NovelTherapy『ジェシーのぼうけん』
『ジェシーのぼうけん』
ほしぞら 著
ジェシーは、サンタモニカ州に住む7歳のおんなのこ。
おとうさん、おかあさんと、15歳のおにいちゃんと、犬のケインといっしょに、大きな一軒家に住んでいる。
ジェシーの住むまちは「通称:ストロベリータウン」といって、春にたくさんいちごがなる、めぐまれ た土地だ。
世界のいろんな国出身の子どもたちが住んでいて、ジェシーは誰とでも仲が良く、学校がおわる と誰かと「ねこじゃらし原っぱ」で遊んでいる。
走り回って遊びたいときも、ひとりになりたいときも、いつでも「ねこじゃらし原っぱ」は、ジェシーの 居場所だ。
本を読むのが好きで、いつもバックパックには、お気に入りの読みかけの本が3冊。 今は、「エルマーの冒険」と「魔法つかいの少年」と「世界のひみつ」を読んでいる。
月に1回、家族でキャンプにも出かける。年の離れたおにいちゃんが、そのときばかりはたくさん 遊んでくれるから、この家族行事は結構気に入っている。
ジェシーは、あまり人には話さないけれど、ときどき空想もする。
ある日、「エルマーの冒険」を読んでいたら、その本の中に「魔法の鍵」という言葉があった。 “大切なものを開く、魔法の鍵。”
その言葉が、どうしても頭から離れなくて、ジェシーは「魔法の鍵」を探そうと決めた。
でも、どこから探そう。どうやって・・・?
まずは、今住んでいる町を探してみようと思った。
家の中や学校の教室、いつも遊んでいるねこじゃらし原っぱ。
いつもいる場所を探してみたけれど、魔法の鍵は全然見つからない。
そこで、
家族に聞いてみることにした。
「おとうさん、おかあさん。わたし、エルマーの冒険に出てきた「魔法の鍵」を見つけたいの。どこ にあるか、わかる?」
おとうさんとおかあさんは、顔を見合わせジェシーにこう言った。
「いい?エルマーの冒険は、物語なのよ。実際には、魔法の鍵は、ないわ。」
諦めきれず、学校で友だちにも言ってみた。
「私、エルマーの冒険で書かれている「魔法の鍵」って、本当にあると思うの。大切なものを開く、 魔法の鍵。どう思う?」
友だちは、諭すような顔でこう言った。
「あのさ、大切なものってなんなんだよ?それを開く鍵だなんて。全然わからないよ」
ジェシーは、自分が“ある”と信じたものを誰も信じてくれなくて、悲しくなった。 でも、悲しんでいても仕方がない。誰も信じてくれないなら、自分の足で見つけるしかないんだ。
友だちに「一緒に、旅をしない?」「大切なものを見つける旅。魔法の鍵がなんなのか、一緒に探 そうよ」と話してまわり、思いを一緒にしてくれる仲間を2人、見つけた。
ビリーと、カイだ。
3人は、「魔法の鍵」を探す旅に出た。ストロベリータウンを出て、3人で話をしながら、旅をした。
「一体、魔法の鍵ってなんなんだろう」
「大切なものって、なんなんだろう?」
「私って、なんで魔法の鍵を手に入れたいんだろう」
毎日話をしながら、今考えていることをぶつけてみるうちに、ジェシーはだんだんわかってきた。
自分の生まれ育った町を出ると、たくさんの刺激と挑戦に満ち溢れていること。 そして、ストロベリータウンで暮らしてきた日々、それこそが宝物だということ。
大切なものの扉は、旅に出たことで開かれた。そう感じた。
つまり、仲間たちと一緒に「自分の大切なものを探す旅」こそが、ジェシーにとっての魔法の鍵 だったのだ。
ビリーとカイは、「魔法の鍵」について、異なる答えを持っていた。
ビリーは、「魔法の鍵は、仲間と一緒に語ること」であったし、カイにとっては「魔法の鍵は、自分 の殻を破ること」だった。
旅を終え、ストロベリータウンに帰ってきたジェシーは、これまで以上に「毎日」を注意深く見つ め、まわりにいる友だちや家族のことを大事に思えるようになった。
そして、外の世界にも出ていきたいとも思うようになった。
旅をすることで、知らない世界を知れば、自分の「今いる場所」がくっきり見えるようになることが わかった。
ジェシーは、「魔法の鍵」を見つけ、まわりの人や世界を大事にしながら暮らすことの大切さを 知った。
時間がたつと、ジェシーにとっての「魔法の鍵」は変わるかも知れない。でもそれは、そのときま た、探せばいい。
おしまい!