『壁は見方によってチャンスに変わる』
『不況はチャンスである。周りがどんどん
暗くなっていく中で、残ってゆくのは内面から
光を放つダイヤモンドのようなものだけ』
そう語るのは、高野登さん(人とホスピタリティ
研究所代表)。
最高級のおもてなしで有名な、あのリッツ
カールトンホテルの元日本支社長。
99℃では人に影響を与えたり世の中を
変えたりできないから、常に100℃を意識しなければ
ならない。
リッツカールトンホテルのミッションステートメントは
「できない理由をさがさない」。
高野さんは、ホテルマンの経験を米国で積みました。
激務の中、経済的な事情から終業後にアルバイトを
したり、積極的に現地の商業施設を見てまわったり、
毎日三時間睡眠を強いられた時期もあるそうです。
それでも、疲労を感じる暇などないくらい、
米国での生活は刺激と情報にあふれていた
といいます。
『苦労をした、とは思いません。
頭で稼ぐ術を持っていない時期は、体力に任せて
体で稼ぐしかありません。
物事は必ず二面性を持っています。
見る角度によって、壁は壁ではなくなりますから、
たとえ辛く厳しい状況でも、見方を変えれば
チャンスかもしれません』
勤めを終えた後、鉄板焼き屋やバーで働く
過酷な日々だった。しかし、これがその後の
大きな糧となったといいます。
『ホテルでもバーでも、とにかく人間観察の場
として楽しんでいました。すると、やがてそれぞれの
現場に適した"チップのもらい方"というのが
わかってくるんです。
毎朝欠かさずコーヒーを飲まれるお客様なら、
もう姿が見えた時点でコーヒーを入れ始め、
オーダーを受ける前にコーヒーを持って行くと、
とてもフレンドリーに接してくれるのです。
人は、その人を思ったサービスに対して
チップを惜しまないということが、この時期に
よく実感できましたね。』
机上の空論ではない、実践に裏打ちされた言葉は、
大変説得力があります。
壁は考え方しだいで、壁ではなくなる。
「悩むこと」と「考える」ことは違う、といいます。
悩みから解決策は生まれない。
その状況、局面を最大限に活かす発想
の転換こそが大事であることがよくわかります。
高野さんが、かつての上司から学んだという大変素敵な
言葉。
『相手の頭に入っていくときにはロジックで入っていく。
相手の心に入っていくときはスマイルで入っていく』
とても参考になるすばらしい哲学です。
高野さんが言われるホスピタリティとは、
『社会のために何を生み出せるのかを考え、それを
相手に伝えること』。
相手のためになるかどうかを考えて、今、
自分ができること、しなければならないことをしていく。
そうした行動は、いい循環を生み、結局は自分のもとに、
とてもいい形で返ってくるもの。
幾多の経験の中で、人と人との間で大切なことを培った
高野さんの言葉は、とても味わい深いです。