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高知の「校則」を公開します。

高知の校則に関して(提言)

2023.10.26 02:44

2023.10.25

高知の校則に関して(提言)

子どもと教育を守る高知県連絡会

 「ブラック校則」が社会問題となり、全国的に問題のある校則の見直しが進んでいます。文部科学省も、昨年「生徒指導提要」を改訂し、「校則の見直し」の必要性を指摘したところです。

 こうした状況を踏まえ、わたしたちは昨年11月に教職員・保護者・大学生・研究者による「校則検討委員会」を立ち上げ、高知においても「校則見直し」が進むよう、調査・研究を進めてきたところです。

 検討委員会では、下記の事に取り組んできました。

 ①2021年度の公立高校および高知市立中学校の校則を入手し、HPで公開・意見募集

 ②入手した県内の校則の分析・検討

 ③全国の「校則見直し」動向の調査・研究

 ④各地の教育委員会による、「校則見直し」を推進するための取り組みについての調査・研究

 5月には、大東文化大・山本宏樹さんを講師に迎え、講演会「これからの『校則』の話をしよう!」も開催したところです。

 私たちは、11回にわたる検討委員会のまとめとして、以下の提言を発表するものです。

昨年改訂された「生徒指導提要」は初めて「子どもの権利条約」に触れ、「児童生徒の基本的人権に十分配慮し、一人一人を大切にした教育が行われること」を求めています。

その事をふまえ、校長先生・教職員のみなさんには、これまでの校則や生徒指導の見直しを進めて欲しいと思います。

生徒や保護者のみなさんには、一人一人が校則を「自分事」としてとらえ、「校則見直し」に主体的に関わることを期待します。

高知県教育委員会には、各校での「校則見直し」を加速させる積極的な施策を求めます。

私たちの提言が、「校則見直し」の流れを少しでも後押しできることを願います。


【 提 言 】


【高知の校則の現状と課題】

 昨年改訂された「生徒指導提要」では、「その意義を適切に説明できないような校則」について、「絶えず見直しを行うこと」を求めています。「ブラック校則」として話題に上った項目を中心に、高知の校則の現状をチェックしてみました。

※以下、中学=高知市立中学校、高校=高知県内の公立高校全日制および昼間定時制。

①「ツーブロック禁止」

 「ブラック校則」の象徴ともなった「ツーブロック禁止」ですが、高知県においても項目からの削除は進んでいます。「ツーブロック禁止」が残っているのは中学・高校各1校のみでした。しかし表現を変えたのみで、実際の指導は変わっていない学校も少なくないようです。その他にも、特定の髪型を禁ずる校則も見受けられ、検討が必要です。

②「地毛証明」

 頭髪が生まれつきのものであることを証明するために入学時に実施する「地毛証明」については、人権侵害の恐れがあるとして、多くの教育委員会が実態調査を行い、見直しを求めています。「地毛証明」が校則に明記されているのは4高校だけですが、実際は多くの高校で実施されているようです。

高知県教育委員会が作成した「令和5年度 校則見直しの視点について」には、「(地毛証明について)任意の提出とするなど、取り扱いについて要検討。」との記載があります。しかし、提出しなければ不利益を被るのが「地毛証明」とそれに基づく指導です。

沖縄県教育委員会は、「地毛証明書の提出は任意・義務に拘わらず廃止」するよう通知を出しており、任意であれば許されるとは思えません。

③「下着の色指定」

 下着の色指定についても全国で問題となり、多くの教育委員会が調査を行って見直しが進んでいます。ところが今回の調査で驚いたことに、高知県では中学=7割、高校=6割において「下着の色指定」が校則に明記されています。早急な見直しが必要です。

④ソックス・ストッキングの色指定や髪留めの細かな規制等

 大半の中学・高校の校則に、ソックス・ストッキングの色指定があります。髪留めについての細かな規制についても気になるところです。これまでの生徒指導では「当たり前」だったのでしょうが、「合理的な理由を説明」できるとは思えません。

⑤「~らしい」等の表現

 全国の「校則見直し」論議の中で、「高校生らしい」「中学生らしい」等の表現についても問題となっています。県内においても、「~らしい」等の表現で行動をしばる校則が中学校に多く見受けられます。見直しが必要です。

⑥男女別の規定

 ジェンダー平等の観点から、男女別規定を問い直す動きも広がっています。県内において男女別の規定のない学校は、中学=1校、高校=3校とごく少数です。こうした観点からの検討も、ぜひ広がってほしいものです。

