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臍帯とカフェイン

「ギジン屋の門を叩いて」⑱ただそこに愛があるから。

2023.10.22 12:20

兎村 いのこ:とむら いのこ。依頼人。女性。帆柄家かわいいかわいい。

帆柄家 一亀:ほがらか かずき。結婚が決まりました。

寺門 眞門:てらかど まもん。店主。男性。いわくつきの道具を売る元闇商人。

猫宮 織部:ねこみや おりべ。助手。女性。家事全般が得意です。

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 : 「ギジン屋の門を叩いて ただそこに愛があるから。」

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兎村 いのこ:本当に、すっごく可愛いんです。

寺門 眞門:まさか奴ののろけを聞かされる事になるとはな。

猫宮 織部:ふふ、本当ですね、旦那様。

兎村 いのこ:ふふ、他にもね、例えば……デートプランとかをね、彼が考えてきてくれる事があるんです。

猫宮 織部:帆柄家さんのデートプラン!私それ、すごく気になります!

猫宮 織部:きにきにキニク学派(がくは)です!

寺門 眞門:哲学の一派かい?

猫宮 織部:違います!

寺門 眞門:失敬

兎村 いのこ:うふふ、本当に仲良しなんですね、お二人って

猫宮 織部:へへ、ありがとうございます

寺門 眞門:それで?帆柄家のデートプランとは?

兎村 いのこ:ああ!ふふ、えっとですね、私が甘いもの好きだなーって話したのを覚えてて

兎村 いのこ:「よし、じゃああんこ工場の見学に行きましょう!」って

猫宮 織部:あ、あんこ工場……!

兎村 いのこ:ふふ、そうなの。製造過程が好きなわけじゃないのにね?

寺門 眞門:帆柄家らしいと言えば、らしいな。

0:ギジン屋の扉ががらがらと開き、遅れてきた帆柄家がやってくる。

帆柄家 一亀:うひゃあ!すっごい雨ですよ、眞門さん!

帆柄家 一亀:あ、猫宮さん、洗濯ものしまったほうがいいですよ!

猫宮 織部:あらいけない!ちょっといってまいります!

寺門 眞門:遅かったな、帆柄家。

帆柄家 一亀:いやあ、すいません、仕事の方で少しトラブってしまって。

兎村 いのこ:大丈夫でしたか?

帆柄家 一亀:うん、なんとかなったよ、ありがとう、いのこさん。

兎村 いのこ:髪の毛、濡れちゃってるわ、これ、使って(ハンドタオルを渡す)

帆柄家 一亀:ありがとう!

寺門 眞門:ふふ、もう夫婦みたいじゃないか

帆柄家 一亀:えへへ、だって籍入れるんですもん、そりゃそうですよ

寺門 眞門:そうだな、違いない

帆柄家 一亀:もう結構お話されてたんですか?

寺門 眞門:ああ、ほんの10分くらいだがな。たっぷりとのろけを聞かされたよ。

帆柄家 一亀:ええ!な、何話したの、いのこさん!

兎村 いのこ:ふふ、なーんにも?貴方のかわいい所を話しただけでーす。

帆柄家 一亀:な、なんか恥ずかしいなあ!

猫宮 織部:お待たせいたしましたー!

猫宮 織部:帆柄家さん、ありがとうございます、助かりました!

帆柄家 一亀:ふふ、よかった。

帆柄家 一亀:あ、そうだ、猫宮さん、これどうぞ。

猫宮 織部:わ、なんですか?

帆柄家 一亀:へへ、寿屋のほうじ茶マカロンです

猫宮 織部:すこすこのすこ!すこてぃっしゅふぉーるどです!!

寺門 眞門:猫じゃないんだよね?

猫宮 織部:はい!猫じゃありません!

兎村 いのこ:……ぷっ、ははは!!

兎村 いのこ:ほんとに、一亀さんから聞いてた通り、お二人おもしろい!

猫宮 織部:え、ええ。なんか照れますね。

寺門 眞門:どんな説明をされてるのか少し不安になるね?

帆柄家 一亀:ふふふ!お互いさまですよー!

