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収録:クールなシカケで地球を冷やそう!エコ活したくなるシカケワークショップ

2018.09.18 11:00

この記事は2017年1月21日開催イベント「クールなシカケで地球を冷やそう!エコ活したくなるシカケワークショップ」(講師:森山明宏, UX Yokohama代表)の講義内容を元に再構成したものです。地球温暖化に関する情報は環境省および全国地球温暖化防止活動推進センターの資料を元にしています。また、仕掛学に関する情報は、書籍「仕掛学」(松村真宏著, 東洋経済新報社)の記述を元にしています。

目次
● 第1部:地球温暖化対策としてわたしたちができること
 - 「−40%」
 - 地球温暖化とは
 - 地球温暖化のリスク(潜在的危険性)
 - 地球温暖化の対策
 - 家庭におけるCO2排出
 - 家庭でできるCO2削減
 - まとめ
● 第2部:シカケ~行動したくなるデザイン
 - 「正攻法でうまくいくとは限らない」
 - シカケとは
 - シカケの3要件
 - シカケの原理と事例
 - まとめ
● 第3部:エコ活したくなるシカケを考えよう
 - 「〇〇する理由」 を考えてみよう
 - 「〇〇したくなる状況」 を考えてみよう
 - アイデアを飛躍させよう-1
 - アイデアを飛躍させよう-2
 - 「〇〇したくなるシカケ」 を考えてみよう
 - まとめ
● 追記:「クールチョイス・リーダー・アワード2018」開催中!
 - COOL CHOICE LEADER AWARD 2018


第1部:地球温暖化対策としてわたしたちができること

「-40%」

「-40%」とは日本が世界に約束したCO2削減目標値です。

2016年に発効した国際条約「パリ協定」では、21世紀末の気温上昇を2度未満に抑えるため「2050年のCO2排出量を1990年の半分にする」「21世紀末のCO2排出量をゼロ以下にする」ことで世界中の国が合意し、CO2削減の具体策を各国が公約することとなりました。

日本政府は、2016年5月13日に「地球温暖化対策計画」を閣議決定し、「家庭部門」については「家庭から排出されるエネルギー起源CO2の排出量を2030年までに(2013年との比較で)40%削減する」ことを国際社会に公約しました。

21世紀末の気温上昇を2度未満に抑えるため、わたしたちに何ができるでしょうか ─。

本日お伝えしたいこと


地球温暖化とは


地球温暖化とは、地球表面の大気や海洋の平均温度が温室効果ガスによって長期的に上昇する現象です。

地球温暖化の根拠

国連機関IPCCの科学的調査により、地球の平均気温は1880年から2012年の間に0.85度上昇したことが判明しています。

スーパーコンピュータで過去の気候変動をうまく再現できるシミュレーションモデルをつくり、それを元に未来の予想平均気温とその要因を分析した結果、温暖化の主要因は人類の排出する温室効果ガス、特にCO2が原因であるとの結論に達しました。

21世紀末には最悪4.8度上昇

21世紀末平均気温予測は、充分な対策をとった場合・全く対策を取らなかった場合などいくつかの場合に分けて行われています。

予測では、充分な対策をとった場合であっても温度上昇は0になりません。充分な対策をとった場合であっても21世紀末には平均気温が0.3〜1.7度上昇するとされています。また、現状維持の場合は21世紀末には平均気温が4.8度上昇すると予測されています。

地球温暖化のリスク(潜在的危険性)

参考動画

関西空港が大規模冠水、台風21号の高潮で浸水被害も 再開見通し立たず |朝日新聞社 |YouTube https://youtu.be/B1oYz_z1bAU

地球温暖化の影響は、たんに暖かくなるといった単純なものではありません。大きく8つのリスク(潜在的危険性)があると考えられています。

8つのリスク

  1. 高潮(海面の上昇による)
  2. 洪水・豪雨(温帯地域の雨量の増加による)
  3. インフラ機能停止(気象現象の極端化による)
  4. 熱中症(気温の上昇による)
  5. 食料不足(耕作適地の北上/南下による)
  6. 水不足(気象現象の極端化による)
  7. 海洋生態系損失(海水温上昇、海水酸性化による)
  8. 陸上生態系損失(生存適地の北上/南下による)

地球温暖化の対策

地球温暖化の対策には大きく分けて2つの方向性があります。地球温暖化をくい止めるまたは変化をゆるやかにすることを目的とする「緩和」、地球温暖化が起きる前提で被害を最小限に抑えることを目的とする「適応」です。

充分な対策をとった場合であっても21世紀末には平均気温が0.3〜1.7度上昇すると予測されていることから、地球温暖化対策は緩和だけではなく適応も合わせて行う必要があります。

緩和

適応

家庭におけるCO2排出

全国地球温暖化防止活動推進センターの調査結果によれば、家庭から排出されるCO2の主要排出源は「第1位:自家用車」「第2位:水道・給湯」「第3位:暖房」となっています。

「第2位:水道・給湯」は意外な項目ですが、実は水道という社会インフラには莫大な電力が消費されているのです。平成18年度における水道インフラの消費電力量は約80億kWhで、日本全体の消費電力量の0.86%に相当します。各家庭が節水することで電力を節約できます。

家庭でできるCO2削減

家庭できるCO2削減策は、大きく分けて3つ、「エコ商品の購入」「エコサービスの利用」「エコな生活スタイル」があります。

エコ商品の購入

エコサービスの利用

エコな生活スタイル


CO2の削減のために家庭でできることは?