⑦スマートフォンの利用について

 持ち込み禁止や校内での使用を禁止している学校が多数です。スマートフォンをめぐるトラブルが多く、各学校が指導に苦慮しているのでしょう。

一定のルールが必要なのは当然ですが、画一的な制限に対する不満の声も少なくありません。各校で十分な話し合いを行い、個々の事情に配慮した納得のいくルール作りが進むことを期待します。

⑧「防寒着の着用制限」について

 登下校中や校内での「防寒着の着用制限」についても、各地で見直しが行われています。

しかし県内では多くの学校に着用制限があり、保護者や高校生から疑問の声が寄せられました。学校が許可する「指定コート」が余りに高額という学校もあるようです。

宮崎県弁護士会は、「寒暖の感じ方や体調には個人差があるにもかかわらず、画一的に統一することは、子どもの健康を害することにもなりかねない」と指摘し、教育委員会に改善を求めています。

「防寒着の着用制限」についても、見直しが必要です。

⑨授業中の水分補給禁止

 校則に記載されているのは中学2校だけでしたが、多くの学校で禁止しているようです。

健康上の配慮が進み、実技科目での禁止は減少しているようです。しかし座学についてはそうではないようで、高校生から疑問の声が寄せられました。

公的な会議においても飲み物が提供される場面が広がっており、時代の変化に応じた検討がされるべきではないでしょうか。

⑩校外活動の規制

 校外での活動に関する規制が中学校の1/4、高校の1/2に残っています。学校が関与すべきでない項目については、直ちに見直すべきです。

⑪犯罪行為を禁ずる校則

 高校の校則を見て驚くのは、「暴行、脅迫、恐喝、窃盗、詐欺、賭博、万引き、公共物の破損、シンナーや薬物等の所持・使用、刃物等危険物の所持」等の犯罪行為を禁ずる校則が少なくないことです。

 学校が無法地帯でない事は当然ですが、校則で禁ずる必要はありません(実際全ての犯罪が掲載されているわけではありません)。

こうした校則を見て、新入生や保護者が高校生活に希望を抱けるのか、見直しが必要だと感じます。

⑫改正手続きについて

 昨年改訂された「生徒指導提要」は、「校則を策定したり、見直したりする場合にどのような手続きを踏むことになるのか、その過程についても示しておくことが望まれます」と述べています。

しかし、校則の改正手続きについては、一部の中学校に記載があるのみです。生徒や保護者の参画を促す上からも、大きな課題と言えるでしょう。

⑬「進路」を口実とする生徒指導の実態

 校則による細かな規制に関し、学校側が示す理由は主に「進路実現」のようです。実際校則の中には次の様な記述があります。

・「『毎日が面接日』として指導します」(A高校)

・「生徒の進路実現こそが最終目的であり、そのために地域・外部からの大きな評価要素である服装・頭髪指導を徹底し、どのような場面でも信頼されるブランドとしての『○○高校』を作り上げることにより一人ひとりの進路目標の実現を目指す」(B高校)

・「社会から信頼される(いつでも企業や上級学校で面接できるような)スタイル」(C高校)

・「ツーブロックなど、高校入試の際にふさわしくない髪型はしない」(D中学)

 「進路実現」のため、学校生活全般が規制されることに合理性はありません。校則による細かな統制を、果たしてどれだけの「企業や上級学校」が求めているのかも疑わしいと感じます(「校則見直し」は、文科省以上に経産省が熱心です)。

「進路」に振り回される校則や生徒指導は見直されるべきだと思います。

⑭校則をめぐる生徒指導の問題

 校則をめぐる生徒指導に関しても、高校生や保護者からの声が届いています。納得のいかない校則について理由を質したところ、先生からは次のような返答が返ってきたそうです。

・世の中に出たら不条理な事はたくさんある。それにも慣れておくべきだ。

・これは学校のルールだから。ルールは何でも守らないといけないだろう?

・そんなに自由にしたかったら、自由にできる学校へ行ったらいい。

・校則っていうのはあなたたちが社会へ出たとき、レールから外れないようにするためにあるんだよ。

・わがままな行動で学校のイメージを落としていることを分かっているのか?

