深呼吸の必要
深呼吸の必要
2004年6月23日 銀座シネパトスにて 2004年日本:123分:監督 篠原哲雄
なんのケレン味もないとてもスッキリした静かなたたずまいの映画です。
沖縄のサトウキビ刈の短期アルバイトに集まった5人の男女。そして島に居ついてしまったような1人の男。この6人の心と体の成長を静かに見つめている視線がいいです。今、公開中の同監督の『天国の本屋~恋火』よりももっとシンプルでストレートで、優しさはかわらないですね。
5人の男女たちは、色々な理由でアルバイトに来た訳ですが、映画の中ではドラマチックになりやすい「過去の傷」や「逃げ出したい現実」はほとんど語られません。約3ヶ月の共同生活でも恋愛沙汰はおきませんし、回想シーンは冒頭の深呼吸のシーンのみ、5人と1人はあれこれ言い合いながら、対立しあいながら、助け合いながら広大なサトウキビ畑に取り組みます。沖縄映画らしい、綺麗な風景もなく、彼らが生活している家とだんだん刈り取った面積が広くなるサトウキビ畑をカメラは映します。
この映画は順撮り(ストーリーの順番どおりに撮影していくこと)されたそうですが、監督の一番の狙いはこの順撮りをすることによって、鍛えられていく若者達の姿をリアルに撮りたいということかと思いました。
ここでも長澤まさみが、成長する少女を好演。本当にいい役やってますね。
最初と最後では皆、顔つき、変わっていますものね。日に焼けて、語られはしないけれど「何か」に決別したすっきりとした顔しています。
深呼吸の必要、というのは長田弘さんの詩集からとられたそうですが、私はこの詩集が大好きです。
子どもとおとなは、まるでちがう。子どものままのおとななんていやしないし、おとなでもある子どもなんてものもいやしない。境い目はやっぱりあるんだ。でも、それはいったいどこにあったんだろう。ほんとうに、いったいいつだったんだろう。子どもだったきみが、「ぼくはもう子どもじゃない。もうおとななんだ」とはっきり知った「あのときは」は?