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誠実な恋の行方

2023.11.01 15:15

【詳細】

 charokoで初の合作として書かれた4本目。

 作:chao


 時間目安 10分程度


【関連作品】

パリスデージーに託した心

白い花で花占いを

想いは花とともに

秘めた愛の結末

秘めた愛

真実の愛

 

【あらすじ】

 とある貴族のご令嬢とご子息が叶わぬと分かりながらも恋をする。




女性:あの日から、どれくらい経ったのだろう。


女性:久しぶりに財閥のみのパーティーが催される。

女性:私は楽しみ半分、不安半分でいた。

女性:あの日、思わず花に託して

女性:想いを伝えてしまったから…



男性:あの日から、どれくらいが経っただろう。


男性:偶然にも彼女からテラスの話が出た。

男性:だから、外に連れ出して、いつもの様に他愛無い話をした。

男性:目の前に綺麗な花があったことで、自然と花の話になった。

男性:僕自身は花には詳しくなかったが

男性:彼女が、花を好きなことが知れて嬉しかった。


男性:だから彼女から聞いた花の花言葉は

男性:パーティーが終わったあと、すぐに調べた。

男性:彼女の想いが花言葉の通りなのか、

男性:分からなかったが、僕は彼女に想いを伝えると決めた。

男性:君に贈る【蓮華(れんげ)の花】の花言葉とともに。


(少し間をあける)


男性:「お久しぶりです」

女性:「そうですね」

男性:「この前のパーティーで話していた『花言葉』調べてきました」

女性:「本当にお調べになったんですね」

男性:「はい。約束しましたから」

女性:「…そうですね」

男性:「調べて思ったのですが…僕は【スノーフレークの花】のような人ですか?」

女性:「えぇ。私はそう思っていますよ」

男性:「なんというか…そんなことはないと言いたくなりますね」

女性:「私が思っていることが、全てではありませんから」

男性:「確かにそうですが…僕は嬉しかったです。

男性: あなたにそのように思っていただけているなら」

女性:「それならよかったです。

女性: 困らせているのではないかと、思っていたので」

男性:「何故ですか?」

女性:「私もあなたも、立場があるので」

男性:「確かに…僕の家とあなたの家は、ライバル関係ですからね」

女性:「私たちには関係ないと思っても、運命からは逃れられないですから」

男性:「そうかもしれません」

女性:「…だからかもしれません」

男性:「というと?」

女性:「花が好きなのは、裏切られることがないからかもしれないと思って」

男性:「なるほど。

男性: 確かに、花に込められた想いは、調べなければ分からないですし。

男性: 知らなければ『綺麗』で終わるから、期待を込めなくていいのかもしれません」

女性:「えぇ。それに自分自身が、その意味を密かに想っているなんて

女性: 知られたくはないものです」

男性:「それは…申し訳ない」

女性:「責めているわけではないのです。

女性: 『あの時言わずにいれば』と後悔したことをあなたに当たってしまったんです。

女性: ごめんなさい」



男性:彼女が感情を出すことは珍しい。

男性:だけど、僕は嬉しかった。

男性:普段は見せない姿を僕に見せてくれる。

男性:期待してはいけないと思っていても、期待してしまう。



女性:最近見た夢のせいだと思った。

女性:あの夢で見た彼は言った。

女性:『僕は、あなただから』と。

女性:あれは私の希望で、彼の本心ではないはずなのに。



女性:「本当にごめんなさい」

男性:「謝らないでください。

男性: 僕のほうこそ、何も考えずに気になったからと調べてしまって」

女性:「いえ…」

男性:「でも、僕は知れて良かったと思っています」

女性:「えっ?」

男性:「花を見る機会は多いですが、その花に意味があるというのは知らなかったので」

女性:「なかなか知る機会はないでしょうから」

男性:「はい。なので、すごく楽しい時間を過ごしています。

男性: こんなに夢中になって何かを調べたのは、久しぶりでした」

女性:「そうなのですね」

女性:「私はよく見かけた花の花言葉を調べたりしています。

女性: すごく落ち着くので」

男性:「落ち着く?」

女性:「えぇ。調べ物をしている時は、それ以外には意識がいかないので」

男性:「なるほど。それは同感です。

男性: 夢中になっているからこそ、ですもんね」

女性:「えぇ…あ、そろそろ行きますね」

男性:「あ、待ってください」

女性:「えっ?」

男性:「これを…」

女性:「…これは」

男性:「僕が調べていた中で花言葉として、あなたに贈りたいと思った花です」

女性:「【蓮華】…珍しい花をくださるんですね」

男性:「今の僕から伝えられる想いです」

女性:「ありがとうございます。

女性: では、また…」



男性:あなたが【蓮華】の花言葉を

男性:どのように受け取ってもいい。

男性:それが今、僕に出来る精一杯の表現だ。



女性:まさか、花を頂けるなんて。

女性:それも【蓮華】なんて珍しい花を。

女性:花言葉は

女性:『あなたと一緒なら苦痛が和らぐ』

女性:『あなたは私の苦痛を和らげる』

女性:とても切ないけど、素敵な花言葉。

女性:あの人とそんな関係になれたらと思った。


女性:今度は私がしっかり伝えよう。

女性:一番好きな花

女性:【マーガレット】に想いを託して。


(少し間をあける)


