『ある親子の再生』
「あなたが生まれたとき周りの人は笑って、あなたが泣いたでしょう。だから、あなたが死ぬときは あなたが笑って、周りの人が泣くような人生を送りなさい。」
When you were born, you cried and the world rejoiced.
Live your life so that when you die, the world cries and you rejoice.
一生の思い出となる本当に素敵な旅。訪れた街々毎に出会った、魅力溢れる様々な人々。
沢山の親切を貰いました。尊敬する星野道夫さんにつながる不思議で、温かな多くの出逢いがありました。
『長い旅の途上』(星野道夫著)この本にある「ある親子の再生」という一篇。
星野道夫さんがアラスカで知り合った、クリンギット族のウイリー・ジャクソン氏の物語がとても印象的でした。
『ウイリーには、初めて会った瞬間に、強いスピリチュアルな何かを感じていた。風のように飄々として、まったく陽気な男なのに、彼の美しい視線はいつも相手の心の中を優しく
見透かしていた。その美しさはある深い闇を越えてきたまなざしでもある。ウイリーはベトナム帰還兵だった。』
ベトナム戦争※では5万8132人の米兵が命を落としています。 そして、その3倍にも及ぶ約15万人もの帰還兵が自殺をしたとききます。
※ベトナムの独立と統一をめぐる戦争。
1960年結成の南ベトナム解放民族戦線は、北ベトナムの支援のもとに南ベトナム軍およびこれを支援するアメリカ軍と戦い、69年臨時革命政府を樹立。73年和平協定が成立しアメリカ軍が撤退、75年南ベトナム政府が崩壊し翌年に南北が統一された。
15年に渡る中で、20万人以上のアメリカ人が命を落とし、おそらくその何倍ものベトナムの人たちが亡くなっている悲惨な戦争。インディアンやエスキモーなど先住民の若者たちも、
この過酷な戦場へ送り出されました。ウイリーもその一人。
彼は戦争から帰ると、ある時精神に破綻を来たし、首をつって自殺を図ります。そのとき、7歳になる彼の息子が、必死に父親の体を下から支え続けました。そこから、ウイリーの魂の再生の物語が始まりました。
『ウイリーは長い心の旅を経て、クリンギットインディアンの血を取り戻そうとしている。
そして今も心を病むベトナム帰還兵のインディアンの同胞を訪ね、その痛みに耳を傾けていた。それだけではなく、監獄にいるインディアンの若者たちを訪ねては再生への道を共に歩いている。それは戦後荒れていった彼自身が辿った道でもあった。そしてウイリーが素晴らしいのは、その行為が自然で、何の気負いもないことだった。』
2000年冬にケチカンで出逢えたウイリーとその息子。『君のお父さんは、真の英雄だと思う』、そう私が伝えると、彼は大きく頷き、『Yes, thank you』と静かに力強く答えました。
「ガイアシンフォニー第3番」(予告編)
ウイリー・ジャクソンは、クリンギット族の中で由緒ある熊の一族。