子猫をお願い
子猫をお願い
Take Care of My Cat
2004年7月15日 ユーロスペースにて 2001年韓国:112分:監督 チョン・ジェウン
高校時代はとても仲良しだったソウルから少し離れたインチョンという港町に住む5人組の少女。20歳になった彼女たちは?というところから映画は始まります。
女の子の友情を扱っていますが、同時にそれぞれの道を歩みはじめ赤の他人になっていく課程を丁寧に描いています。
高校を卒業して2年が経って、今5人の女の子たちのいる立場はバラバラです。
ヘジュ(イ・ヨウォン)はソウルの証券会社に勤務し、高給と一流企業勤めが自慢。
テヒ(『ほえる犬は噛まない』のペ・ドゥナ)は実家のサウナ温泉で家事手伝いをしながら、なんとなく何をしようということなく過ごしている。
ジヨン(オク・ジヨン)は祖父母と貧しい暮らしをしていて、勤め先が倒産、失業。テキスタイルの才能を活かしたいと思いつつも仕事ひとつ見つからない。
ピリュとオンジョは陽気な双子。自分たちが作った手作りアクセサリーを時々道端で売ったりしている。
さて、この5人が「高校時代の親友だから」ということでよく集まるのですが、もう違う立場にある5人はバラバラになりがち。
特に、正反対のヘジュとジヨンはとかく対立。その仲介をするのがテヒであり、場を盛り上げるのが双子ちゃん。
監督が女性ということと、20歳って若くてよかったよね!というなつかしむ回顧的な所がなく、若い20歳の女の子たちってかわいいよね、もなくあくまでも監督の視線は「今20歳である女の子」にしていますから、観ている側も自分の「20歳」のころを(懐かしむのではなく)思い出すのです。
映画を現実逃避、と考えている人はちょっと現実からは逃避できないかもしれませんね。そういう映画なんです。
私はちょうど20歳で学生から社会人になったので、話の核となる3人の気持ちがよくわかりますね。ヘジュのように「自分は会社勤めをしてるし、働いた給料は自分で自由に使ってもいいの」、テヒのように「なんかまだまだやることあるんじゃないかなぁ」、ジヨンのように「周りは上手くやっているのになんで自分は損な役回りが回ってくるのか気に入らない」
見栄とプライド、漠然とした未来への希望と不安、現実を見つめることを避けようとする姿。しかし、映画は彼女たちが現実に少しずつ目を向けるようになる課程を小さなエピソード(タイトルになった子猫とか、テヒが買う七色ハブラシとか)を上手くつなげて、ラストの一言、につなげていますね。
ヘジュは一流企業のきれいなオフィス、という容れ物しか見えていなくて、実際やっている仕事は雑用ばかり。最初はちやほやされても後から入ってくる(多分)大学卒の新入社員に追い越される・・・という事実に気がついて一人傷つくけれど、友人にはとにかく見栄をはって、特にジヨンの貧しさを見下す・・・そんなこと無駄なのになぁ、としみじみ思うことを次々とやってくれますね。嫌な子というより身につまされる子でした。
テヒのふわふわした男の子っぽい感じがいいですね。なんだかんだいって人の立場にたって物をを考えることができるのはテヒなんでしょうが、でも家族とは上手くいかない。
また、これが20歳男の子たちのあれこれ、だったらもっと無邪気に異性への興味とか喧嘩を経た友情の結束とか・・・になるのでしょうが、ちょっと女の子はそうはいかないのですよ。意外とシビアですからね。
だからヘジュはきっとプライドの高いまま大人になっていくのだろうし、他の子たちもそれぞれの道を行くのでしょう。それを突き放すのではく、かつ応援する訳でもなく、微笑ましくも無理のない空気を持続させているのがいいのですね。そしてラストシーン~クレジットタイトルが粋。