患者さん、リハ専門職向け:Evidenceから見た急性腰痛(ぎっくり腰)になったらすべきこと、すべきでないこと。~理学療法士が勧めるぎっくり腰対策~⑥
おはようございます。University College London (UCL)の理学療法士の倉形です。理学療法士はリハ専門職のひとつです。
ぎっくり腰になったらどのようにすべきかに関して書いています。前回までで概要と、注意点、ぎっくり腰の原因、具体的に何をするかに関して書きました。
今回は、なぜ私が今まで書いてきたような方法が良いのか?に関して書きます。
→データが支持しているからです。 (毎度のことながら単純な理由です。。。)
医学の進歩にも関わらず、腰痛患者は減っていません。徐々に増加しています。
そして、ガイドラインにあるような治療を行うと、従来の治療と比較して、成績自体もコスト的にも優れた成績をあげることが分かっています。 ここで言う『従来の治療』とは、姿勢に関するアドバイスであったり、マッサージの様な『受け身の治療』です。
そして、私がこの様な治療を支持する大きな理由は、 正しい知識を身に着けて、キチンと介入を行えば、特別なテクニックを必要としないという点です。 多くのリハ専門職が他の難しいテクニックと比べて、安価に早く身に着けることができるということは、患者さんにとって非常に有益です。
ぎっくり腰には、『正しい情報』と『怖がらずに動くこと』が大切です。
理論上は、現存するいかなるマッサージ、施術を行うよりも私がここまで書いてきた方法の方が有効です。 保険が使えるため、患者さんが負担するコストも、最も安い部類に入ります。手間もそんなにかかりません。 ですので、まずはこの様な方法を試すことをお奨めします。
私がここまで書いてきたような話は、10年以上前に発行されたガイドラインにも書いてあります。 ただ、必ずしも日本の現状では多数派を占める考えではありません(日本以外のことは寡聞にして知りません)。
なぜかはわかりません。 もしかしたら単純に知らないのかもしれません(私は、養成課程で習いませんでした)。 もしくは、病院以外の『医療サービス提供施設』は、患者さんが長い期間通い続けてくれる方が経営的に嬉しいので、たくさんの回数を要さない『ガイドラインに沿った治療』は使いたくないのかも知れません(そうではないと祈っていますが)。。。
最後に少し、腰痛が関わる経済の話と、リハ専門職のサラリーの話。
腰痛は、医療費自体のみならず、腰痛による欠勤による損失も合わせて、社会の経済的損失が非常に大きい疾患です。そして、患者さんの生活の質にも大きく影響します。
私達リハ専門職は、残念ながら現状、めちゃくちゃいいサラリーの職業というわけではありません。そして、どんなに『給料を上げて欲しい』と叫んでみたところで、無い袖は振れません。
過去のオーストラリアの研究で、ガイドラインに沿った治療の導入、患者さんにも啓蒙活動を行うことで、州全体の腰痛関連の医療費を大幅に減少させたという報告があります。
The Back book』という20ページ程度の小冊子を各国語に翻訳して無料配布しました。その冊子の中には、私がこのシリーズで書いてきたような内容が書いてあります。ちなみに、探しましたが、ネット上には日本語訳はありませんでした。
もしも同様なことが日本でも行い、
厚生労働省に『リハビリ専門職おかげで、○○億円の医療費削減ができました。このうち何%を使って腰痛治療の単価を上げてください。』といい、
病院に対して『腰痛治療の単価が上がることでリハ部門の収益が改善したら、それを使ってリハ専門職の待遇改善に充ててください。』と主張した方が説得力があるし、実現する可能性があるのではないかと思います。
ぜひ、Evidenceに基づいた成績の良い治療が行われることで、社会は医療費削減ができ、患者さんは痛みが取れて生活の質が高まり、リハ専門職のサラリーが上がるというみんながhappyになる良い循環が生まれるといいなと思います。
この様な治療法に誰でもアクセスできるようになることが、
『日本を含む全アジア地域で、全てのリハビリテーション対象者が、適切な価格でエビデンスに基づいたリハビリテーションにアクセスできる社会を実現する』
という私のキャリアゴールに繋がります。
ようやく、このシリーズも最終回です(*_*;
図などを含めると1万文字超の分量になってしまいました。。。
最初から最後まで読んで頂いた方がいるかはわかりませんが、ぎっくり腰に関して困っていたり、『再発が怖いな~』と思っている方に少しでも役に立ちますように。
今日も、最後までお付き合い頂きありがとうございます。
理学療法士 倉形裕史