女性:彼から【蓮華】をもらってから

女性:私は彼に自分の心を伝えたいという

女性:想いが強くなっている。

女性:ダメだと、叶うことはないと

女性:分かっているのに…



男性:【蓮華】を受け取る彼女は

男性:少し困ったような、切ないような

男性:そんな表情をしていた。

男性:それでも、後悔はしていない。

男性:例え叶わないとしても伝えると決めたんだ。

男性:彼女の好きな花言葉で。



女性:あれから何度かパーティーで

女性:会ってはいたのだけれど

女性:なんだか、気恥しい感じで上手く話せない。

女性:それが凄く寂しくて…



男性:伝えてからお互い

男性:意識が変わったからなのか

男性:前より距離が出来た気がする。

男性:何度もパーティーで

男性:顔を合わせているのに

男性:埋まらない距離に

男性:切なさを感じながら

男性:僕は彼女に声を掛けた。



男性:「こんばんは」

女性:「こんばんは」

男性:「一つ提案があるのですが」

女性:「唐突ですね?」

男性:「あ、すみません…」

女性:「(微笑)いえ。

女性: それでご提案とは何でしょう?」

男性:「敬語、やめませんか?」

女性:「えっ?」

男性:「ずっと思ってはいたのですが

男性: 同い年ですし、気を遣いすぎるのもやはり疲れますから」

女性:「まぁ…そうですね」

男性:「それに、これだけの人数が居たら

男性: 誰も他の人の会話なんて聞いてないですよ(笑)」

女性:「そうですね(笑)」

男性:「だから、やめませんか?敬語」

女性:「分かりました…

女性: とはいえ普段から敬語で話しているので、なかなか直らないかもしれませんが」

男性:「それは僕もです(笑)

男性: 提案しておいて言うことではないのですが、僕も普段から周りには敬語なので」

女性:「では…徐々に、で」

男性:「そうしましょう」



男性:それからは他愛ない話をした。

男性:少しずつ感覚が戻ってくるような

男性:心地よい時間が流れる。



女性:彼の提案には驚いた。

女性:でも、嬉しかった。

女性:叶わない恋ならば

女性:せめて、友人として

女性:楽しく過ごせたらと思っていたから。


女性:しばらく他愛ない話をしていた時

女性:彼がまた、唐突に言った。



男性:「そういえば一番好きな花って何?」

女性:「本当に唐突に聞く人(苦笑)」

男性:「あ、すみません。

男性: ずっと聞こうとは思っていたんだけど、なかなか言えなくて」

女性:「まぁ、いいけれど…。

女性: 一番好きな花は【マーガレット】」

男性:「君が僕に初めて花の話をしてくれた時に言っていた花だね。

男性: 花言葉も含めて好きなんだよね?」

女性:「えぇ。

女性: よく覚えてますね(苦笑)」

男性:「あの時初めて、花言葉というものを知ったから、ですかね」

女性:「そうでしたね」

男性:「花言葉って、1つの花に1つじゃないのが面白い所ですよね」

女性:「そうですね。

女性: 贈る相手に合わせて同じ花でも意味を変えられる。

女性: だから裏切らないって思うのかもしれない」

男性:「そうですね」

女性:「あの時の事は、今でも少し後悔しています」

男性:「えっ?」

女性:「でもあなたが【蓮華】をくれた時、伝えて良かったと思いました」

男性:「考えが変わった?」

女性:「そう…ですね。

女性: 花言葉を含めた、贈り物の素敵さを知ることが出来ました」

男性:「確かに。素敵だ」

女性:「だから、私もあなたに」

男性:「えっ?」

女性:「今日はもう時間がないので、お渡しだけになりますが

女性: 今度お会いする時には、素敵な返答を頂けたらと思います」



男性:そう言って、彼女は僕に小さな花束をくれた。

男性:彼女の一番好きな花。

男性:【マーガレット】


男性:今度は想い違いではない。

男性:何故なら、彼女は素敵な笑顔だったから。

男性:次に会うときはこの花束より大きな花束を渡そう。

男性:僕の想いを詰め込んで。



(『秘めた愛の結末』へ続く)