自家用車からのCO2の削減のために

「エコカー」購入または「鉄道・バスの利用」「カーシェアリング」「徒歩・自転車移動」を検討してください。

水道・給湯からのCO2の削減のために

「節水グッズ」購入および「エコクッキング」「こまめな節水」を心がけてください。

冷暖房からのCO2の削減のために

「ゼロエネルギー住宅」「エコリフォーム」「省エネ家電」購入または「ウォームビズ」を検討してください。

第1部まとめ

21世紀末の気温上昇を2度未満に抑えるため、わたしたちにもできることがあります。住み良い地球を未来の人達に残すためCO2削減にご協力をよろしくお願いします。

本日お伝えしたいこと


(記事協力:エコ活bot - おうちでCO2削減 https://twitter.com/eco_katsu_bot

第2部:シカケ~行動したくなるデザイン

「正攻法でうまくいくとは限らない」

環境省は家庭におけるCO2削減のため、削減ノウハウの提供や温暖化についての基礎知識の啓発など、様々な活動を行なっています。

しかしながら、すべての人がCO2削減に関心があるわけではありません。どれだけ情報を周知しても必ず活動に消極的な人は出てきます。

正攻法でうまくいかない時のセカンドプラン、それが「シカケ」です ─。

本日お伝えしたいこと

シカケとは

以下の写真をご覧ください。

男子トイレの小便器の中に、標的のようなものが貼られています。この標的はなんのためにあるのでしょうか?この標的は利用者にトイレをきれいに使わせる目的で貼られたものです。標的に当てたいという心理のせいで、利用者は意図せず小便器を丁寧に使うようになります。アムステルダムのスキポール空港で同様の試みを行なった結果、トイレ掃除にかかる経費を8割削減できたとされています。

これが「シカケ」です。

シカケと仕掛学

シカケとは、「問題解決につながる行動を誘発するきっかけとなり得るもので、且つ "シカケの3要件" を含むもの」を指す概念です。仕掛学とはシカケを研究する学問です。

シカケの概念は、大阪大学大学院准教授の松村真宏氏により2015年に論文発表され、2016年に書籍化(http://amzn.asia/btX0PiF)されました。  

シカケは正攻法でうまくいかない時のセカンドプラン


勉強や禁煙といった心理的苦痛の伴う行動を人にとらせるには一般に「行動変容法」と呼ばれるアプローチが取られますが、シカケの場合、行動する本人に問題解決したいという意思はありません。シカケは正攻法でうまくいかない時のセカンドプランと言えます。

シカケの3要件

仕掛学においては、シカケには3つの要件:誘引性(行動が誘われる)・目的の二重性(仕掛ける側と仕掛けられる側の目的が異なる)・公平性(誰も不利益を被らない)が必要であるとされています。

誘引性

駅の乗車待ち行列の並び位置指示線は、駅利用者の心に「皆で並んだ方が美しい」「皆並んでいるのだから自分もそうするべきだ」等の想いを誘発し、その想いが実際の行動へとつながります。これが「誘引性(行動が誘われる)」です。 

目的の二重性 

駅の乗車待ち行列の並び位置指示線は、実際には「乗客の乗降を円滑にして運行遅延を防ぐ」目的で描かれたものであって、人々の美しく整列した姿を見たいからではありません。これが「目的の二重性(仕掛ける側と仕掛けられる側の目的が異なる)」です。  

公平性

誘引性を悪用することで利用者自身にとって不利益な行動を利用者に取らせることも可能ですが、そのような悪意ある仕掛けは定義上「シカケ」に含まれません。これが「公平性(誰も不利益を被らない)」です。  

シカケの原理と事例

「シカケ」においては、行動の誘発は「きっかけ→動機→行動」という段階を経るとされています。まずシカケとして配置された物理的なモノがきっかけ(物理的トリガー)となって人の心理を誘発し、誘発された心理が動機(心理的トリガー)となって人の行動を誘発します。

心理的トリガー

心理的トリガー(行動を誘発する心理作用)として使えるテクニックには、「挑戦」「不協和」「ネガティブな期待」「ポジティブな期待」「報酬」「自己承認」「被視感」「社会的規範」「社会的証明」の9つのテクニックがあります。 

