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更夜飯店

25時

2018.09.19 08:05

25時

2004/02/03

恵比寿ガーデンシネマ

 

男の友情もの、というのはたくさんあります。最近では友情と私情の狭間に苦しむ『ミスティック・

リバー』とかですね。

この映画、ただの3人の友情物語ではありません。

主人公のモンティがドラッグ・ディーラーとして捕まって25時間後には刑務所行き。

友人のフランク、ジェイコブはせめて慰めるつもりで送別会を開くわけですが・・・

この3人、幼馴染とはいえ、ドラッグ・ディーラー、証券ブローカー、高校の英語教師と全く違う

世界の人間で、価値観が全く違う3人で、子供のように「べったり仲良し3人組」になるはずがない。

それぞれが、お互いを密かに、軽蔑し、羨み、信用していない。

何もなければそれでも、時々会って飲みに行き、話し、遊ぶ仲かもしれませんが、まもなく

刑務所に行くという事態になったとき、このもろい仲の良さが、ぐらぐらと不安定にゆらめいて

しまうのをスパイク・リー監督が熱くもなく、冷たくもなく客観的な批判精神の演出で描いているし、

エドワート・ノートン、バリー・ペッパー、フィリップ・シーモア・ホフマン・・・監督の希望に全身で

応えているような演技合戦。

といってもあくまで3人は等身大の人間で強くもあり、弱くもあります。

それが一番顕著に出ていたのはトイレの鏡に映るモンティの姿が、ニューヨークに住むすべての

人種などへの罵倒し続ける所です。

しかし、罵倒の末にあるのは、恐ろしいほどの自己嫌悪です。

この映画は自己嫌悪の映画ともいえるでしょう。もう取り返しのつかないことになってしまったことへ

の後悔と自責の連続。

ラスト近くは意外な展開かと思わせておいて、ラストの1ショットで見事にひっくりかえす、絶望と

希望。

勝手な憶測ですが、監督の役者への要求のハードルはものすごく高かったのではないかと

思います。

それに応える役者、スタッフ・・・の出来の良さ。

絶望を描きながらも、人間の弱さを、そして今のアメリカの弱さを描き出す、その手腕に

感心しました。