便器戦争（ベンキ ウォーズ）

【配役】

適当です。

カシュカ：……ここ、か。

バギダン：あんちゃん、この辺じゃ見ねぇ顔だな。

カシュカ：……陰気臭いところだな。

バギダン：おいおい、喧嘩売ってるのか。

カシュカ：い、いや、すまない、そんなつもりは。

バギダン：口の利き方には気をつけろよ、なめた口聞いてたら、ここ……『レストルーム・タイラント』じゃ簡単に首がとぶぜ。

カシュカ：す、すまない、本当に、そんなつもりは無かったんだ。

バギダン：……まあ、いい。用件はなんだ？ここは『レストルーム・タイラント』いちの情報屋だ。『ブツ』を積めばどんな情報も手に入る。

カシュカ：……探しているものがあるんだ。

バギダン：まずはお代を提示しな。話はそれからだ。

カシュカ：……５だ。

バギダン：ハッ！！笑わせる！！「５」ロールだと？ガキの使いでももっと出す。帰りな、あんちゃん。背中には気をつけろよ。

カシュカ：５ロールじゃない。

バギダン：……あ？

カシュカ：「５」ケース、だ。

バギダン：なっ……お前、今なんて言った。

カシュカ：「５ケース」って言ったんだよ。トイレットペーパー５ケース、１ケース１２ロール入り。しめて６０ロールだ。

バギダン：な、なん……だと……。

カシュカ：足りないか？

バギダン：へっ……へへへ、ば、ばか言っちゃいけねえ。ペーパー６０ロールで動かねえ情報屋なんているかよ。なんの情報が入用なんだ？

カシュカ：……『和式トイレ』

0：２０××年、日本から『和式トイレ』が消えた。

0：小学校ならびに中学校、果ては高等学校まで。

0：本来設置されていた『和式トイレ』はなくなり

0：どの学校でも『洋式トイレ』が使われるようになった。

0：若い世代は総じて、『和式トイレ』の使い方を知らずに育った。

0：そう、日本が誇る『和式トイレ』は、まず教育の場から存在を消したのだ。

0：そして、次第にその波は『大人社会』にも影響を及ぼした。

0：そう、公共施設や商業施設からも、『和式トイレ』は姿を消したのだ。

0：人々は楽観的だった。

0：まだ、この事の重大さに気づいていなかったのだ。

0：人々は、いや、日本国民の記憶から『和式トイレ』は消え失せた。

0：人々は口々に言う。

0：「洋式トイレのほうが楽やし、ええやん、それで。」

0：日本は、いや、世界は『洋式トイレ』に支配された。

洋式閣下：全国民、いや、すべての日本人よ！

洋式閣下：我々は世界の『洋式トイレ』を牛耳る、秘密結社「ウォシュレット」。

洋式閣下：貴様ら日本人は実に愚かだ。

洋式閣下：自身の文化である『和式トイレ』の生産をやめ、洋式トイレにふさわしい『ウォシュレット付き便座』などという物に踊らされた！！

洋式閣下：貴様たちの技術のおかげで、我々が……洋式トイレ派が！！こうして世界を手にした！！！

洋式閣下：ふは、ふははははは！

洋式閣下：そして、満を持して我々は宣言する。ああ、宣言しよう！

洋式閣下：本日より！！！すべての洋式トイレは我々が管轄する！

洋式閣下：すべての洋式トイレは我々の許可なしには使用できない。

洋式閣下：使用料一億万円！この額を払えなければ貴様たちは失禁するほかない！はははは！

0：世界は震えた。

0：トイレのタンクの水がこぼれてしまうくらい、震えた。

0：秘密結社「ウォシュレット」の登場により、世界から実質「トイレ」が無くなってしまった。

0：トイレが無くなったことにより、人々は堕落し、核の炎は燃え盛り、人々から希望が消えた。

0：このお話は、我々人類が「希望」を取り戻す英雄譚である。

0：『排泄英雄列伝』

0：『BENKI　WARS』

ミチル：う、うぐぐぐぐ……。

闇のトイレブローカー：さあ、どうするね、姉ちゃん。

ミチル：こ、こんなの……卑怯よ……うぎゅぎゅぎゅ……

闇のトイレブローカー：ほーら、漏れちまうぜ、けーっへっへっへ。

ミチル：は、払うわ……払うわよぅ………

闇のトイレブローカー：ひっひっひ、まいどあり。「裏トイレ」はこの路地の先だぁ

ミチル：ど、どいてよ……うぎゅぎゅぎゅ

闇のトイレブローカー：トイレットペーパー３個、確かに頂戴したぜ、ひひひ

闇のトイレブローカー：「ごゆっくり」

0：ミチルが腹を抱えながら路地の先へと歩みを進める。

0：もう、腹は限界だ。

0：一週間は我慢をしている。

0：いつ破裂してもおかしくはない、そんな状態の中限界がきた。

ミチル：よ、よりにもよって……こんな裏街……『レストルーム・タイラント』で……限界がくるにゃんて……はひゅぅ……

ミチル：で、でも、助かった。

