幾何学からみた構造体~力と形のふしぎな関係~
こんにちは、ケンです。
意匠設計から建築の道に入るも、建築のことが好きすぎて、余計な仕上げを剥がし、解剖学的に骨組みの理屈、躯体の美を究明したいという思いが高じて、構造設計技術者になりました。建築にまつわる雑学・雑感を徒然に書いていきたいと思います。
現在最も一般的な建築物の構法は、柱と梁をつなぎ合わせて造る「ラーメン構造」と呼ばれる構法です。高層のオフィスビルやマンションなどはほとんどこの構法が採用されています。しかし、世の中には一風変わった構法があります。今回はそれらの中から2つご紹介しましょう。
まず一つ目は「吊構造」です。吊構造は文字通り上から屋根や床を吊って支える構法です。大きな吊り橋をイメージしていただくと、わかりやすいかも知れません。しかし、建築では、なかなか採用されることがありません。そんな吊構造を採用した建築物で、日本で最も有名なものとしては、「国立代々木競技場(意匠設計:丹下健三、構造設計:坪井善勝)」を上げることが出来ます。
国立代々木競技場は、2本の支柱をケーブルでつなぎ、コンクリートの屋根を吊るしています。つまりケーブルとそれを留めているコンクリートには、常にものすごい引張力がかかった状態で力の釣り合いが保たれています。日本でも数少ない吊構造による名建築です。
次にご紹介するのは、「テンセグリティ」という構法です。全く聞きなれない言葉ですが、Tension(引張力)とIntegrity(整合、結束)の造語です。
このテンセグリティは、5本の部材を基本ユニットとして、それらを引張力がかかった部材でつなぎ合わせるわけですが、この5本の部材は互いに接合することはありません。直感的に力の流れを追うことが難しく、一見不可思議な構造ですが、絶妙なバランスを保って成り立っているのです。