帆柄家 一亀:改めて、ご紹介しますね。僕の婚約者の、「兎村 いのこ」さんです。

兎村 いのこ:よろしくお願いします。いつも一亀さんがお世話になってるようで。

寺門 眞門:「兎と亀」、不思議な縁だな。

猫宮 織部:ふふ、でもなんかどことなくお二人の雰囲気が似ていて、すごくお似合いです!

兎村 いのこ:ありがとうございます、ふふ

帆柄家 一亀:眞門さんと、猫宮さんみたいな「2人」になりたいんです、僕

猫宮 織部:私たちみたいな?

帆柄家 一亀:ええ。2人は僕の恩人で、憧れで、だからどうしてもいのこさんに

帆柄家 一亀:お二人と話してみてほしくって。

兎村 いのこ:ふふ、もうすごいんですよ。事あるごとに「あのスイーツもしかしたら眞門さん好きかもしれない!」って

兎村 いのこ:いっつも眞門さんの事ばっかり話すんですもん

帆柄家 一亀:そ、そんなに話してないよ?

兎村 いのこ:一日3回は聞いてます

帆柄家 一亀:う、うそだあ

兎村 いのこ:本当です

猫宮 織部:ふふ、そんなの、妬いちゃいますね?

兎村 いのこ:ええ、本当ですよもう!ふふ

寺門 眞門:ふふ、そんな風に言ってもらえると嬉しいよ、帆柄家。

兎村 いのこ:他にもすごいんですよ、猫宮さんに求愛して眞門さんに怒られた話とか

兎村 いのこ:全然女の人に話しかけにいけなかった話とか!

帆柄家 一亀:へへへ、結構話しちゃってるかも

兎村 いのこ:ふふふ、その分私もなんでも話しちゃうんですけどね

兎村 いのこ:今どんな気持ちなのか、何が好きなのか、元彼とのなれそめだって

猫宮 織部:そ、そこまで話しちゃうんですか?

帆柄家 一亀:ええ、裏表がなくて、なんでもハッキリ言ってくれて

帆柄家 一亀:僕としてはすっごく助かってます

寺門 眞門:ふむ、そうか。女性との交際経験が無いと言っていたものな、帆柄家。

寺門 眞門:良いも悪いも、ストレートに言われたほうが帆柄家には合うのかもしれんな。

帆柄家 一亀:ええ、本当に。

兎村 いのこ:なんでも思った事すぐクチに出しちゃうの、悪い癖かなとも思ってるんですけどね

猫宮 織部:でも、素直ってことですよね、それ。

兎村 いのこ:そう言ってもらえると嬉しいわ

猫宮 織部:ふふ、素敵です、そういうの。あ!マカロンの為に!お茶淹れてきますね!

寺門 眞門:あ、猫宮さん僕……

猫宮 織部:はい、ホットミルクですね

寺門 眞門:その通り

猫宮 織部:帆柄家さんもホットミルクでいいですか?

帆柄家 一亀:はい!ありがとうございます!

猫宮 織部:兎村さんは?

兎村 いのこ:あ、じゃあおなじもので

猫宮 織部:はーい!淹れてまいりますね!

寺門 眞門:ありがとう、猫宮さん

兎村 いのこ:素敵ですね

寺門 眞門:え?

兎村 いのこ:「ありがとう」って伝えてたから

寺門 眞門:ああ…そうだね、彼女のおかげで私は生活できているから。

兎村 いのこ:彼女のおかげ?

