テッセラクト
テッセラクト
The Tesseract
2004年7月12日 シネセゾン渋谷にて 2003年タイ=イギリス=日本:96分:監督 オキサイド・パン
オキサイド・パン監督の映画・・・『The Eye』『レイン』『One Take Only』に共通するのは閉塞感です。
精神的に肉体的に「何かに押し込められて、追い詰められて」いる雰囲気を持っていますが、この映画は正に、閉塞感そのもの。原作がアレックス・ガーランドの『四次元立方体』ですし。
この映画の立方体とは何でしょう。
イギリス人のヤクの運び屋、喪失感を抱えてやってきたイギリスの心理学者、腹を打たれてうずくまっている女スナイパー、盗みを繰り返すホテルのベルボーイがいるホテル、ヤクを入れた箱、心理学者が使うビデオの四角い画面。
立方体と立方体がきっちりとではなく、微妙にずれてアンバランスに重なり合っている様子を実にスタイリッシュに映し出しますねぇ。このスタイリッシュ、というのもオキサイド・パン監督の持ち味。熱気に満ちたバンコクをなんともクールで焦燥感にヒリヒリさせながら「ドライ」に描く所が私は大好きです。
登場人物たち、それを取り巻く人たちが交錯するのを、同じ時刻にあちこちでどんな事があったのか・・・ということを交錯させて時間が後戻りしたり、先に飛んだりしますが、几帳面に各シチュエーションごとに時計の時刻を出しています。
だから、ああ、今この時刻にあちこちでこんなことがおこって、それがまたつながって・・・という手法、よっぽど自信がないと出来ないことですね。観る側を混乱させつつ、酩酊させつつ、納得させる、という手腕、さすがですね。
音楽がまたまた、重低音が響くようなずっしりとした音楽を上手く使っていて、臨場感を盛り上げています。
イギリス人のヤクの運び屋、ジョナサン・リース・マイヤーズ、焦りと怯えとが入り混じった目が印象的。今まで美少年的な役が多かったのですが、こういうタイの監督、日本の製作の映画でいい仕事しているなぁ、と思います。
ホテルの少年が盗んだヤクをとっさに「これはドリアン・プリンです」って言うところは機転が利いてて感心しましたね。ラストの寂寞感と意外な真実っていうのもあって、ただの雰囲気だけの映画じゃない、というところも好きです。