【男1:女1】UMQEEL-復讐の英雄-
男1:女1/時間目安20分
【題名】
UMQEEL-復讐の英雄-
(あんきーる -ふくしゅうのえいゆう-)
【登場人物】
凜叶(りんと):天使を拾った男
エル:人界に堕とされた天使
(以下をコピーしてお使い下さい)
『UMQEEL-復讐の英雄-』作者:なる
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凜叶&N(男):
エル(女):
001エル:私はあの日、神に殺された。
002凜叶:僕はあの日、天使を拾った。
003エル:私はあの日、神に復讐することを決めた。
004凜叶:はい、今日も終わり。
005エル:これいつまで続けるの?
006凜叶:さぁね。エルがまた飛べるようになるまでかな。
007エル:そんな日は来ないわよ。
008凜叶:そうだね。
009エル:私の血、そんなに美味しい?
010凜叶:とても。
011エル:人間にとって天使の血は麻薬に匹敵するほどの依存性がある、というのは本当だったのね。
012凜叶:かもね。
013エル:そうと分かっていても飲むの?
014凜叶:エルがいいと言うなら。
015エル:そう、変な人。
016凜叶:お褒め頂き光栄だ。さっ、僕もご飯にしようかな。
017エル:今日はトモダチが訪ねて来るんじゃなかったの?
018凜叶:あぁ、もうそんな時間だっけ。
019エル:そうね。あと20分。
020凜叶:やばっ、もうすぐじゃん。
021エル:……20分は『すぐ』なのね。人間の言葉は難しいわ。
022凜叶:うーん、慣れじゃないかな。
023エル:『すぐ』って何?
024凜叶:今から支度して、終わる頃にはあいつが来る時間になるってこと。
025エル:そう、時間無いわね。
026凜叶:君の血が美味しすぎるせいだよ。
027エル:吸血鬼みたい。
028凜叶:吸血鬼って本当にいるの?
029エル:さぁ?
030凜叶:その反応は、存在するってことだね。
031エル:正確には、この世界にはいない。他の世界に行けばいるかもね。
032凜叶:そんなこと僕に教えていいの?前にエルが言ってた、世界のルールってやつに十分反すると思うけど。
033エル:いいんじゃない?あいつが決めたルールなんて知らないわ。
034凜叶:あいつって神様?
035エル:そう。最高神ゼウス。……私の仇。
036凜叶:エルをこんなふうにした相手?
037エル:……ふふ。時間、ないんじゃないの?
038凜叶:いや、別に来るのあいつだし。そんな事より……!
039エル:ダメよ。これ以上は今は教えない。
040凜叶:……その時じゃない?
041エル:そう、その時じゃない。貴方にはまだ早いわ。
042凜叶:……分かった。
043エル:そんなに落ち込まないの。友達、来るんでしょう。
044凜叶:うん。……エルはどうするの?
045エル:私は少し寝るわ。友達が帰ったら起こして。
046凜叶M:エルはそう言って眠りにつく。
047凜叶:天使は眠る時に姿が見えなくなるって前に教えなかったかなぁ。
048エル:おはよう寝坊助。
049凜叶:おはようエル。
050エル:目が開いてないわよ、髪もボサボサ。
051凜叶:まぁ……朝だからね……え。
052エル:どうかしたの?
053凜叶:いや、その手!血だらけじゃないか!どうしたんだよ。
054エル:背中が痒くて……触っていただけなんだけど。
055凜叶:何やってんだよ!ちゃんと手当しないと……綺麗な肌なのに……。
056エル:え、ちょっと。
057凜叶:ほら、あっち向いて。傷口見るから。
058エル:え、えぇ。
059凜叶:全く……なんで起こさなかったんだよ。
060エル:寝ている人を起こす程のことじゃないもの。
061凜叶:こんな血だらけになってまだそんな事言うの?
062エル:……なんでそんなに怒っているの?
063凜叶:怒ってないよ。
064エル:怒ってるじゃない。
065凜叶:怒ってない。
066エル:怒ってる。
067凜叶:だから怒ってないって!!!!!!
068エル:ほら、怒ってる。どうして怒ってるの?
069凜叶:……エルが自分のこと大事にしないから。
070エル:大事にしない……?どういうこと?
071凜叶:こうやって傷が悪化してるのに言わないじゃないか。
072エル:どうして言うの?
073凜叶:どうしてって……その、痛かったりとか
074エル:私達そう言う感覚ないもの。暑い寒いも、痛いとかも感じたことないわ。
075凜叶:そう、なのか。……人間とは違うんだな。
076エル:当たり前じゃない、人間じゃないもの。
077凜叶:そうだったね。……こう見てるとエルは人間なんじゃないかって勘違いしちゃうよ。
078エル:……そう。今は人間みたいなものよ。羽もないし。
079凜叶:でもこんな魅力的な人は人間にはいないよ。
080エル:でも私は出来損ないよ?飛べないし奇跡も使えないし。何も出来ないもの。
081凜叶:出来損ないなんかじゃない。……そんな事言わないでくれ。
082エル:それは、その……ごめんなさい。
083凜叶:別に謝って欲しいとかじゃないんだ。ただ、自分を大切にしてくれたら嬉しいなって。
084エル:たいせつ、ってなに?
