続いたのだから。などと自分に言い聞かせて振り替えを正当化したりなんかして。


ただ、声高に公の場面で「こちらの範囲ではこの値段でも儲かる」などと激安単価で叫ばれては、そこはちょっと、ここまで書いてきた内容に矛盾するかもしれないが、大変に遺憾である。

たいして事情を知らない人がそれを見て「そんなもんで儲けが出るんだ」と思われてしまえば、日々努力を重ねて企業としての収益化をはかりつつ、給与面でも高待遇を担保するために価格向上を目指している人たちが、あっという間に『ぼったくり』だ、という悪に転じてしまう。

そういう意図はないかもしれないが、少なくともその単価でできるところがあるという人が出てくるのは避けられない。だって『安い』ことには昔から非常に敏感な業界の空気感だから。


為替が悪くなって原材料仕入原価が上り、価格転嫁要請をしたら難色を示したり無視したりするのに、為替が円高に触れた途端に安くしろって平気でいう人たちがどれだけいることか。まるでハイエナのように。ただ、それもその人たちのそのポジションからしたらあくまでも『仕事』をしてるだけなのである。と、割り切れたらこの業界に渦巻く負の感情と隔たりをどれだけ無きものにできることか。


と、前置きが長くなったけど、それくらいお金の話はデリケートだってこと。


利益を多く取ることは決して悪いことじゃない。むしろ利益が無ければ企業体そのものが存続できない。余剰利益が生まれたらそれでまた回せる経済がある。ただしそれを得るには当然それなりに相手にとって金額に見合ったメリットがあって初めて担保される。

つまり何もしないで利益を上げられる構造は、真っ当に商売する上では存在しない。

その会社その会社で個性がある。薄利多売でも他社より多く分母を増やすことで収益を伸ばせる企業もあれば、ずば抜けたストロングポイントがあって他者の追随を許さない得意領域で収益を好循環させている企業もある。

どちらにしても相手あっての商売である。その人たちが自分たちにとってメリットがあれば適宜選択肢をかえていくだけのこと。

安さに目がくらんで手の内を知らないままに飛び込んで怪我するのも勉強。インフレが届いてない世界で安さが保たれている世界は時間の問題。どちらにしても、その時その時のベストをそれぞれがそれぞれの事情で選んでいくしかないのだ。


あとは、その範囲以外にも目を向けてタネを撒き続けることが、きっと大事なんだと改めて思ったビールの日。