寺門 眞門:ああ。私はまったく家事ができなくてね。

寺門 眞門:洗濯をすれば泡だらけにするし、料理は生か焦げかのどちらか。

寺門 眞門:苦手なのだよ、生きるという事が。

帆柄家 一亀:意外な一面ですね、そういうのもこなしちゃう人なのかと思ってました。

寺門 眞門:そんなことないよ、私はできない事のほうが多い。

兎村 いのこ:じゃあ、本当に公私ともにパートナーなんですね、猫宮さんが

寺門 眞門:そうだな、その通りだと思うよ

兎村 いのこ:やっぱり素敵だなぁなんか。

兎村 いのこ:一亀さん、私も一亀さんとそういう夫婦になりたいです。

帆柄家 一亀:いのこさん……ええ、なりましょう、二人で

寺門 眞門:ふふ、見せつけてくるじゃないか

帆柄家 一亀:す、すいません

寺門 眞門:なあに、うれしいのだよ

寺門 眞門:努力を惜しまなかったお前が、自身で幸せを掴んだ証拠なのだから

寺門 眞門:存分に見せつけてくれ。

帆柄家 一亀:へへ、ありがとうございます。

0:帆柄家の携帯が鳴り、メールの通知が入る。

帆柄家 一亀:……げ、会社からだ。

帆柄家 一亀:うわー……だめだったか……

兎村 いのこ:どうしたの?

帆柄家 一亀:さっき解決したトラブルが、やっぱり解消してなかったみたい。

帆柄家 一亀:ごめんなさい、眞門さん、ちょっと僕もう一度戻って対応してきます。

寺門 眞門:それはいいが、大丈夫か?

帆柄家 一亀:はい、僕じゃないと対応できないと思うので。ちょっと行ってきます。

帆柄家 一亀:ごめんね、いのこさん、すぐ戻るから。

兎村 いのこ:私は大丈夫、気を付けてね、一亀さん。

0:帆柄家、退場。

兎村 いのこ:雨、すごいですねえ。

寺門 眞門:ああ、こんな日は髪の毛がうねってしかたない。

兎村 いのこ:でも私、雨って嫌いじゃないんですよ。

寺門 眞門:奇遇だな、私もだ。

寺門 眞門:ところで、帆柄家はなんの仕事をしているんだ?

兎村 いのこ:あら、一亀さん言ってなかったですか?

兎村 いのこ:システムエンジニアをしてるんですよ。

寺門 眞門:ほう、大変な仕事だな。

兎村 いのこ:ええ、いつも頑張ってます、そこがまたかっこいいし、支えたくなるんですけど。

寺門 眞門:素敵じゃないか。兎村さん、あなたはどんなお仕事を?

兎村 いのこ:私ですか?私は、『家庭教師』をしてます。

寺門 眞門:……家庭教師……?

0:兎村、唐突に眞門の首をおさえ、壁に叩きつける。

兎村 いのこ:(豹変し、低音の声で)『そう、家庭教師』

兎村 いのこ:『久しぶりだなぁ、マモン』

寺門 眞門:ぐっ……はっ……。

兎村 いのこ:『忘れもしない1565年、フランス北西部の都市、ラン』

兎村 いのこ:『覚えてるか?マモン。あの日は我々の記念すべき日だったな。』

寺門 眞門:かはっ……

兎村 いのこ:『多くの人間の心のうちを暴いてやった、それによって起きた暴動はまさしく煉獄と呼ぶにふさわしかった。』

寺門 眞門:ぐ……ぅ……

兎村 いのこ:『そう、ご名答。きっと薄々わかってはいただろう?』

兎村 いのこ:『なあ、マモン。』

兎村 いのこ:『どうだった?私からのプレゼントは。』

兎村 いのこ:『弦夜は、悪役にふさわしい駒になっていたかね?』

兎村 いのこ:『それとも物足りなかったか?』

兎村 いのこ:『小物っぽさが出てしまったのは少し計算外だったな。』

猫宮 織部:だ、旦那様!?

兎村 いのこ:『やあ、火車憑き。初めまして。』

猫宮 織部:と、兎村さん……?

兎村 いのこ:『それは、この身体の持主。私は君たちが今一番追い求め、欲し、暴きたいと思う存在。』

猫宮 織部:そ、そんな……え……だって……

兎村 いのこ:『新約聖書、「マタイによる福音書」より』

兎村 いのこ:『糞(ふん)の王』

兎村 いのこ:『そして、「蠅の王」と呼ばれる……』

兎村 いのこ:『私の名はベルゼブブ、以後お見知りおきを。』

猫宮 織部:そ、そんな……

0:兎村、押さえつけていた眞門を開放する

寺門 眞門:ぐ……はぁ…ごほ……ごほ……

猫宮 織部:だ、旦那様!!

