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童話作家|浜尾まさひろ

第25回 幼年童話を書いてみる 2

2023.11.01 02:25


幼年童話を書いてみる 2


(改作)

ひろい海のまんなかに、きいろいうきぶくろが浮かんでいました。どこから流れてきたのかレモン色したうきぶくろは、ふわふわふわふわ あてもなく海のうえをさまよっていました。

「のんきなもんだねえ……」

カモメがよってきて、うきぶくろにのっかりました。

「どこからきたんだい?」

「あっちから……」

「ずっと、ひとりかい?」

「ずっと、ひとりさ」

「たいくつだろ?」

「たいくつだね……でも、クジラの背中にのって、しおをふかれたときは、おもしろかったよ。大きな観光船のスクリューにまきこまれそうになったときはドキドキしたよ」

うきぶくろは、ひさしぶりのおしゃべりがたのしそうでした。

「ふーん」

カモメはつぶやくと、どこかにとんでいってしまいました。

それからしばらくしたある日のことです。麦わら帽子をかぶった小さな女の子が、さんばしの上から海をながめていました。

青いワンピースを着た3つくらいの女の子です。

「あれ?」、女の子が目をみはりました。

レモンみたいなものが浮かんでいるのはなにかなあ?

とつぜん強い風がふきました。

それが、まんまるい、きいろいうきぶくろとわかると、ヒュー、ヒュルヒュル……と、すごい風が麦わら帽子をとばしてしまいました。お気にいりのリボンのついた麦わら帽子です。

「あ――、まって――、」

女の子は両手をひろげ、麦わら帽子をおいかけるとドボン! と、海におっこちました。水しぶきがあがって、女の子はくるしそうに あっぷあっぷ あっぷあっぷ……。

※この後、うきぶくろはカモメから女の子が溺れていることを知らされ、ハッとします。味わったこともないピンチに出くわします。同時にそれは、人形が命を吹き込まれたときのような輝きに満ちた瞬間です。

女の子は一人であるはずもありません。たとえ5枚であっても誰と海へ来たのかを決めなければなりません。幼年童話に限らず台詞は最小限に短くすることを心がけて下さい。うきぶくろの「たいくつだね」に続く台詞は長いので「たいくつだね……でも」と一度切ります。「うきぶくろはうれしそうに、」を入れてから「クジラの背中にのって」と続けばスッキリと整理されます。

浜尾


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