ミチル：残りのペーパーをすべて払ってしまったけど……「裏トイレ」にありつけた……

ミチル：ひ、ひさびさの……洋式トイレ……うう……

ミチル：は、はやく……。

0：ミチルは、がたついた木の扉をあける。

0：待ちに待ったトイレ、見慣れた「洋式トイレ」。

ミチル：なっ…………なによこれ………

0：しかし、そこにあったのは

ミチル：と、トルコ式便器じゃないのこれー－－－－！！！

【軽快な音楽と共に解説が入る】

ベン：ベンと！

キー子：キー子の！

ベン：トイレを知ろう！「ととととトイレ」のコーナー！

キー子：いえーい！

ベン：今週は「トルコ式トイレ」について勉強していくよー！

キー子：ねーねー、ベン

ベン：なんだい？キー子

キー子：お話にもでていた「トルコ式」のトイレってどんなものなのぉ？

ベン：よくぞ聞いてくれました！イグザクトリィだね、キー子！

キー子：えっへん！あ、ちがった、だっぷん！

ベン：オイオイオイ！ちっちゃい「つ」と「ん」しかあってないじゃないか、ははは！

キー子：めんごめんごっ

ベン：トルコ式トイレについて説明するぜぇ！

ベン：いわゆる「スクワットトイレ」と呼ばれる和式トイレと似たようなトイレだ！

キー子：ええ！和式トイレとおんなじなの！

ベン：のんのん、キー子、おんなじではない、似たようなトイレなだけなんだ！

キー子：どんなところが和式トイレとは違うのぉ？

ベン：なんかこう、すごいよ

ベン：こう、ね、なんか、染みんプールとかにさ

ベン：めっちゃ狭いシャワールームみたいなんあるやん

ベン：あれよ、もう、もはやあれ

ベン：あれの、足場のとこにさ、こう、小さくした和式トイレみたいな穴があるんよ

ベン：もはや穴

ベン：もうそのまんま穴

ベン：ギリシャとかに旅行にいくとな

ベン：あんねん、わりと、公園とか、公衆トイレとかこれやねん

ベン：もう、ほんま、絶望よ、しゃがむスペースもないわけ

ベン：ならもう穴だけでいいやん、壁いらんやん

ベン：どうしたらええねん、脱いだズボンはどうしたらええねん

ベン：ほんま、もっとこっちの身にもなれや

キー子：また来週ー！

提供　秘密結社ウォシュレット

【暗転】

バギダン：あんちゃん、悪いことは言わない。

バギダン：和式トイレは失われしロストテクノロジーだ。

バギダン：追うだけ無駄、たどり着く先はボットン便所とおなじ。

バギダン：そう、一度落ちれば汲み取り車が来るまで這い上がれない蟻地獄……いいや、クソ地獄だぜ。

カシュカ：わかっているさ、そんなこと。

バギダン：わかっちゃいねえ。

バギダン：今じゃ洋式便所しか使えねえ軟弱者ばかりだ。

バギダン：知ってるか？蹲踞（そんきょ）は我々新人類には出来ない代物だ。体がそうなっちまってんだ。

カシュカ：うんこ座り、だろ。

カシュカ：蹲踞だなんてかしこまって言うなよ。

バギダン：うるせえ！俺は生まれが上流家庭なんだよ！

カシュカ：……秘密結社ウォシュレット、知ってるだろ？

バギダン：知らないやつなんているかよ。

カシュカ：やつらを倒すためには、俺たち日本人はうんこ座りを思い出さなきゃいけない。

バギダン：お前……まさか……

カシュカ：……ああ。その、まさか、さ。

バギダン：甦らせるつもりか……和式トイレを……っ！！！

【中略】

※ここからはセリフのダイジェストでお送りします。

※なんかかっこいい戦闘BGMあたりが流れる。

カシュカ：ミチル！！いい加減にしろ！

カシュカ：新人類としてお前が！新人類の代表としてお前が！

カシュカ：うんこ座りを習得しなければ……日本に未来は無いんだぞ！！！

闇のトイレブローカー：俺も幼い頃は思ってたさ。なんでトイレの事で争ってるんだろう。排泄は自由なはずなのに、ってさ。

洋式閣下：はははは！！便器戦争の忘れ形見、踏ん張りのカシュカがこんな所で何をしている！！！

カシュカ：くそ……っ、なぜお前が……！！！

洋式閣下：臭うのだよ、カシュカ！貴様のことなら、なんでもわかるのだからなあ！！！

ミチル：か、カシュカ師匠！！！

カシュカ：ミチル、逃げろ、今のお前のふんばり力では奴には敵わない。

ミチル：で、でも……！！！

カシュカ：いいから行け！！！！！

ミチル：し、師匠……

カシュカ：お前が見せるんだよ、全日本人に。和式トイレの使い方を。うんこ座りの仕方を！！！

カシュカ：……かつての、大日本帝国、和式王家の血筋のモノとして！！！

ミチル：わ、私が……和式王家の血筋……っ！？

バギダン：何を隠そう俺はよ、産まれてこの方トイレなんてみたことねえのさ。

バギダン：だってよ、動物は皆、してるじゃねえか。

バギダン：外でよ。