085凜叶:大切……エルは花って知ってる?
086エル:もちろん。姉さんが花の天使だもの。
087凜叶:花の天使なんているんだ、他には?
088エル:他?そうね、植物の天使もいるし、あとは雨の天使とか風の天使もいるわね。
089凜叶:エルは?何の天使なの?
090エル:……私の事はいいから、話を続けて。『たいせつ』が何か教えてくれるんでしょ。
091凜叶:そうだったね。例えば、エルの足元に花が咲いていたとする。エルはどうする?
092エル:踏まないようにするわね。
093凜叶:それはどうして?
094エル:花は丁寧に扱うものでしょう。壊れてしまうもの。
095凜叶:エルは花を大切に思っているから丁寧に扱うんだよ。それが大切、ってこと。
096エル:……なるほど。でもどうやって私自身を大切にするの?
097凜叶:一番簡単なのは僕を頼る事だよ。
098エル:貴方を頼る事が私を大切にしていることになるの?
099凜叶:そうだよ。
100エル:……そう。じゃあ次から頼る事にするわ。
101凜叶:ありがとう。……それにしても酷い傷だな……。
102エル:そう?
103凜叶:これで本当に痛くないの?
104エル:ええ。
105凜叶:ガーゼ当てるのでとりあえずいいかな。……これどう?包帯きつくない?
106エル:ええ、特には。
107凜叶:よかった。あとは服か……。
108エル:布なんて纏わなくてもいいのに。
109凜叶:いや、僕が困るから、着てもらわないと。
110エル:それならダメね。
111凜叶:エルに似合う動きやすい服探しておくね。
112凜叶:今日もご馳走様。
113エル:お粗末さまでした、だっけ。
114凜叶:合ってるよ。
115エル:貴方そんなに私の血を飲んで大丈夫なの?
116凜叶:どうして?
117エル:顔色が悪いもの。
118凜叶:そんな事ないよ。僕は大丈夫。
119エル:……そう。じゃあ私は少し寝るわね。
120凜叶:もう寝るの?
121エル:少し疲れたの。
122凜叶:そっか。おやすみ。
123エル:おやすみなさい。
(少し間)
124凜叶M:少しだけ触れたいと、そう思ったのはただの出来心で、僕はエルが寝ているであろう空間に手を伸ばした。……すると、見えないはずの彼女が前にいて酷く魘されている様子だった。心配と好奇心の手で触れると、たちまち知るはずもない映像が頭に流れ込む。
125エル(夢の中):私は何もやってない!!!その日私はイリス様のお世話をして……そんな、イリス様に会わせて下さい!離して!私は何もしてない!!!
125凜叶M:影になっていて分からなかったが恐らくあれがエルの仇であることは間違いないだろう。そしてその横にいた天使は大きな鎌を持っていた。……あんなものでエルを傷つけたなんて、許せない。(※被せ)
126エル:(※被せ)……ん……りんと?
127凜叶M:許せるはずがない。僕の大事なエルを傷つけたやつなんて、死ねばいい。絶対に許さない、僕が(※被せ)
128エル:(※被せ)ダメ、戻ってきて!!堕ちちゃダメ!
129凜叶:エル?
130エル:ダメ、イヤよ、堕ちないで。
131凜叶:どうしたの?
132エル:ダメなの。人間は堕ちたらおしまいなの。
133凜叶:ちょっと、落ち着いてよ、エル。
134エル:ここじゃ私は何も出来ないから、お願い。
135凜叶:分かったよ、分かったから。
136エル:天使が原因で堕転なんてそんな馬鹿な話ないでしょう。
137凜叶:そうだね。……もう少し寝たらどう?あまり寝れてないでしょ。
138エル:そうするわ。……邪魔しないでよね。
139凜叶:今度は邪魔しない、絶対。
140エル:約束だからね。
141凜叶:エル、今日も欲しい。
142エル:ダメ。
143凜叶:どうして?
144エル:最近貴方の様子がおかしいから、ダメ。
145凜叶:は?おかしくないだろ。
146エル:前の貴方はそんな言い方しなかった。
147凜叶:うるさいなぁ……
148エル:ほら、そういうところ。
149凜叶:うるさいって言ってるじゃん。……もういいよ。
<凜叶がエルの手を縛る>
150エル:ちょっと!離して!手を縛るなんて何を考えているの?
151凜叶:エルが血をくれないのが悪いんだろ。
152エル:それは貴方のためを思って!
153凜叶:そんなこと頼んだ覚えはない。
154エル:私の血が貴方に悪い影響を与えているのは間違いないじゃない!天使が原因で堕転などありえないって、そう言ったでしょ?
