失くした夏

2018.09.17 08:18

休館日で、公民館のドアは、かたく閉まっていた。

貼り紙を見て、ホッとひとつ、安堵の息をはく。


きびすを返し、次の目的地に向かおうとしたら、法師蝉が鳴きだした。


惜しい、惜しい、と鳴いていた。


不意に。

飛びっきり暑くて、残酷な夏の終焉を、やっと実感する。


7月6日から、途方も無く、長く感じた夏だった。


多くの人たちが、何かしら、大切にしていたモノを、失くした夏だった。


ボクも、わずかだが、大切にしていたモノを、失くしていた。


つらいとき、かなしいときこそ、笑えと言う人がいる。


笑えなくても、飛びっきりの笑顔で迎えてくれる人がいたら、それだけで、おおいに救われる。


たぶん。


ボクは、それだけで、何とかこの、どうしようもなく、無力感に苛まれた夏を、乗り切ってこれたのだと思う。


感謝してる。


心から。


ありがとう。


いつも、飛びっきりの笑顔を見せてくれて。


アナタが、ボクのイノチだった。


タイセツなアナタへ。


ほんとうに、ありがとう。


また、明日からも、ガンバレル。


ダレカノタメニ。




ボクは、無人の公民館の敷地を後にし、次の目的地へと、車を走らせた。