誠実な恋の行方
【詳細】
charokoで初の合作として書かれた4本目。
作:chao
時間目安 10分程度
【関連作品】
『白い花で花占いを』
『想いは花とともに』
『秘めた愛の結末』
『秘めた愛』
『真実の愛』
【あらすじ】
とある貴族のご令嬢とご子息が叶わぬと分かりながらも恋をする。
女性:あの日から、どれくらい経ったのだろう。
女性:久しぶりに財閥のみのパーティーが催される。
女性:私は楽しみ半分、不安半分でいた。
女性:あの日、思わず花に託して
女性:想いを伝えてしまったから…
男性:あの日から、どれくらいが経っただろう。
男性:偶然にも彼女からテラスの話が出た。
男性:だから、外に連れ出して、いつもの様に他愛無い話をした。
男性:目の前に綺麗な花があったことで、自然と花の話になった。
男性:僕自身は花には詳しくなかったが
男性:彼女が、花を好きなことが知れて嬉しかった。
男性:だから彼女から聞いた花の花言葉は
男性:パーティーが終わったあと、すぐに調べた。
男性:彼女の想いが花言葉の通りなのか、
男性:分からなかったが、僕は彼女に想いを伝えると決めた。
男性:君に贈る【蓮華(れんげ)の花】の花言葉とともに。
(少し間をあける)
男性:「お久しぶりです」
女性:「そうですね」
男性:「この前のパーティーで話していた『花言葉』調べてきました」
女性:「本当にお調べになったんですね」
男性:「はい。約束しましたから」
女性:「…そうですね」
男性:「調べて思ったのですが…僕は【スノーフレークの花】のような人ですか?」
女性:「えぇ。私はそう思っていますよ」
男性:「なんというか…そんなことはないと言いたくなりますね」
女性:「私が思っていることが、全てではありませんから」
男性:「確かにそうですが…僕は嬉しかったです。
男性: あなたにそのように思っていただけているなら」
女性:「それならよかったです。
女性: 困らせているのではないかと、思っていたので」
男性:「何故ですか?」
女性:「私もあなたも、立場があるので」
男性:「確かに…僕の家とあなたの家は、ライバル関係ですからね」
女性:「私たちには関係ないと思っても、運命からは逃れられないですから」
男性:「そうかもしれません」
女性:「…だからかもしれません」
男性:「というと?」
女性:「花が好きなのは、裏切られることがないからかもしれないと思って」
男性:「なるほど。
男性: 確かに、花に込められた想いは、調べなければ分からないですし。
男性: 知らなければ『綺麗』で終わるから、期待を込めなくていいのかもしれません」
女性:「えぇ。それに自分自身が、その意味を密かに想っているなんて
女性: 知られたくはないものです」
男性:「それは…申し訳ない」
女性:「責めているわけではないのです。
女性: 『あの時言わずにいれば』と後悔したことをあなたに当たってしまったんです。
女性: ごめんなさい」
男性:彼女が感情を出すことは珍しい。
男性:だけど、僕は嬉しかった。
男性:普段は見せない姿を僕に見せてくれる。
男性:期待してはいけないと思っていても、期待してしまう。
女性:最近見た夢のせいだと思った。
女性:あの夢で見た彼は言った。
女性:『僕は、あなただから』と。
女性:あれは私の希望で、彼の本心ではないはずなのに。
女性:「本当にごめんなさい」
男性:「謝らないでください。
男性: 僕のほうこそ、何も考えずに気になったからと調べてしまって」
女性:「いえ…」
男性:「でも、僕は知れて良かったと思っています」
女性:「えっ?」
男性:「花を見る機会は多いですが、その花に意味があるというのは知らなかったので」
女性:「なかなか知る機会はないでしょうから」
男性:「はい。なので、すごく楽しい時間を過ごしています。
男性: こんなに夢中になって何かを調べたのは、久しぶりでした」
女性:「そうなのですね」
女性:「私はよく見かけた花の花言葉を調べたりしています。
女性: すごく落ち着くので」
男性:「落ち着く?」
女性:「えぇ。調べ物をしている時は、それ以外には意識がいかないので」
男性:「なるほど。それは同感です。
男性: 夢中になっているからこそ、ですもんね」
女性:「えぇ…あ、そろそろ行きますね」
男性:「あ、待ってください」
女性:「えっ?」
男性:「これを…」
女性:「…これは」
男性:「僕が調べていた中で花言葉として、あなたに贈りたいと思った花です」
女性:「【蓮華】…珍しい花をくださるんですね」
男性:「今の僕から伝えられる想いです」