155凜叶:知らないよ。僕は力を手に入れなきゃいけないんだ。
156エル:そんなもの手に入れてどうするの。
157凜叶:エルの仇を倒すんだよ。
158エル:なんでそんな……あの時、何を見たの?
159凜叶:何の話?
160エル:寝ている私に触れた時。貴方、私の血を飲んでいるから天使と同化してきているのよ。
161凜叶:ふぅん。……そう。
162エル:それで、何を見たの?
163凜叶:影で見えなかったけど、エルの羽を奪えと命じた男とその横に大きな鎌を持った天使が笑ってた。
164エル:そう……私の夢を盗み見たのね。
165凜叶:あれは本当にあった事なの?
166エル:ええ。私はその横にいた天使に羽を取られたの。
167凜叶:そっか。……やっぱり殺さなきゃね。
168エル:人間が叶うわけないじゃない。
169凜叶:どうすればいい?
170エル:さぁ。……少なくとも貴方が人間なうちは無理ね。
171凜叶:……人間じゃなくなれば勝てるかな。
172エル:知らないわ。そんな事をした人間は今までに一人もいなかったもの。
173凜叶:……そうだよね。
174エル:じゃあ私は少し休むわ。
175凜叶:また寝るの?
176エル:最近眠たいの。
177凜叶:寝てる間にちょっとだけ貰ってもいい?
178エル:(ため息)好きにして。
179凜叶:……おやすみ。
180凜叶:エル?……エル?……どこいったんだ……?
181エル:(気だるげ)なに……?
182凜叶:エル、なんか透けてないか……?
183エル:そう?……もう時間がないから。
184凜叶:時間?
185エル:そう。……私達天使が人間の住むこの星で長く生きられると思う?
186凜叶:それ、は、
187エル:地に堕ちた私たちは所詮異物なのよ、私たちは。それを神は分かってて堕としたの。消えたら終わり。それだけ。
188凜叶:エルが人間として過ごせる方法はないの?
189エル:言ったでしょう?私は何も出来ないって。ここでは奇跡も使えないもの。
190凜叶:どうしたら一緒にいられる?
191エル:さぁね。……あいつに勝てたらなにか変わるかもしれないわね。
192凜叶:どうしたらあいつに会える?
193エル:天界への戻り方は私は知らないわ。……そうね……魂になったらどうにか出来るかもしれないけれど。
194凜叶:そっか。……僕はゼウスに勝てる?
195エル:人間から堕転した者は弱いから難しいでしょうね。
196凜叶:でもやるしかないよね。
197エル:そこまでしなくていいのに。貴方は人間。こちらの世界に踏み込む必要は無いの。
198凜叶:天使様に惚れてしまったんだから仕方がないよね。
199エル:天使に恋するなんて、物好きね。
200凜叶:……僕、エルの仇を討つからね。
201凜叶:エル、僕になにかご褒美を頂戴?
202エル:何が欲しいの?
203凜叶:何でもいい。エルがくれるものならなんでも。
204エル:じゃあ……アンキール。神が壊した天使を救う、英雄の名前。
205凜叶:いいね。……かっこいい。
206エル:でしょう?私の名前をあげるんだから、直ぐに死んだりしたら許さないから。
207凜叶:エルの名前?
208エル:そう。本当の名前はケムエル、っていうの。
209凜叶:……そうなんだ。
210エル:ええ。どう?喜んでもらえた?
211凜叶:うん。ありがとう。……でも先に貰っちゃった。僕、ご褒美って言ったと思うんだけど。
212エル:ふふ、大丈夫。全部終わったその後に、またなにかあげるわ。
213凜叶:本当?それは楽しみだなぁ。
214エル:終わってからのお楽しみね。
215凜叶:長く待たせたらごめんね。
216エル:そうね。貴方と過ごした時間に比べたらどんな時間も長く感じるでしょうね。
217凜叶:ダメだよ、僕の事忘れたら。
218エル:忘れる前に迎えに来て。
219凜叶:向こうで待ってて。
220エル:大丈夫よ。堕天使の血を吸った、堕転した人間なんて貴方しかいないもの。直ぐに見つけてあげる。
221凜叶:……来世は悪魔かぁ。
222エル:一緒に堕ちましょ。まぁ私はもう堕ちてるけど。
223凜叶:どこまでも着いていくよ。
224エル:次会うのは向こう側ね。
225凜叶:うん。……見守ってくれる?
226エル:分かったわ。大丈夫、怖くないわ。一瞬だから。
227凜叶:ふぅ……またね、エル。
228エル:さよなら、りんと。また会う日まで。
229N:次のニュースです。本日未明、都内のアパートの一室で、血を流して倒れている男性の遺体な発見されました。警視庁によると遺体の首には深い切り傷があり、近くには凶器と思われる刃物が落ちていたとの事です。不自然な点があることから他殺・自殺、両方の線で捜査を進めています。続いて次のニュースです。
(終)
_____ Angel Qemuel is killed by GOD.