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”人と自然を調和しながら『持続可能な未来』を共創する”

『森と氷河と鯨』

2014.09.06 02:04

「目に見えるものに価値を置く社会と、見えないもの
に価値を置くことができる社会の違いをぼくは思った。

そしてたまらなく後者の思想に引かれるのだった。」



「最初のアメリカ人」とはいったい誰だったのか?

現在のアメリカ先住民より遥か前、アメリカ大陸に
住みついた古人類
がいたという説があります。

9千年以上前の人間「ケネウィック人」

彼らのルーツは私たち日本人と同じ、古代モンゴロイド
だったといいます。

アメリカ先住民の祖先だと考えられる「ケネウィック
人」


彼を巡り、先住民のとある部族リーダーが、その
人骨は自分たちの祖先であり、アメリカ先住民
の伝統的な方法で埋葬
をするべきだと主張。

人骨のルーツ
を探っていた研究者たちと、
先住民たちの論争は、裁判にまで発展します。

そして、2004年、米国巡回区控訴裁判所は、
現代のアメリカ先住民族とのつながりを証明する
には人骨が古すぎる
、として「先住民墓地の保護法」
は用いられないとの決定を下しました。

その結果、人骨を所持していたワシントン大学
バーク自然史博物館のダグラス・オウスリー博士
に、研究を進めることが許可されます。

「ケネウィック人」の身長は170センチ、体重74キロ
という筋肉質な身体
を持ち、手、腕、肩の骨など
から、彼が右利きであったことが判明。

火打石を使うことに長けていたこと、さらに投槍
器を使って槍を投げていた
ことなどの傾向が
見られたそうです。

2つの大きな怪我(6本の肋骨骨折と槍での戦い
による傷)
を負っていましたが、直接的な死因
ではなかったとみられ、死因は不明。














彼らは、北西海岸に沿った草原などを生息地
し、歩行もしくはボートに乗って、海岸沿いに
アメリカへ渡ってきた
と考えられています。

食糧は、主に魚と海洋ほ乳類であり、「鹿、プロ
ングホーン、オオツノヒツジ」
などの大型動物に
混じり、氷河の溶けた水を飲み水とし、生活
していたよう。

その食生活は、環太平洋海岸からワシントン州
に下った大陸北部からの移動民族のライフ
スタイル
と一致するものです。

「ケネウィック人」の頭蓋骨は長く薄い形をしており
、これは環太平洋の古代人類(日本のアイヌ
人やポリネシア人)と酷似


このことから「ケネウィック人」は、アジア沿岸に
深いルーツを持つ可能性が高い
といいます。

写真家星野道夫さん
は、鯨の回遊する豊潤
な海、鮭の上ってくる川、大空に舞う白頭ワシ、
熊の生息する深い森など、雄大な自然に囲ま
れたアラスカの地を深く愛し
ました。

この土地には、先住民族であるクリンギット族
やハイダ族の人々
が暮らしています。

星野さんの遺作「森と氷河と鯨 ワタリガラス
の伝説を求めて」
は、クリンギット族のワタリ
ガラスの伝説
を求めてアラスカを旅し、森と氷河
と鯨についての写真と文章をまとめたもの。

その中の一章、”エスター・シェイの言葉”



ケチカン郊外にあるクリンギット族の村を訪れた
星野さんは、当時80歳であった村の古老、
エスター・シェイさん
に会います。

彼女はクリンギット族の古い伝統を体の中に
受け継いで
いました。

エスターさんは星野さんに対して、ある大切な
投げかけ
を行います。

「古くからの言い伝えでは、私たちハイイログマ
のクランは、大洪水の時、山を越えて、川を
下りながら海外線にだどり着いたらしい。

クリンギット族、ハイダ族だけでなく、
アサバスカンインディアン、そしてエスキモーの
人々まで、ワタリガラスの神話を持っている
のはなぜだろうか。

その偶然性を長い間不思議に感じていた。
でも、今は違う風に思える。

それは決して偶然ではなく、人々はワタリガラス
の神話を抱きながら、アジアから新大陸に
渡ってきたのではないか?」

道夫さんと生前に親交を持っていたクリンギット族
のストーリーテラー、ボブ・サム氏


私は2001年、「森と氷河と鯨」の本を持って
アラスカの各地を妻と巡り、道夫さんに縁を持つ
先住民の方たちと交流することができました。

ケチカンの街ではエスターさんや息子の
ウイリー・ジャクソン氏
、そしてシトカでは
ボブ・サム氏
先住民の神話や自然との関わり
など、とても貴重な話をいろいろと聞かせて
もらいました。