「挑戦」

人間のチャレンジ精神に訴えかけるテクニックです。

例:ゴミ箱をバスケットボールのゴールポスト型にデザインする

「不協和」

人間の美意識に訴えかけるテクニックです。

例:漫画の単行本を全巻揃えると背表紙全体が1枚の絵になる 

「ネガティブな期待」

行動しないと損をすると思わせるテクニックです。

例:幼児用おもちゃの誤飲防止用に苦い味をつける 

「ポジティブな期待」

行動すれば得をすると思わせるテクニックです。

例:階段の蹴込(垂直面)に階段登り運動の消費カロリーを記載する

「報酬」

行動に対して報酬の提供を約束するテクニックです。報酬の確約ではなく当選のチャンスの提供でも効果があるとされています。 

例:スタンプカードのスタンプ数に応じて特典を提供する

「自己承認」

自分の思い描くあるべき自分になりたいと願う欲求に訴えかけるテクニックです。

例:公共の場所に鏡を置いて髪型を気にする人を引き寄せる  

「被視感」

誰かに見られている時は行いを正さねばならない、という心理に訴えかけるテクニックです。

例:落書き禁止の貼紙に壁に目玉の絵を描く

「社会的規範」

法律や道徳その他の社会的ルールには従わなければならない、という心理に訴えかけるテクニックです。

例:駅の乗車待ち行列の並び位置指示線に沿って利用客が並ぶ

「社会的証明」

周囲の人々の行動からそこになんらかの社会的ルールがあるに違いないと思い込む心理に訴えかけるテクニックです。

例:エスカレータの右側を急ぐ人のために開けておく慣習

物理的トリガー

物理的トリガー(心理を誘発する物理的なモノ)に制約はありませんが、物理的トリガーをデザインする上でのデザインテクニックとしては「五感に訴える」「アナロジー(類推)」「アフォーダンス(操作方法の暗示)」の3つのテクニックがあります。 

「五感に訴える」

嗅覚や聴覚の刺激により、過去の心地よい体験の記憶を呼び覚ますテクニックです。

例:うなぎを焼く良い匂いを嗅ぐとうなぎが食べたくなる

「アナロジー(類推)」

モノの形状から操作方法を暗示させるテクニックです。別の分野の似た事物をデザインモチーフに用いることで、操作方法を類推させます。

例:MS-DOSではディレクトリと呼ばれていた機能をWindowsにてフォルダと機能名称を変え文房具のフォルダを模したデザインのアイコンを与える

「アフォーダンス(操作方法の暗示)」

こちらもモノの形状から操作方法を暗示させるテクニックです。具体的なデザインモチーフのあるアナロジーとは異なり、アフォーダンスは人間の洞察力に頼ることで自由度の高いデザインが可能になります。

例:机の上に座ることができると誰からも教わったことがないのに材質寸法形状などから机の上には座ることができると洞察し、実際に座る

第2部まとめ

もしも人に動いて欲しいのに動いてくれない時、シカケは正攻法でうまくいかない時のセカンドプランになります。皆さんの身近な課題を題材に、どのようなシカケがあれば物事がうまくいくか考えてみてください。

本日お伝えしたいこと

第3部:エコ活したくなるシカケを考えよう

ここからはエコ活したくなるシカケを皆さんに考えていただきたいと思います。とはいってもただ漠然と考えるだけではアイデアが上手くまとまりません。以下の手順でアイデアを考えてみてください。

手順

  1. 「〇〇する理由」 を考えてみよう
  2. 「〇〇したくなる状況」 を考えてみよう
  3. アイデアを飛躍させよう-1
  4. アイデアを飛躍させよう-2
  5. 「〇〇したくなるシカケ」 を考えてみよう

アイデア出しの際はテーマを絞った方がアイデアをまとめやすいです。エコ活はテーマとして広すぎるので、ここでは仮に「自転車or徒歩で通勤通学する」をテーマにシカケを考えてみてください。

1. 「〇〇する理由」 を考えてみよう

2. 「〇〇したくなる状況」 を考えてみよう

3. アイデアを飛躍させよう -1

4. アイデアを飛躍させよう -2

5. 「〇〇したくなるシカケ」 を考えてみよう

第3部まとめ

21世紀末の気温上昇を2度未満に抑えるため、どのようなシカケがあれば大勢の人がエコ活を行うようになるでしょうか。皆さんもぜひ考えてみてください。

本日お伝えしたいこと-1

本日お伝えしたいこと-2

追記:「クールチョイス・リーダー・アワード2018」開催中!

COOL CHOICE LEADER AWARD 2018

2018年9月3日より10月19日まで、環境省はイベント「COOL CHOICE LEADER AWARD 2018」の一環として「COOL CHOICE」を広めるためのアイデアや、あったらいいなと思う「モノ」「サービス」「アクション」などのアイデアを募集しています。募集には一般部門(高校生以上)と子供部門(中学生以下)があり、全年齢が応募できます。

詳しくは下記URLの募集要項をお読みください。

https://ondankataisaku.env.go.jp/coolchoice/award/