 合理的な説明のつかない校則を、無理矢理擁護する先生方の苦労が垣間見えますが、「校則の見直し」だけでなく、校則をめぐる生徒指導の見直しも重要な課題だと思います。


【生徒・保護者の参画の必要性】

 日本財団が実施した「18歳意識調査」では、日本の若者の社会に対する意識の低さが注目を集めました。「自分で国や社会を変えられると思う」「自分は責任がある社会の一員だと思う」「社会課題について周りの人と積極的に議論している」「自分を大人だと思う」等の項目が、諸外国と比較して突出して低かったのです。

 日本の学校の校則や生徒指導の影響ではないかと懸念します。実際、私たちが中高生から校則に関する意見を聞く中でも、「どうせ変わらない」「言ってもムダ」との返事が少なからず返ってきました。

「校則見直し」を、主権者教育の観点から重視すべきとの指摘があります。

「校則見直し」をリードする熊本市の遠藤教育長は、「(校則改革)の一番の目的は、『民主主義を経験する』ことです」と述べ、学校管理規則に「校則の制定・改廃に教職員、児童生徒、保護者が参画すること」等を書き加えました。

「校則見直し」に、誰がどのように参画するかも大事なポイントです。校長先生や教職員のみなさんは、各校での「校則見直し」への生徒・保護者の参画を広げる必要がありますし、教育委員会はそのために必要なイニシアティブを取って欲しいと思います。


【高知県教委に求めること】

「校則見直し」は、学校単位で進める課題です。しかしそれを支援する教育委員会が果たすべき役割は大きいと思います。

「校則見直し」の先進自治体においては、教育委員会が実態調査を行い、進行状況や課題を公表し、「ガイドライン」を作成しています。

私たちは、東京都、岐阜県、三重県、大分県、熊本市、広島県三原市、神戸市、高松市等の教育委員会の取り組みを調査し、県内の取り組みと比較してみました。

高知県内では、2021年に高知市教育委員会が「(校則見直しの)ガイドライン」を作成しました。高知県教育委員会は、昨年県立学校における実態調査を行い、12月に「校則見直しの」進行状況を公開しました。本年8月にも、新たな調査結果ならびに「校則の見直しの視点」を発出しています。

積極的な取り組みが始まっていますが、一方で「ガイドライン」の作成は高知市教育委員会に留まり、各市町村の取り組みには随分温度差があるようです。

県立学校はもとより、市町村立学校の「校則見直し」を加速させるため、高知県教育委員会には次のことを求めます。

①「ガイドライン」の作成

 「(校則見直しのための)ガイドライン」作成をお願いします。

高知県教育委員会の作成する「ガイドライン」は、県立学校の指針となるだけでなく、各市町村教委が「ガイドライン」を作成する上での指針ともなります(市町村の教育長さんからは、高知県教育委員会に「ガイドライン」を示して欲しいとの声も上がっています)。

 また、「ガイドライン」の中には、次の項目を盛り込んでもらいたいと考えます。

 ・見直しの目的

   高知市や他県の「ガイドライン」において、「自ら判断し行動できる児童生徒を育成する」という本来の目的が記されています。何のための「校則見直し」かを明示して欲しいと思います。

 ・仕組みの提起

   多くの「ガイドライン」において、「校則検討委員会」等の校内組織の設置が提起されています。

 継続的な取り組みを進める上で、仕組みの構築は不可欠であり、「ガイドライン」には、こうした仕組みの提起も必要だと思います。

また他県には、「少なくとも年1回の見直し」を求める規定や、生徒の率直な発言を保障するための人数構成についての規定もあり、参考になります。

 ・改訂の流れを明示

熊本市教委「ガイドライン」は、「校長は、(生徒・保護者との)協議の結果を尊重することを基本とするが、協議での結果と異なる決定をする(校則制定の有無や校則の内容)場合は、教職員や児童生徒、保護者へその理由を説明して下さい。」としています。

 校長の権限と生徒・保護者の参画の関係を整理し、改訂の流れを明示することも必要ではないでしょうか。

・不適切な校則の指摘

   多くの「ガイドライン」において、次のような不適切な校則が指摘されています。

  1)生まれ持った性質に対して許可が必要な規定

  2)さまざまな文化や性の多様性に配慮がない規程

  3)健康上の配慮がない規程

  4)合理的な理由を説明できない規定や人によって解釈が曖昧になるような規定

 このように、現時点では明らかに不適切な校則についての指摘も必要だと思います。

・校則の公表について

 「生徒指導提要」において、「(校則を)ホームページ等に公表しておくこと」が適切とされています。各校に校則の公開を求める事も必要だと思います。

②継続的な進行調査と課題の公表

8月に県教委が発出した「校則(生徒心得)の運用等に関する調査結果及び校則の見直しの視点について」は、時宜を得た対応でした。

次年度以降も継続的な調査・分析を行い、その結果については学校に対する発出に留めず、ぜひHP等での公開をお願いします。