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パリスデージーに託した心

2023.11.01 15:00

【詳細】

 charoko初の合作となったきっかけの作品。

 『結ばれない恋』をテーマに作成しました。

 作:chao


 時間目安 10分程度


【関連作品】

白い花で花占いを

想いは花とともに

誠実な恋の行方

秘めた愛の結末

秘めた愛

真実の愛


 

【あらすじ】

 とある貴族のご令嬢とご子息が叶わぬと分かりながらも恋をする。




男性:僕には密かに想っている人がいる。

男性:彼女は笑顔で身分など関係なく

男性:分け隔てなく接する。

男性:パーティーに参加すると必ずいるし

男性:歳が同じだったから

男性:自然と話す機会も多くなった。

 


女性:「あ、こちらに居らしたんですね」

男性:「もう話は終わったんですか?」

女性:「えぇ。話していたというよりは…」

男性:「また、許婚(いいなずけ)になってくれって?」

女性:「はい(苦笑)何度もお断りしているのですが」

男性:「まぁ、僕達くらいの年齢で相手がいないのは珍しいかもしれませんしね」

女性:「そうですね(苦笑)」

男性:「それにあなたは周りに優しいから。

男性: 押せば折れてくれると思われているのかもしれませんよ?」

女性:「…優しいですか?」

男性:「えぇ。とても」

女性:「流石に一家の面目もありますし

女性: 適当には出来ないと思っているだけなのですが」

男性:「それでも優しいんですよ」



女性:彼はいつも私のことを

女性:『優しい』と言う。

女性:本当にそうなら良いのだけれど。


女性:私の家は、所謂(いわゆる)財閥で

女性:幼い頃から『どんな人にも愛想良く』と言われてきた。

女性:だから家の教えを守っているだけの私に彼の言葉は響かない。



女性:「褒めても何も出ないですよ?」

男性:「僕は見返りを求めて言っているわけではないので。

男性:素直に思っていることをお伝えしているだけです」

女性:「そうですね。

女性:(小声で)あなたはいつも…」

男性:「どうかしましたか?」

女性:「いえ。なんでもありません」


女性:私は彼が好き。

女性:でも、想いを伝えはしない。

女性:彼には想い人がいるから。

女性:それに、例え両想いだとしても絶対に叶わぬ恋だと私は知っている。



男性:彼女は時折切なく笑う。

男性:その表情を見る度に支えたいと思う。

男性:何より、僕は彼女が好きだ。

男性:でも、想いを伝えはしない。

男性:彼女には想い人がいるから。


男性:僕と彼女の家は

男性:どちらも財閥でライバル関係の家。

男性:だから、例え両想いでも叶うことはないと知っている。



女性:「そういえば…」

男性:「どうしました?」

女性:「いえ」

女性:「ふと、この会場のテラスは、景色が良かったなぁと思い出しまして」

男性:「あぁ、確かに。晴れていますし行ってみますか?」

女性:「えっ?」

男性:「疲れた時や気晴らしをしたい時は、外の景色や空気を吸うことで楽になりますよ?」

女性:「確かに、そうですね」

男性:「だから、行きましょう?」

男性:「僕も少し外に出たい気分ですし。付き合ってください」

女性:「…わかりました」



【パーティー会場のテラス】

ー 男性がテラスのイスを引く ー



男性:「どうぞ」

女性:「ありがとうございます」

男性:「晴れていて、空気も澄んでいる満天の星空…いいですね」

女性:「えぇ。ここは手入れもきちんとされていて、花も綺麗に咲いていますし」

男性:「本当ですね」

女性:「私は…パーティーのような煌びやか(きらびやか)な場所は苦手なのです」

男性:「僕もです」

男性:「いつも財閥の家でなければ

男性: こんな思いしなくていいんじゃないかと思ってしまいます」

女性:「あなたもそんな風に思うのですね」

男性:「えっ?」

女性:「あなたは私に『優しい』と言って下さるけれど、

女性: 私からしたら、あなたの方が『優しい』と思うんです。

女性: いつもさり気ない気遣い、愛想と思わせない笑顔、柔らかい話し方…

女性: どれもあなたの相手への優しさからだと思うので」

男性:「そんな風に言われたのは…初めてです」

女性:「そうなのですか?

女性: 私はいつも【スノーフレークの花】のような人だと思っていました」

男性:「スノーフレークの花?」

女性:「えぇ。花言葉があなたにぴったりだと思って」

男性:「どんな意味なんですか?」

女性:「それは秘密です」

男性:「えっ?」

女性:「心の中に留めておくほうが良いと思うので」

男性:「なら、次に会う時までに調べておきましょう」

女性:「えっ?」

男性:「そうしたら、あなたともっと色々なお話が出来そうですし。

男性: 他に好きな花や花言葉はあるんですか?」

女性:「リナリアや勿忘草(わすれなぐさ)は、花として好きですね」

男性:「花として…では、花言葉は別ということですか?」

女性:「…そうですね」

男性:「花言葉も含めて好きな花もあるんですか?」

女性:「サザンカと…マーガレットですかね」

男性:「なるほど…調べておきます」

女性:「…楽しみにしています」

男性:「そろそろ、戻りましょうか」

女性:「そうですね」


女性:きっと、彼は本当に意味を調べてくる。

女性:そして、その意味を知っても

女性:想いが通じることはない…

女性:私たちの関係は、これからもこのままで。



(『白い花で花占いを』へ続く)