患者さん、リハ専門職向け:Evidenceから見た急性腰痛(ぎっくり腰)になったらすべきこと、すべきでないこと。~理学療法士が勧めるぎっくり腰対策~④
おはようございます。University College London (UCL)の理学療法士の倉形です。理学療法士はリハ専門職のひとつです。
数回のシリーズでぎっくり腰になった際にどういうことをすべきか?ということを書いています。
前回までで、ぎっくり腰の時の対応の概要と、注意してほしいポイントを書きました。
ぎっくり腰になった際に重要なことは『正しい情報を得ることです』と書きました。
では、『正しい情報』とは何か?
1.ぎっくり腰の自然経過(何もしない場合の経過)の知識
2.ぎっくり腰になってから、どのように過ごすと良いか?
を意識して生活することが大切です。以下に具体的に書きます。
1.ぎっくり腰の自然経過(何も治療しない場合の経過)はこんな感じ。
① 60%は、2週間以内に自然に治る。
② 90%は、6週間以内に自然に治る。
③ 2~7%は、慢性化する(3か月以上痛みが続く)。
*この、『治る』というのは、痛みが完全に消失するのではなく、症状が多少残っていても日常生活が問題なく送れるようになることです。
このように、ぎっくり腰は、基本的に『治っていく』ものです。『ドンドン症状が悪化して、寝たきりになります』というものではないです。
さらに、めちゃくちゃ腰が痛くても、『腰の重篤な問題』を意味しません。
医師によって重篤な疾患は予め除外されていますし、そもそも85%~90%の腰痛は、腰の筋肉や骨に問題がないのに関わらず生じています。 ちなみに内訳はこんな感じです。
こんな話をすると、『なんで、腰がどうもなってないのに、こんなに痛いんだよ!!寝返りもうてね~んだぞ!!』と怒号が聞こえて来そうですが、落ち着いてください(*_*;。
原因は、残念ながらはっきりと分かっていません。
以前、姿勢と腰痛などに関して書きました。 →結論は『姿勢と腰痛は関係ない』でした。
また、MRIなどの高価かつ高性能な機械を用いて検査してもわかりません
→腰痛患者にも腰痛じゃない人にも同程度の骨の形状の変化があることが分かっています。
近年、腰痛の原因として最も注目をあびているのは、『脳』の機能変化です。
痛みは最終的には脳で感じます。痛みというのは、本来は危険を察知してそれを避けるための重要な信号です。 脳は、危険を知らせる信号としての役割を終えた時、『痛み信号を抑制するための指示を出す』とされています。しかし、強いストレスなどに晒され続けると、この機能が正常に働かなくなることがわかっています。
腰の痛みの原因自体は治っているにも関わらず、脳が痛み信号を過敏に感じ続けてしまうという状態です。 つまり、腰部自体の問題ではなく、脳の機能の問題ではないかと言われています。 この仮説を支持する論文は多くありますが、まだ『決定的にそうだ』とまでは言い切れないのかも知れません。。。
この説明は、治療する側、される側双方にとってなかなか受け入れがたいです。 もしも腰が痛いのに、治療者から『あなたの腰痛の原因は脳です。』と言われたら、多くの患者さんは『はっ??』と思うでしょうし、場合によっては怒り出すかもしれません。 ですが、疫学データが示唆しているように、腰への負担や姿勢といった『人間工学』に基づいた治療や製品開発を行っても、腰痛患者の数は増え続けています。
この事からも、
今、世界では腰痛をより心理的な問題として捉え直すようになっています。
これは当然、『痛みは気のせい』というような精神論的な話ではありません。
腰痛をどの様に捉えて、どういう風に上手く付き合っていくかが決定的に大切であるということです。
このように、腰痛の原因に関しては今なお、議論が続いています。
ただ、『何が原因か?』は、はっきりわかりませんが、『何をすべきか?』は、多くの研究によって明らかになってきています。
長くなりましたので、次回に続きます。
今日も、最後までお付き合い頂きありがとうございます。
理学療法士 倉形裕史
次回へのリンクです。
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