家具類の地震対策と、転倒データから学べる災害意識!
新しい家具を購入予定だけれど、地震対策まで考えているという人は、意外に少ないのではないでしょうか。地震災害といえば、家屋の倒壊をイメージしがちですが、実は家具類に巻き込まれるケースも多く発生しています。そこで今回は、過去の大地震の「家具類に関係するデータ」に触れたうえで、地震対策に有効な「家具の固定や配置方法」について紹介します。
家具類に関する大地震の負傷者データ
万が一に備えた災害意識は大切です。過去の被害データを学ぶことで、より具体的な対策が立てやすくなります。
阪神・淡路大震災では全体の6割を占める
1995年に震度7を記録した阪神・淡路大震災は、死者と負傷者を合わせて「約5万人以上」の人的被害が出た大規模災害です。住宅の全壊・半壊も「約25万棟」と著しいなか、かろうじて住宅倒壊は回避できたというケースも多いといわれています。ただ、総務省消防庁によると、その6割の住宅で「家具類が転倒した」というデータもあり、大地震の余波は驚異です。なお、家具類の転倒による被害状況は、本棚が52%とトップで以下、食器棚(34%)、タンス(30%)の順に続きます。
負傷者の3割以上が家具類に巻き込まれている
東京消防庁の資料によると、2000年以降では震度6以上の大地震が7回以上発生したなか、約30~50%の人が家具類の転倒・落下・移動による被害を受けた、というデータが出ています。いずれの大地震も、家具類による被害規模が高い傾向にあります。2004年に発生した新潟県中越地震では、約4,800人の負傷者と、約3,100棟の住宅全壊を記録しています。このうち、住宅倒壊は免れたものの、負傷者の41.2%が家具類に巻き込まれています。なお、家具類による最小被害は、2007年に発生した能登半島地震の29.4%です。また、2008年に発生した岩手・宮城内陸地震では、住宅の全壊数が30棟と少ないものの、44.6%の人が家具類に巻き込まれて負傷しています。
想定負傷者数は約55,000人
近年では、大地震による被害想定も報告されています。東京都防災会議が調査した「首都直下地震による被害想定」によると、東京都に住む34.2%の人が、家具類の転倒や落下などで負傷すると予測されています。これは、建物全体の倒壊(46.2%)に次ぐ高い割合で、負傷者数も54,500人といわれているため、阪神・淡路大震災の被害規模より深刻といえるでしょう。
代表的な家具の固定方法
前述した「家具類の転倒による被害データ」をふまえたうえで、食器棚・本棚・タンスの揺れを防ぐ具体的な固定方法をみていきましょう。
食器棚
食器棚は、L字型の金具を用いて固定します。
固定する箇所は食器棚の天板と、食器棚が接する壁の2点です。
また、棚だけでなく、棚の中も意識する必要があります。食器用の滑り止めシートを使うと食器類が動きにくくなります。また、ガラスに飛散防止フィルムを施せばガラス割れ対策として有効です。
本棚
本棚を固定する場合は、食器棚と同様にL字型の金具を用いる方法のほか、ワイヤーを用いる方法があります。
ワイヤーは本棚の上部と、本棚が接する壁を結ぶように取り付けます。その際、本棚の両端手前と、壁内部の下地が通る箇所にアンカー(金具)を埋め込み、ワイヤーと本棚の2点の開きを30度以内にするのがポイントです。
また、本の飛び出しにも注意が必要です。そのためには、段ごとにベルトやヒモを張り、両端を金具で固定します。
タンス
タンスの転倒を防ぐには、主にポール式器具と連結金具を使います。
ポール式器具とは、タンスの天板と天井の間に、突っ張り棒のような器具を2つ挟み、タンスを固定する防災グッズのひとつです。また、天板と天井の距離が近いほど固定力も強化します。ただ、天井裏に下地のない場所に挟むと、天井が浮いて固定されないため、注意が必要です。
連結金具は、2段式タンスの上段と下段をとめる役割を持ちます。2段式タンスを置いている場合は、連結金具とポール式器具をセットで使わないと効果が得られません。
家具の配置の理想は「安全空間」をつくること
家具類の固定だけでは、万全の地震対策とはいえません。家具類が転倒する性質を知り、日ごろから安全空間を意識することが、重要です。
家具が倒れる向きを計算して配置する
出入口付近に家具類があると、転倒した際に出入口を塞いでしまう可能性が高くなります。出入口付近にしか家具類が置けない場合は、倒れる向きを計算して配置することが大切です。家具類は横倒れではなく、正面から倒れる傾向にあるので、高さと距離間を測っておく必要もあります。また、窓付近に家具類を置く場合も、出入口付近と同様に注意しなければなりません。
家具部屋を設ける
家具類の転倒リスクを避けるなら、家具部屋を設けるのもひとつの手です。生活の場というよりは、収納スペースに近い用途をイメージしておくとよいでしょう。家具類と接する時間を減らすことで、転倒により生じるリスクも低くなります。
家具を置かない=安全空間=地震対策
家具部屋を設けられない、もしくは家具類の移動が困難という場合は、リスクヘッジという考え方もあります。例えば、睡眠時に家具類の下敷きになる、子どもが逃げられないような家具類を子ども部屋に置くなどのウィークポイントを活用する発想です。ウィークポイントを逆手にとり、寝室や子ども部屋に家具類を置かないようにすれば、安全性も高くなります。つまり、安全空間を意識することが、地震対策の基本といえるでしょう。
家具類の災害リスクを再認識することが大切!
家具類に関する災害意識の低さは、世間の声にも反映されています。2013年に実施された「防災に関する世論調査」で、「家具や冷蔵庫などを固定し転倒を防止している」と答えた人は、全体の40.7%でした。言い換えれば、国民の半数以上は家具類の地震対策ができていない、もしくはできる環境にないといえるでしょう。あくまで世論調査なので一概にはいえませんが、これを機に家具類の地震対策を見直してみるのもひとつの手です。
参考:
・地震などの災害に備えて|総務省消防庁
・家具類の転倒・落下・移動防止対策ハンドブック(PDF)|東京消防庁
・お部屋の「安全空間」は作っていますか?(PDF)|内閣府防災担当
・「防災に関する世論調査」の概要(PDF)|内閣府政府広報室