ゲート・トゥ・ヘブン
ゲート・トゥ・ヘブン
Gate to Heaven
2004年7月19日 シアターイメージフォーラムにて 2003年:ドイツ:90分:監督 ファイト・ヘルマー
真夜中のフランクフルト空港。誰もいないはずのジャンボ機にインドから出稼ぎにきた女性がスチュワーデスの制服をこっそり借りて、一人で「スチュワーデスごっこ」をしている。普段は空港や機内の掃除をしているので、機内の仕組みなんかよ~く知っているのです。そこへロシアから亡命してきた青年アレクセイと出くわす。彼も不法労働者で、こっそり空港の地下で暮らし空港の雑用をしているけれど、パイロットにあこがれて機内に潜り込んでいたのです。
ばったり出会ってしまった2人の出会い方からしてユーモラス。
・・・・さすが前作『ツバル』で不思議な機械に囲まれた不思議世界を作り出したヘルマー監督。
今度は空港という機械だらけの空間に様々な人種の登場人物たちをぶちこんで、個性あふれる「迷宮世界」を作り出しています。
空港というのは、世界国々の飛行機が発着し、色々な国の人が行き交う場。発想上手いなぁ。
ヘルマー監督は『ツバル』ではモノクロ映像に色をつけ、サイレントという方式をとったのですが、今回は、インド人女性ニーシャのスチュワーデスごっこがいつの間にか、インド映画のミュージカルシーンになってしまう・・・という音と音楽と色彩をふんだんに盛り込んだ世界が楽しゅうございました。
色々な人種のあれこれも手際よく描いているし、全編にただようユーモアと風刺、暖かさ、現実のシビアさ・・・そんなごったまぜ感覚のセンスが素晴らしい。また、人種を越えた人間への視線というのも独特。
また、仕事へは荷物などを運ぶベルトコンベアにすわって出勤・・・となんて楽な出勤方法・・・空港の地下や裏を上手く使った「生活の知恵」のあれこれがまた楽しい。
ニーシャ役のマースミー・マーヒジャーという人は目が大きくて、くりくりしていてなんともかわいらしい。今まで、インド映画、マサラ・ムービーに出演してきただけあって、ミュージカルシーンは活き活きしていますね。監督自身、インド映画が大好きだそうでインタビューで、「もっとミュージカルシーン、いれればよかった」と言っているくらいです。またフランクフルト空港とデュッセルドルフ空港でロケした、という苦労がしのばれます。大変だったらしい・・・そうだろうなぁ。
不法労働者たち、というシビアな現実をふわふわした夢を持って描いている世界、とても心地よくてささやかで大きな夢、をきちんと描けるのは監督のセンスと技量でしょうね。