兎村 いのこ:『ああ、マモン。すまないね、久々の再会でどうにも血が騒いでしまった。』

寺門 眞門:く……ベルゼブブ……貴様なのか。

兎村 いのこ:『その通り。信じられないかね?では一つ、信じられるような話をしてあげよう。』

兎村 いのこ:『お前が大事に大事に育てていた元助手の魂は、あの後私が美味しく頂いたよ。』

兎村 いのこ:『身体は7つに裂き、毛と皮は並べて、火の海で炙りながら』

兎村 いのこ:『丁寧に、丁寧に、命を感じながら、美味しく頂いたよ。』

寺門 眞門:貴様……

猫宮 織部:前の……助手……?

寺門 眞門:……ああ。

兎村 いのこ:『なあんだ、話していなかったのか、マモン。』

兎村 いのこ:『お前の助手が、呪物の力に堕ち、私と契約を結ぼうとしたことを。』

兎村 いのこ:『かわいそうに、かわいそうに。これだから強欲はよくない。』

兎村 いのこ:『すべてが欲しいが為に、なんでもかんでも秘密にしてしまう。』

猫宮 織部:……なんでもかんでもペラペラと話すのが、正しい事だとは限りません。

兎村 いのこ:『へえ、私を否定するのかな。』

猫宮 織部:ええ。

兎村 いのこ:『しかし、現に、この身体の女は私の力によってすべてを話している。』

兎村 いのこ:『どうだね?あの婚活男との関係、悪い物だったかね?』

猫宮 織部:それは……

寺門 眞門:お前の目的はなんだ、ベルゼブブ。

兎村 いのこ:『目的?』

寺門 眞門:何のために、また現世に顕現しようとしている。

兎村 いのこ:『それを、お前が言うか?マモン』

寺門 眞門:……

兎村 いのこ:『お前とて、何も変わらんだろう。お前こそなぜいつまでも人間界などと言うものに縛られている。』

兎村 いのこ:『私はただ、悪魔として、悪魔らしく、人間の真意を暴きたい。ただそれだけだ。』

寺門 眞門:……その為に、弦夜をそそのかしたのか。

兎村 いのこ:『それはただのフレーバー。ちょっとしたお前へのメッセージだよ。』

兎村 いのこ:『何も私は人を絶滅させたいんじゃない。』

兎村 いのこ:『ただ、死を目の前に出てくる真意を、私のものとしたいだけだよ。』

猫宮 織部:……兎村さんは……

兎村 いのこ:『この女かね?私が中に居る事など覚えていないし、感じ取ってもいないよ。』

兎村 いのこ:『私が出ている間の記憶は一切ない。』

寺門 眞門:……

兎村 いのこ:『そう、だからマモン。お前にとってはなんてことないイージーゲームだ。』

猫宮 織部:イージー……ゲーム……?

