ハッピー・エンド
ハッピー・エンド
2004/03/01
新宿武蔵野館3
普通、不倫にハッピーラブコメみたいな、「ハッピーエンド」なんてまず、考えられないのにタイトル堂々と『ハッピー・エンド』
不倫して幸せになる人もいるけれども、必ず誰か関わった人が傷ついている。
なんとも皮肉で考えさせられるタイトルです。よく、思いついたと思います。
そして、またまた普通だったら「外で働いている男が浮気して、妻はそれを知って、浮気する、又は浮気衝動を
覚える」の「男女」が逆転している設定なのですね。
男は「女のように」煮え切らない、腹の中では嫉妬が渦巻き、浮気衝動も覚える、女は「男のように」家庭を壊す気
はなく通り過ぎたい、刹那的な愛情のはけ口を求めている。
こういった逆の設定がありきたりなドロドロ愛憎地獄になっていない、しっかりとした人間ドラマになっていますね。
夫が映画の中でまさにその典型みたいなテレビドラマを見ていますが出ているのが『冬のソナタ』のペ・ヨンジュンでした(笑)
また古本屋に入り浸り「恋愛小説が読みたい」なんていうところも女性的なところ。
そういう細かい演出がとても上手いですし、小物などの伏線の張り方もミステリータッチだしで、
ただの18禁成人映画、ではないので見逃すのもったいないですね。
まぁ、この映画の良さがわかるにはやっぱり成人していないと無理だとは思うので「立派な成人映画」です。
好きなシーンは映画には関係ないのですが、妻がベランダでタバコを吸っていると、提灯がふわふわと
浮かんでくる所です。
提灯は下げるもので浮かぶものではないのですが(笑)暗くなった外に黄色い光がぼぅ~っと浮かんできて、
妻はそれに手をのばそうとする・・・しかし、手は届かず空へと飛んで行ってしまう。
思わず、『旅情』のくちなしの花を思い出しましたね。
川に落としたくちなしの花を男が取ろうとするのですが、届かない、流れて行ってしまう。それは結局、
結ばれる事のない、手に入らない愛の象徴だったのですが・・・この提灯の光は色々な「幸福・満足」の象徴の
ように思えました。
絵的には、ティム・バートンとか(笑)チェン・イーモウの『紅夢』の赤い提灯がだぶりました。
とても幻想的で美しいシーンです。
3人の俳優さん、描き方、演じ方によっては「とてつもなく嫌な人」になるところ、市民的で親しみやすくて身近で・・・
ドロドロが、緊張感になっているギリギリである、というのも好きな所です。