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タテイト珈琲店

ロートレックから思うこと

2018.09.15 13:43


見事なまでの曇天。

不安定ながらも絶妙な均衡。

雨粒が溢れそうで溢れない。

そんな空は、コーヒーを蒸らしている時間に似ていると思いました。



当店にはたくさんの絵葉書といくらかの画集があるので、お客さまと絵の話をすることがあります。

その中で、「どの画家が一番好き?」と訊かれることもあります。

ロートレックが一番好きです。

アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック。


パリ周辺の歓楽街のポスターを作品として多く遺しましたが、ポスター画を芸術の域に高めた人とも言われます。


その生き様は画家だけに絵に描いたような破滅型。

貴族出身、裕福な家庭に生まれたものの、骨の病から父親に疎まれ、追われるようにパリに出たロートレック。

酒毒に溺れた挙句の36歳という短い生涯でしたが、不思議と悲壮感はありません。

彼が遺した、

"人間は醜い。されど人生は美しい"

という言葉は、僕の道標のひとつ。



説明が長くなりましたが、ロートレックへの愛を語りたいわけではありません。



10年ほど前までは、好きな画家はと問われれば、開口一番「マルク・シャガール!」と答えていました。

その頃すでにロートレックに出会っていましたが、そんなに気になるわけでもなくて。



自分自身の変化。

僕は「自分の成長」には全く興味がありません。

成長は退化と表裏。なんというか、あやふや。

自分にとって成長って何なのかよく分からない。

どこかが伸びたと感じても、その分何かが縮んだり欠けたりしている気がして。

上に昇る、扉を開くことだけが成長なのか。

下に潜る、何かを閉ざすことは成長と呼べないのか。

僕には分かりません。



興味があるのは、変化。

否が応でも毎日付き合う自分自身の変化は、何よりも気づきにくいものです。

容姿にしろ、考え方にしろ。

それは日時計の進みのように、一見変わっていないようにも見えるけれど、確実にジリジリと変わっていくもの。


でも、ふと「好きなものが変わっている」ことに気づいたとき、変化の自覚を手にするような気がします。

シャガールからロートレックへ。

周囲の環境変化、自分自身が触れたもの。

それがゆっくり血となり肉となり、あるいは毒のように体を蝕み、変えてゆく。



もしかすると、来年にはゴッホが好きになっているかもしれません。

そして最後には、普通にラッセンが好きと言うかもしれない。



さて、明日は定休日です。

また来週月曜日、敬老の日より、皆さまのご来店をお待ちしております。