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AbemaTIMES

「明日死んでもいいように楽しく生きようと」不妊治療中にステージ4のがんと診断…AYA世代とがん治療のいま

2018.09.18 07:50

 15日、家族に看取られながら75歳の生涯に幕を下ろした女優の樹木希林さん。がんが全身に転移していることを告白してから5年後のことだった。また、18日には格闘家の山本"KID"徳郁さんが41歳の若さで死去したことが発表された。山本さんは先月、自身のInstagramを通じ、がん闘病中であることを報告したばかりだった。

 1981年以降、日本人の死亡原因の第1位である、がん。結婚、出産、仕事など、未来ある若い世代にも降りかかる可能性も少なくない。今年5月、国立がん研究センターが発表した推計によると、15歳〜39歳のAYA(Adolescent and Young Adult)世代でがんだと診断される人は年間2万人を超えており、年代別に見てみると、15~19歳が約900人、20歳代が約4200人、30歳代が約1万6300人となっている。

 順天堂大学医学部の樋野興夫教授は「寿命も伸び、検診率が昔に比べ高くなったことで患者数や発見率の高まりも見られるが、がんは年齢と関係なく起こる。生きるということががん化への道だ。若い人は進行が速いという説もあるが、がんのタイプによって異なる。今も患者は530万人いて、1年に100万人ががんになる」と話す。

 先述の統計によれば、30歳代のがん種別では1位が女性乳がん、2位が子宮頸がんとなっている。井出久日子さん(42)も、そんなAYA世代のがん患者の一人だ。親族に乳がん患者がいなかったため、自分ががんになるとは思ってもいなかったという井出さん。それでも35歳の頃から毎年がん検診を受けてきた。しかし結婚3年目、38歳の時にステージ4の乳がんだと診断された。現在はリンパと背骨に転移、さらに肺と頭蓋骨に転移の疑いがあるのだという。

 「不妊治療をしていて、採卵して移植をする日にちも決まっている段階で告知を受けた。また元気になって出産できる可能性もあるので、抗がん剤治療をする前に受精卵を凍結した。当初はステージ2bという診断だったが、背骨に転移があるということが分かり、ステージ4という診断を受けた。遠隔転移している場合、一般的にがんは外科的手術が難しく、勧められなかった。医師の方針に沿って、人よりかなり長い期間、抗がん剤治療を頑張っていると、薬が合っていたおかげで、右胸とリンパにあったがんが消えた。骨に転移しているということは、全身に転移しているということなので、胸を全て切除よりは、がんがあった部分を取って、放射線をその部分に当てた方がいいということで、温存手術を選び、放射線治療をした。今も分子標的薬という治療を3週間に1度している」。

 不妊治療のため正社員で働いていた会社を辞めて派遣社員になり、約1年後にがんと診断された井出さん。「理解のある会社で、治療を受けながら週に2、3日、時短で働くことができた。それでも身体はきつかった。今は週4で残業も含めて働いているが、癌になる前と比べて疲れやすい。年齢的なものかもしれませんが(笑)」。

 ジャーナリストの佐々木俊尚氏は「僕もAYA世代の38歳で脳腫瘍に罹った。良性腫瘍だったので今は再発もしていないが、治療のために会社を長く休んだことが、新聞社を辞めた理由の一つだった。50代、60代の場合は周りにも同じ様な経験をしている人がいるので、何となく病気を抱えながらソフトランディングして生きていけばいいという選択肢が出てくるが、ATA世代は"この先どうやってキャリアを積み上げ直せば良いのか"、難しいだろう」と指摘した。


 樋野氏は「検診の種類によっては、がんを見過ごすこともあるし、その気になって探さないと分からないがんもたくさんある」と指摘する。そんな各種がん検診の対象年齢は、概ね40歳以上となっている。また、生命保険文化センターの調査によると、がん保険の年代別加入状況は、18~19歳が4.5%、20歳代が21.8%、30歳代が44.3%、40歳代が44.2%、50歳代が42.6%、60歳代が33.7%となっている。

 井出さんは「薬も含めて、1回6万円くらいかかっている。がんだと診断されたら100万円が出る保険に入っていて、2年に1回受給しているが、抗がん剤の特約には入っていなかったので、今となっては女性特有のがんの保険に入っておけば良かったと思う」と話す。


 従来のがん治療は外科手術、放射線療法、化学療法の3本柱が主体だったが、近年、4本目の柱として「がん免疫療法」が注目されているという。免疫を活かしてがん細胞を阻害するという手法の他、近赤外線でがん細胞だけを破壊する「光免疫療法」、原因の遺伝子を検査し、適した治療薬を使用する「がんゲノム医療」といったものがある。免疫チェックポイント阻害剤は保険適用外の薬の場合1回100万円程度、光免疫療法は保険適用でも100~200万円、がんゲノム医療は解析に50万円程度、治療に7~8万円かかる。

 さらに、民間療法・代替医療に頼る人も多い。2005年の厚生労働省の調査によると、がん患者の45%が何らかの代替医療を利用しているという。1種類以上の代替医療を利用している人の出費は平均で月に5万7000円だという。民間療法・代替医療には様々なものがある。例えば、「金の延べ棒で悪いところをさする」「前世を占い、現世での治療に役立てる」「病気がよくなるイヤホン」といったものまである。

 一方、樹木さんの場合、全身への転移後も「病気をしないのが、健康でいることが良いものであるけれども、悪いものの中に見えてくるものがある。健康であるがゆえに見えないものがある」と語り、積極的な治療はしないという宣言をして多くの人を驚かせた。


 樋野教授は「病気になっても病人ではない、という社会を作らないといけない。人生に期待するから失望もする。外面的な"HAPPY"ではなく、境遇に関わらず、心から湧き出る"JOYFUL"を追い求めるべきだ」と話す。ジャーナリストの佐々木俊尚氏も「無駄にお金をむしり取るようなものは別として、終末期医療の心の支えとして民間療法・代替医療は許容されてもいいような気がする。また、必ず死ぬというのが人間の定めだ。良い車に乗ったとか、フレンチの高い店に行ったとかで満足しても、その先には何もない。"マインドフルネス"という言葉が流行っているように、朝、水を飲んでうまいとか、ランニングをして最高、というような、"今、この瞬間"の気持ち良さを感じるのが感じる方がいいと思う」と話す。


 井出さんは「一生懸命、がんのことを勉強した。人生を前向きに考えないと、病は消えていかない。闘っていくというよりは、がんに向き合って、共に生きていくと決めた。明日死んでもいいように楽しく生きようと3年前に決めた」と話していた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)


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