7月12日(木)『歌舞伎座昼の部 三国無雙瓢箪久 出世太閤記を初めて見た。』
歌舞伎座七月昼の部を観る。秀吉を海老蔵、光秀を獅童が演じる、三国無雙瓢箪久(さんごくむそうひさごのめでたや)出世太閤記。
冒頭、海老蔵がすっぴんで登場し、織田信長が謀反に会い殺された時、配下の武将がどこで、誰と戦っていたのかと言う説明があった。舞台は、本能寺から清須会議までの50日間の秀吉の戦いを描いた物語だと説明があった。えっ、信長の家来になって、草履取りから、どんどん出世していく通常の太閤記の物語ではないのだ。この点、分かりやすく、丁寧な説明があって納得したが、太閤記なのに、光秀の謀反で信長が殺された後の秀吉の活躍を描いた物語だと海老蔵から聞いて驚いた次第。
最初の幕が、国姓爺合戦の楼門のような、中国風の城門で始まるが、太閤記との関係性が分からず、一体何の事が分からず不思議に思った、松竹から送られてくるほうおうは読むが、筋書きは買わず、イヤホンガイドも耳にしない私には、何で中国なのか、舞台の進行が分からなかった。そのうち三蔵法師と、その一行、沙悟浄と猪八戒が出て、孫悟空の世界と分かる仕掛けである。海老蔵が孫悟空を演じ、秀吉が猿と呼ばれていたから、猿の孫悟空で、多分秀吉の夢の中の世界が描かれていると想像したが、まだ舞台が始まったばかりなのに、いきなり孫悟空の宙乗りでは、何の意味がある宙乗りなのか、全く分からず、唖然とした。観客も、戸惑っているようで、盛り上がりに欠けた。
次の幕で、孫悟空の夢が、秀吉の夢かと思ったら、森蘭丸の夢だった。えっ、何それ、宙乗りまでして、秀吉の夢でなくて、蘭丸の夢の世界だ?意味わかんない。夢のシーンを描くなら、普通は主人公の夢が御約束事でしょう。私の脳は、ここで止まってしまい、その後の舞台の展開に乗り切れなかった。
秀吉が、猿と呼ばれていたから、西遊記でもあるまい。孫悟空の猿の格好をして海老蔵が出て来て、金髪に、赤の衣装の格好で、意味のない宙乗りを見せる。頭や体を指で掻いて、猿の仕草をみせて、海老蔵得意の真っただ中の宙乗りだろうが、コミカルすぎて天下の海老蔵が泣く。宙乗りは、すればいい物ではなく、ドラマのピークに持ってくるものだろう。だから観客の心を掴む、拍手も自然に起こる。けれんで売った先代猿之助は、何と言うだろうか。けれんにもならない宙乗りに、私は悲しさが溢れてきた。もう集中して舞台を見る気力がなくなった。
舞台は、本能寺の変からの秀吉の活躍を描いていたが、筋が分からないし、感動の場面もなく、面白くなかった。白塗りの秀吉はイメージが湧かない、更に海老蔵の声がくぐもって、良く聞こえず、いらいらした。マイクを使って場内に拡声しているのだろうが、声が良く聞こえないのは、どういうことなのか。歌舞伎役者がマイクを使う事は、私は理解できないが、マイクを使うのなら、きちんと拡声し欲しい。成田屋と声をかけたいが、かける場面がなく、困った。場内からも、成田屋と言う掛け声がほとんど聞こえなかった。
舞台のあちこちに、どこかで見たシーンがあったが、最初の孫悟空で、出鼻を挫かれ、見る意欲がそがれてしまった。獅童の光秀はニンに会うと思った。