女性:「ありがとうございます。
女性: では、また…」
男性:あなたが【蓮華】の花言葉を
男性:どのように受け取ってもいい。
男性:それが今、僕に出来る精一杯の表現だ。
女性:まさか、花を頂けるなんて。
女性:それも【蓮華】なんて珍しい花を。
女性:花言葉は
女性:『あなたと一緒なら苦痛が和らぐ』
女性:『あなたは私の苦痛を和らげる』
女性:とても切ないけど、素敵な花言葉。
女性:あの人とそんな関係になれたらと思った。
女性:今度は私がしっかり伝えよう。
女性:一番好きな花
女性:【マーガレット】に想いを託して。
(少し間をあける)
女性:彼から【蓮華】をもらってから
女性:私は彼に自分の心を伝えたいという
女性:想いが強くなっている。
女性:ダメだと、叶うことはないと
女性:分かっているのに…
男性:【蓮華】を受け取る彼女は
男性:少し困ったような、切ないような
男性:そんな表情をしていた。
男性:それでも、後悔はしていない。
男性:例え叶わないとしても伝えると決めたんだ。
男性:彼女の好きな花言葉で。
女性:あれから何度かパーティーで
女性:会ってはいたのだけれど
女性:なんだか、気恥しい感じで上手く話せない。
女性:それが凄く寂しくて…
男性:伝えてからお互い
男性:意識が変わったからなのか
男性:前より距離が出来た気がする。
男性:何度もパーティーで
男性:顔を合わせているのに
男性:埋まらない距離に
男性:切なさを感じながら
男性:僕は彼女に声を掛けた。
男性:「こんばんは」
女性:「こんばんは」
男性:「一つ提案があるのですが」
女性:「唐突ですね?」
男性:「あ、すみません…」
女性:「(微笑)いえ。
女性: それでご提案とは何でしょう?」
男性:「敬語、やめませんか?」
女性:「えっ?」
男性:「ずっと思ってはいたのですが
男性: 同い年ですし、気を遣いすぎるのもやはり疲れますから」
女性:「まぁ…そうですね」
男性:「それに、これだけの人数が居たら
男性: 誰も他の人の会話なんて聞いてないですよ(笑)」
女性:「そうですね(笑)」
男性:「だから、やめませんか?敬語」
女性:「分かりました…
女性: とはいえ普段から敬語で話しているので、なかなか直らないかもしれませんが」
男性:「それは僕もです(笑)
男性: 提案しておいて言うことではないのですが、僕も普段から周りには敬語なので」
女性:「では…徐々に、で」
男性:「そうしましょう」
男性:それからは他愛ない話をした。
男性:少しずつ感覚が戻ってくるような
男性:心地よい時間が流れる。
女性:彼の提案には驚いた。
女性:でも、嬉しかった。
女性:叶わない恋ならば
女性:せめて、友人として
女性:楽しく過ごせたらと思っていたから。
女性:しばらく他愛ない話をしていた時
女性:彼がまた、唐突に言った。
男性:「そういえば一番好きな花って何?」
女性:「本当に唐突に聞く人(苦笑)」
男性:「あ、すみません。
男性: ずっと聞こうとは思っていたんだけど、なかなか言えなくて」
女性:「まぁ、いいけれど…。
女性: 一番好きな花は【マーガレット】」
男性:「君が僕に初めて花の話をしてくれた時に言っていた花だね。
男性: 花言葉も含めて好きなんだよね?」
女性:「えぇ。
女性: よく覚えてますね(苦笑)」
男性:「あの時初めて、花言葉というものを知ったから、ですかね」
女性:「そうでしたね」
男性:「花言葉って、1つの花に1つじゃないのが面白い所ですよね」
女性:「そうですね。
女性: 贈る相手に合わせて同じ花でも意味を変えられる。
女性: だから裏切らないって思うのかもしれない」
男性:「そうですね」
女性:「あの時の事は、今でも少し後悔しています」
男性:「えっ?」
女性:「でもあなたが【蓮華】をくれた時、伝えて良かったと思いました」
男性:「考えが変わった?」
女性:「そう…ですね。
女性: 花言葉を含めた、贈り物の素敵さを知ることが出来ました」
男性:「確かに。素敵だ」
女性:「だから、私もあなたに」
男性:「えっ?」
女性:「今日はもう時間がないので、お渡しだけになりますが
女性: 今度お会いする時には、素敵な返答を頂けたらと思います」
男性:そう言って、彼女は僕に小さな花束をくれた。
男性:彼女の一番好きな花。
男性:【マーガレット】
男性:今度は想い違いではない。
男性:何故なら、彼女は素敵な笑顔だったから。
男性:次に会うときはこの花束より大きな花束を渡そう。
男性:僕の想いを詰め込んで。
(『秘めた愛の結末』へ続く)