ミチル：バカみたい。それじゃ動物とおなじじゃない。

バギダン：そうさ、俺らは動物だろ？

ミチル：いいえ、私たちは人間よ。人間だから、トイレを使うの。トイレを使う事こそが、私たちを人間にしているのよ。

バギダン：変わったな、お前。

ミチル：……師匠の、受け売りよ。

バギダン：……カシュカの野郎も、草葉の陰で喜んでるだろうぜ。踏ん張りながらな。

洋式閣下：なぜ……なぜだ！！！

洋式閣下：なぜ日本国民からのトイレ使用料の振込がない！！！

洋式閣下：や、やつら……まさか……

洋式閣下：トイレを……しないのか……っ！？

闇のトイレブローカー：あんちゃん見ない顔だな……？どこからきた？

カシュカ：わからない……何も、覚えてないんだ

闇のトイレブローカー：記憶喪失か

カシュカ：だが、1つだけ、覚えてることがある

カシュカ：……和式トイレを……俺は探さなければならない……

洋式閣下：このドグされ野郎めが！！！離せ！！！！

ミチル：いやだ！！！絶対離さない！！！！これは私が見つけた和式トイレだ！！！

洋式閣下：ちょこまかと……目障りなのだよ！！！和式の者が！！！！

ミチル：あなた達はくだらない！！！洋式トイレも、和式トイレも、どんなトイレもすべては国の民のためにある！！！！

バギダン：み、ミチル！！！無茶をするな！！！

ミチル：だめ！絶対諦めない！ここで諦めたら私はただのトルコ便器の使い方がわからなくて失禁しただけの女よ！！！！

トイレの神様：下らぬ、実に下らぬ。

【ダイジェスト終わり】

洋式閣下：ぐはっ！！！

ミチル：洋式の！！！

バギダン：み、ミチル！洋式閣下！！！

洋式閣下：だ、大丈夫……かすり傷だ……ぐふ……

ミチル：無理しないで。私たちの力を合わせなければ、トイレの神様は倒せない。

洋式閣下：和式の。なかなかいい事を言うじゃないか。

洋式閣下：貴様の師匠のことを思い出す。

ミチル：……踏ん張りのカシュカ。

ミチル：師匠なら、こういう時、どうするかな。

トイレの神様：貴様たちは我を怒らせた。

トイレの神様：不用意に便器戦争なんぞおこし

トイレの神様：トイレを侮辱したのだ。

トイレの神様：許すまじ、人類。

ミチル：……誰も、トイレを侮辱なんてしてないわ。

バギダン：ミチル……

洋式閣下：……そうさな、我々はトイレを愛している。

バギダン：洋式の……

闇のトイレブローカー：へへ、その通りでゲスよ

バギダン：闇のトイレブローカー……

ミチル：洋式トイレは、とても清潔だわ。なにより、老人も座って排泄できるから足腰に負担がない。

洋式閣下：和式トイレはすごいぞ、何せ人間工学の理にかなった踏ん張り方で、一番理想とする排泄方法を自然と行える。

トイレの神様：くは、くはははは！！！

トイレの神様：だからなんだと言うのだ！！！

トイレの神様：喰らえ！！！！排泄神部撃！！！

ミチル：きゃーーー！！！

洋式閣下：のわーーー！！

バギダン：2人ともーーー！！！！

ミチル：こんな時に……師匠がいてくれたら……

カシュカ：なーんだ、ミチル、情けないな。

ミチル：……えっ

洋式閣下：お、お前は……！！！

カシュカ：なあ、知ってるか？

カシュカ：人間、トイレなんかなくてもさ

カシュカ：排泄はできるんだよ。

カシュカ：踏ん張りのカシュカ？

カシュカ：いいや、今は違う、俺はな。

カシュカ：森羅万象を司る男、そう。

カシュカ：野グソ派のカシュカさ。

ーーーーー

【エンディングテーマ】

トイレ、トイレトイレ

和式トイレと洋式トイレが主流だけど

トイレ、トイレトイレ

それ以外にもトイレはあるのさ調子に乗るなよ

消して

Rewriteして

して

トイレして

ちゃんとトイレして

消して

換気扇消して

換気が終わったら

きちんと消して

Rewriteして

ーーーーー

カシュカ：トイレの神様……強い敵だった。

ミチル：でも、師匠が助けてくれた。

カシュカ：当たり前さ、俺はお前の師匠だからな。

洋式閣下：カシュカ……

カシュカ：よう、洋式の。そろそろ決着つけるか？

洋式閣下：……いいや、良しておこう。

洋式閣下：人類に平和が来たんだ、決着なんて、野暮なはなしだろ。

バギダン：はっ、ちげぇねえや。

闇のトイレブローカー：トイレだけに、水に流すってことでげすね。

ミチル：そう、その通り。トイレのあとは必ず、流すものでしょ？

カシュカ：ははは！その通り！！！！

洋式閣下：トイレバンザイ！！！トイレバンザイ！！！

そして、世界に和式トイレが戻った。

私たちの便器戦争は、こうして終わりを告げたのだ。

めでたし。