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中山治美の”世界中でかき捨てた恥を回収す”

山形国際ドキュメンタリー映画祭2023 ③

2023.10.20 14:39

 山形国際ドキュメンタリー映画祭2023(以下、YIDFF)では、2011年より東日本大震災をテーマにしたプログラム「ともにある Cinema with Us」を設け、震災の記録と記憶の継承、そして作品を通して現在と未来を考える機会を設けています。

 筆者もこれまで下記のような記事を執筆してきました。

【YIDFFのリポート】

⚫️『311』というタイトルの映画に賛否 被災者にカメラを向け「自分がハイエナのような自覚がありました」と監督が吐露

⚫️津波もガレキの映像も一切登場しない震災ドキュメンタリー『なみのおと』が注目

⚫️首つろうか…衝撃の告白も 飯舘村の酪農家に密着した震災ドキュメンタリー上映

⚫️カンボジアの“壮絶な過去といま”を映像で伝える取り組みとは

⚫️災害が頻発するいま、復興過程の映像記録の重要性訴える

⚫️東日本大震災後を追い続ける映像作家たち


【震災関連の特集記事】

⚫️第1回-福島・相馬、映画を作る子供たちに放射能汚染が残した爪痕とは

⚫️第2回-東日本のことは西日本で関心が薄い?…『遺言 原発さえなければ』で知る現実

⚫️第4回-震災映画は当たらないという定説を覆すスマッシュヒット『遺言 原発さえなければ』

⚫️三陸地方唯一の映画館閉館!新たな映画文化を築くために奔走する人たち

⚫️東日本大震災後の10年、映画の力を信じ続けた人々【特集】


またYIDFFにも参加し、東日本大震災に向き合った監督たちによる座談会も行いました。

⚫️【年末特集企画】東日本大震災後映画監督が東北で出会った人、文化、そして歴史 


 これらの記事を執筆するために「ともにある Cinema with Us」で改めて震災を振り返り、現在地の課題を確認し、記者として何を発信すべきかを考える貴重な時間になっていたことを改めて実感します。

 そして、今年も思わず襟を正して見てしまった作品に出会いました。

小森はるか監督『ラジオ下神白ーあのとき あのまちの音楽から いまここへ』(2023)です。


 舞台となるのは、福島第一発電所の事故の影響で浪江、双葉、大熊、富岡から避難してきた人たちが暮らす、いわき市小名浜にある復興公営住宅「下神白(しもかじろ)団地」です。

 2016年から同所では、文化活動家のアサダワタル氏が中心となって、住民の皆さんに思い出の曲とともに町の記憶や人生について話を伺い、それをラジオ番組風のCDとして届けるプロジェクトが行われています。そこに、2018年から小森監督が参加し、記録したのが本作です。

 これまでのプロジェクトの概要はこちら

 また報告会ならぬ”オンライン報奏会”はYou Tubeにアップされています。

⚫️オンライン報奏会|第1回「2017年〜2018年の報奏」

⚫️オンライン報奏会|第2回「2019年の報奏 とりわけ伴奏型支援バンド(BSB)編」

⚫️オンライン報奏会|第3回「表現・想像力・支援 ゲスト:いとうせいこうさん」

⚫️オンライン報奏会2022|『福島ソングスケイプ』ができるまで

 住民の多くは高齢者です。記憶が薄らいでいる方もいます。

でも思い出の曲から話を伺うと、思い出話がどんどん飛び出してきます。原節子主演『青い山脈』(1949年)の主題歌だった♪青い山脈。ちあきなおみの♪喝采など、昭和の映画や音楽が、人々の生活と密接に繋がっていたことを物語っています。

 そして震災のことだけではない、思わぬエピソードも飛び出します。遠洋漁業で出かけたブラジルでの恋バナとか!

  このCDが、様々な地域から越してきた住民たちのパーソナリティを知る機会となり、新たな交流を育む手段となっていることがわかります。

 復興住宅の高齢化や独居化は深刻な問題として以前から取り沙汰されおり、阪神大震災の被災地でも同じ悩みを抱えているようです。

⚫️読売新聞 復興住宅で進む高齢化・独居化、住人6割が交流「参加せず」

2023/01/18 08:24


 国や行政が手をこまねいている中、こうして継続的な活動を続けている本プロジェクトのメンバーに頭が下がる思いです。

 本作は劇場公開ではなく、自主上映という形で広めていくそうです。

 詳細は公式HPの「上映ご希望の方へ」でご確認を。