ショートショート61~70
61.いつからだろう、私が鏡を見る度に「みているぞ」と鏡文字で書かれるようになったのは。
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62.鏡の私が絶叫し、包丁をもった女に襲われて以来、私は鏡に映らなくなった。
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63.「コンコン」
時折聞こえるノックの音が
あの三面鏡から聞こえることに
気がついた
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64.午後2時丁度に、鏡をノックする。すると何かが起こる。
そんな噂はご存じだろうか。
何故「何か」なのかは、それを行った人がその記憶を無くしてしまうからであり、そしてこのそれを行った人は共通して鏡、自分の顔を異様に恐れるようになるというのだ。彼らは一体何を見たのだろうか。
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65.お風呂から上がり、髪を梳かしていると、鏡の自分が櫛で髪を梳かすたびに髪が伸びていくのが見えた。
驚いて自分の肩をみると、明らかに自分のではない茶髪の髪の毛が垂れていた。
後頭部に誰かの息が当たっている。
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66.俺の家には座敷童がいる。
一人暮らしなのに子供の笑い声や足音がするのだ。
ただ悪戯が好きなようで、塩と砂糖を逆にされたり靴に金魚が入っていたり、この前は枕元に包丁が置いてあった。
水とお菓子をお供えしたのだが、お菓子は粉々、水は紫色になっていた。
気に入ってくれたのだろうか。
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67.彼女はその日、悪戯として真っ赤な
キスマークを付けた千円札を恋人に貸したという。
すると3日後、お釣りとしてその千円札が彼女の元に戻ってきた。
それからというもの、その千円札は何度手放しても彼女の元に戻ってくる。
「惚れられちゃったのかも」
その千円札を見つめながら彼女は笑った
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68.「朝机の上に置いてあった」
そう言って彼が見せてきたメモには、
急いで書いたであろう乱れた文字で
『もうそろそろ代わってください』
と書かれていた。
「何のことだかわかんないよなあ」
そう言いながらそれをビリビリに破る彼は不気味な程の笑顔だった。
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69.私の薔薇農園で死体を埋めました。
その年の10月。
そこに真っ赤な薔薇が咲きますと、
花の中からガラスのような目玉、飴のような指、綿菓子のような髪などが
出てきたのです。
あぁ、その情景の美しさたるや!
絵にも書けない言葉にもならない!
…これが私が殺人鬼になった理由です。
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70.私の家の玄関扉には、縦長の曇りガラスが2枚はめ込んであるのだが、
その内右側のガラスの下側だけ
何故かいつも汚れている。
そして今、私は玄関扉と対峙しているのだが、
そのガラスの下側に、男の人が顔をこれでもかと押し付けているのを
逃げられずに見ている。