シドニー オペラハウス① ~伝説の難工事~
世界三大美港の一つ、シドニーのポート・ジャクソン湾に突き出たベネロング岬に、総合芸術劇場のオペラハウスが立っています。
屋根・外壁は連続した曲面で構成されていて、白色と淡い桃色の釉薬をかけたスウェーデン製のタイルが張られていて、その船舶の帆のような、あるいは貝殻を合わせたような独特な外観は、シドニーのみならず、オーストラリアを代表するランドマークとなっています。
2007年には、世界遺産に登録され、学術審査にあたったTICCIH(国際産業遺産保存委員会)は、「コンクリートの新しい使い方を提言し、独創的な構造を支えるため新たな補強材のリブを考案したことは将来的な建築の可能性を広め、その意匠は創造性と革新性を兼ね備えている」と評価しています。
シドニー オペラハウスの建設工事は、当初4年の工期を見込んでいましたが、完成までに14年もの年月が費やされました。それに伴い、予算においても、計画時見積もりの700万ドルから、14倍の1億ドル以上に膨れ上がりました。現代において、14年という工期は、建築というよりも、土木のダム工事等のスケールにふさわしい年月です。工期と予算の大幅な超過をうけて、工事半ばで設計者の建築家は解任されることになります。
その屋根・外壁の曲面が、いかに実現困難なものであったか。設計者であるデンマーク人建築家ヨーン・ウッツと、構造設計者オヴ・アラップは、どのように、その困難に立ち向かったか。ヨーン・ウッツ解任後もプロジェクトに残留したオヴ・アラップの取り組みと、構造設計者の役割について。等々。次回からは、20世紀の建築史上、最大の難工事のひとつとされている、シドニー オペラハウス完成までの紆余曲折のストーリーをご紹介していきたいと思います。