兎村 いのこ:『この女、兎村いのこを殺せ。』

猫宮 織部:なっ……

兎村 いのこ:『そうすれば、私もろともこの女は死に、お前の大好きな人間どもは助かるぞ。』

寺門 眞門:貴様……

兎村 いのこ:『な?楽しい楽しいイージーゲームだろう?』

兎村 いのこ:『なあに、簡単じゃないか。燈子に笛を売ったみたいに、この女も「同様に」「悪魔的に」殺せ。それだけで済むんだ。』

寺門 眞門:……外道が。

兎村 いのこ:『……ぷ……くくくく……ははははは!!!』

兎村 いのこ:『当たり前だろう、我々は悪魔なんだから。』

猫宮 織部:出て行って……兎村さんのからだから……

兎村 いのこ:『はい、わかりました、なんて悪役が言っているのを見たことがあるかい?火車憑き。』

猫宮 織部:く……

兎村 いのこ:『ほら、私が邪魔だろう?君でもいい火車憑き、さあ、今すぐ台所に戻って』

兎村 いのこ:『昨日夕飯を作るのに使ったであろう包丁を持ってきたまえ。』

兎村 いのこ:『そして、この小さな心臓に一突き、するだけでいい。』

兎村 いのこ:『たったそれだけで、簡単にこの女は死ぬんだ。ほおら、簡単すぎてあくびが出てくる。』

猫宮 織部:そんなこと……できるわけ……

兎村 いのこ:『できるわけないよなぁあああああああああああああああ!!!!!』

寺門 眞門:くそが……

兎村 いのこ:『あははははははははははははは!!!!』

兎村 いのこ:『今日は少し話をしにきただけなんだ、マモン』

兎村 いのこ:『お前たちが、どうしたら苦しんで、苦しんで、苦しんで』

兎村 いのこ:『「絶望」する事ができるか、沢山考えたんだ。』

猫宮 織部:……

兎村 いのこ:『だから、出てきてやったんだよ、マモン。』

兎村 いのこ:『そのままだんまりを決め込んで、お前たちの知らぬ場所で好き勝手やることだってできた。』

兎村 いのこ:『だが、私はそうはしなかった、なんでかわかるか?マモン。』

寺門 眞門:……

兎村 いのこ:『お前の事を』

兎村 いのこ:『愛してるからだよ』

兎村 いのこ:『マモン。』

兎村 いのこ:『「煉獄」からは、逃げられない。』

兎村 いのこ:『はは……あははははは!!!!!!!』(徐々に兎村に戻る)

兎村 いのこ:ははは……はは……あれ?なんのお話してましたっけ?

寺門 眞門:……

猫宮 織部:……

兎村 いのこ:あ、あれ?えっと……あれ?ご、ごめんなさい、私たまにボケーっとしちゃって

兎村 いのこ:お話、頭から抜けちゃう事があって。本当ごめんなさい。

寺門 眞門:……いや、いいんだ……。

兎村 いのこ:よかった、あ、お仕事の話でしたよね!えっと、私元々家庭教師やってたんです

猫宮 織部:家庭教師……捩治理川家(ねじりがわけ)……

兎村 いのこ:え!なんで知ってるんですか!私話しましたっけ

猫宮 織部:あ…いえ……

兎村 いのこ:でも、今その担当してた子が行方不明みたいで。

兎村 いのこ:だから今は、実質無職みたいなものなんです、お恥ずかしい……

0:帆柄家、戻る

帆柄家 一亀:お待たせしてすいませーん!ちょっとこれから客先にも向かわないといけなくなっちゃって

帆柄家 一亀:いのこさん、ご迷惑になっちゃうから、僕と一緒に帰りましょ、迎えにきました!

兎村 いのこ:あ、一亀さん!大変……わかりました

帆柄家 一亀:帰りに、かまぼこ工場の見学にいきましょ!

兎村 いのこ:ふふ、かまぼこですか?

帆柄家 一亀:ええ、かまぼこ!

兎村 いのこ:もう、工場ばっかりなんだから!

帆柄家 一亀:へへへ!眞門さん、時間作っていただいたのにドタバタですいません

寺門 眞門:いや……いいんだ

帆柄家 一亀:ほうじ茶マカロン、猫宮さんと食べてくださいねっ

寺門 眞門:あ、ああ

猫宮 織部:あ………えっと、帆柄家さん、外、雨、大丈夫ですか

帆柄家 一亀:ああ、雨ですか?通り雨だったみたいです。

帆柄家 一亀:今なんて、雲ひとつなく「燦燦(さんさん)と太陽が照ってますよ!」

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寺門 眞門:(モノローグ)

寺門 眞門:「門」を「豚」、いや「亥(ぶた)」が通る時。

寺門 眞門:「閡(がい)」、「妨害する」という意味になる。

寺門 眞門:燦燦と照る太陽が、私と猫宮さんを焼いていく。

寺門 眞門:髪のうねりは、とうに落ち着き、そして、ギジン屋の門を出ていく

寺門 眞門:帆柄家の背中を、見送る事しかできない。

寺門 眞門:私は、本当に、なんて無力なんだと自身を呪い続けた。