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Evidence Based Physical Therapy - 理学療法士 倉形裕史のページ

患者さん、リハ専門職向け:Evidenceから見た急性腰痛(ぎっくり腰)になったらすべきこと、すべきでないこと。~理学療法士が勧めるぎっくり腰対策~②

2018.09.15 23:38

おはようございます。University College London (UCL)の理学療法士の倉形です。理学療法士はリハ専門職のひとつです。 


前回から、ぎっくり腰になった際にどういうことをすべきか?ということを書いています。

今日は、具体的な話に入る前に注意点を一つ書きます。前の記事でサラッと書きましたが、重要なことです。 


患者さんが不利益を被らないために、知っておいて欲しいなと思う情報です。


 診断は、必ず『整形外科医』にしてもらって下さい(『総合診療医』でもいいかも知れません。とにかく『医師』に診断してもらうことが大切です)。 


つまり、病院や整形外科クリニックなどの『医療機関』に受診するということです。 これは、いくら強調してもしすぎにはならないと個人的は思います。 


現在、街には病院の他に整骨院、カイロプラクティックセンター、鍼灸院、マッサージ屋さん、その他の『医療サービス提供施設』があります。理学療法士・作業療法士が自費診療(保険が使えず全額を患者さんに負担頂く)で提供しているものもあります。 

それらにかかれば、なんらかの『診断』が下されます(診断を下さないことには、その先の治療が行えないからです)。 


恐らく、姿勢や筋肉のこわばりなどが原因であると『診断』されることが多いと思います。 


ただ、問題は、現在の日本において

『医師』以外の医療職種は、『診断』に関するシステマティックな教育を受けていない。

ということです。少なくても、現在の日本において、病院などの医療施設で最もポピュラーなリハ専門職である理学療法士、作業療法士、言語聴覚士はその教育課程において『診断』に関する教育は受けていません。 


法律上、医師が下した診断に基づいて、理学療法、作業療法、言語聴覚療法を提供するのが私たちの業務となっています。



補足:難しければ読み飛ばしてください。

厳密にいえば、『診断の補助』というものが業務の中に含まれていて、症状に関して医師に報告をすることはあります。しかしながら、10年以上の理学療法士業務経験において、『診断』したことは一度もありません。 

補足終わり 



なぜこれが問題かというと、稀にではありますが、腰痛には下記の様な重篤な疾患が紛れていることがあるからです。  

 ① 外傷による腰部や背骨の骨折  

 ② ガンの腰部・背骨への転移  

 ③ 感染などによる腰部の炎症を伴う症状  

 ④ 大動脈解離などの内部疾患            

   など。 


これらの重篤な疾患は、トレーニングを積めば、MRIやレントゲンが無くても比較的簡単に除外できます。知識さえあれば、医師以外の医療職でも可能です。 

ただ、正規の『診断に関する教育』を受けていない人間に診断されるということに、私は恐怖を覚えます。知識はあるけど無免許の医師(素人)に手術されるのと同じ感覚です。


私達リハ専門職は、『腰痛治療』の専門家ではありますが、『診断』の専門家ではありません。

『診断すること』と『解剖・生理学の知識があること』は全く別のスキルです。 



医療に関係する方以外は、恐らくこの様なことはあまり意識したことがないかと考えて書きました。推測ですが、医療職以外の方々は、私達理学療法士を含む『医師以外の医療職』が、腰痛の原因などに関して何か『診断』めいたことを言う時に、専門的な教育に基づいて『診断』していると思われるかもしれません。ですが、残念ながらそれは『医師以外の医療職』を過大評価していると言えます。


医師以外の医療専門職に『診断』を受けるということは、少し意地悪く言えば、近所の物知りなおじさん、おばさんに健康上のアドバイスを受けるのと変わりません。 



そして、素人による健康上のアドバイスを受けて、不利益を被れば、通常は自己責任です。

一方、もしも医師が明らかに誤った診断をして治療を行う、もしくは重篤な疾患を見落として患者に不利益があった場合(検査をしておきながら、がんを長い間見落としていたとか)、医師や医療機関は何らかの制裁を受けます。 


『教育内容』、そして『診断に関して責任がある』ということで、医師の診断能力は、他の職種と比較にならないほど高いです。それでも人間が行う以上、時に重大な診断ミスが避けられないわけです。

となると、医師以外に診断を受けるということがいかに怖いものかと想像がつくのではないかと思います。。。。。 


時折、メディアで『医師以外の職種のゴッドハンド』が、「医師も見抜けなかった原因を発見して、治療しました」という記事なんかを見ます。もしかしたら事実なのかもしれません。

でも、表に出ないだけで、その数十倍、数百倍の数で「『医師以外の職種のゴッドハンドたち』が見抜けなかった原因を『普通の医師』が発見した」例があるはずです。

この多くの例は埋もれてしまっているはずです、珍しいことでないからです。最初のようなことは、稀だからニュースになるわけです。


 以上から、私個人は、どんなに有名だったり、キャリアが長い方であっても、『医師以外の医療職』に診断を受けたくはありません。また、私個人も『診断』めいたことは言いたくありません。責任も負えませんし、怖いからです。 


ですので、腰痛の治療を受けることを検討するときは、まず病院やクリニックなどの『医療機関』に最初にかかることを強く、強くお勧めします。 


これは、リハ専門職が信頼できないということではもちろんありません。適材適所があるので、正しく使い分けることが患者さんにとって最も利益がありますという話です。


書いていて、少し悲しくなりましたが、理学療法士自身が、『理学療法士の現在の限界』を書くことに意義があるかなと思って書きました。 


長くなりましたので、次回に続きます。 


今日も、最後までお付き合い頂きありがとうございます。 

 理学療法士 倉形裕史 


続きの記事へのリンクです。






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