『誰でも学べるようになる社会へ』
子どもの貧困が深刻化しています。貧困状態にある
子どもの割合は6人に1人。
「食事が学校給食のみ」「経済的な理由で進学を断念」
といった深刻なケースも少なくありません。
子どもの貧困率というのは、平均的な生活ができない
所得水準の家庭で育つ子どもの割合を示しています。
が基準を定め、世帯所得を
1人当たりに換算して、国民全員を所得順に並べ、
真ん中の人の半分(2012年は122万円)に満たない
18歳未満の子どもの数で算出しています。
日本での子どもの貧困率は、2012年に過去最悪
の16.3%になりました。
2003年以降数字が悪化し続けているのは、母子
家庭が増え、母子家庭の8割の母親は働いている
のに、非正規で平均179万円。
両親がいる家庭や父子家庭が平均年収603万
円と、大きな開きがあることが原因の主といわれて
います。
格差社会といわれる米国では様々な人種がいる
中で、貧困がある現実がよくうかがえますが、日本
ではそこまで格差が起きていることに気づきにくい
所があります。
まさにそれこそが問題。
米国の場合、貧困問題が解決されていない
ことは明らかで、だからこそみんなが問題に
取り組み、お金も動いています。
ところが日本では、存在しているにもかかわらず、
貧困はあまり語られていない現状。
だからこそ、問題が根深く残ってしまっています。
先進国において、十分な教育を受ける権利は、
基本的人権のひとつであり、教育の機会均等
はもっとも重視されるべきもの。
しかし、貧困な家庭で育った子どもは、不登校
になったり、上の学校に行けなかったりで、貧困
の連鎖を生んでいます。
かつては、大学も学費の安さから親の所得や職業
などに関係なく、本人の能力と意思さえあれば
入学できたのですが、現在は、国立大学の授業
料だけでも年額55万円程度かかります。
このほか、教科書代などの必要経費を考えると、
貧困の家庭では、その支出は無理。
それに加え、日頃から塾や進学教室などに通って
いないと合格が厳しい状況。
ある程度の親の所得に余裕がないと進学でき
ないという現実が見えます。
東京大学大学院教育研究科・大学経済政策
研究センターが2009年に発表した「高校生の
進路と親の年収の関連調査」によれば、
年収400万円以下の家庭では、4年制大学
進学率が31.4%にとどまるのに対し、年収
1千万円を超える家庭では62.4%に達して
います。
まさに、親の所得格差が教育格差を生む
ことになっています。
貧困家庭にある子どもは、いじめや児童虐待
の被害にあったり、不登校や高校中退にも
なりやすい。
学習にも身が入らないため学力低下を招き、
生活習慣も確立できず、人格発達にも悪い
影響を与えているとききます。
現代は、人をマネジメントする力や数多ある情報
を取捨選択し、新しいものを創造する力が、
リーダー層のみならず、すべての層に求められる時代。
現在の教育手法や教員育成の在り方は20年前
からそこまで変わっていないという話を聞きます。
子どもが将来を生きられるための力が、お金が
ないと身に付けられないなんてことがあっては
ならないこと。
社会全体の仕組みで身に付けられるように担保
していくことが、大切です。
カーン・アカデミーは、投資アナリストだった
サルマン・カーン氏によって2006年にシリコンバレー
で設立されたNPO(非営利組織)。
「世界水準の教育をどこでも、だれにでも無償で
受けさせる」との理念を掲げ、数学や生物学、物理
、世界史など5000本以上の短い講義ビデオと
10万問の練習問題が無料提供されています。
世界で最も注目を集めるオンライン学習プラット
フォーム。
米国では、教室での勉強をサポートするツールと
して実際の教育現場でも導入されており、ビル
ゲイツ財団やグーグルが財政的な支援を行って
いることでも知られています。
現在、米国の学校、特に高校において、カーン・
アカデミーの教育が導入されており、授業について
いけない生徒に効果を発揮しているとききます。
授業が始まる前に動画を視聴し、分からない
ところを授業で教師に尋ねる仕組み。
通常、先生1人に生徒40人の場合、理解の度
合いは人によってまちまちにもかかわらず授業は
進みます。
しかし、動画を事前に見ることで自分のペースで
、理解できるまで、繰り返し学ぶことができます。
学習者の学習を励ますために、知識マップを提示
したり、問題を解くとポイントやバッジがもらえる
ようなシステム。
バッジは一定水準以上の学習難易度に到達した時
にだけもらえ、知識マップは学習者が今後勉強すべき
科目と学習目標との関連を一気に図にしてみせて
くれるもの。
このような情報は学習者が勉強をより一生懸命できる
ように励ますだけでなく、動機付けになり学習能率を
向上させてくれます。
カーン・アカデミーに12億〜13億円の資金で支援する
ゲイツ氏は、社会貢献という狙いがある一方で、
マイクロソフト目線で見れば、タブレットやスマホの
コンテンツで子どもたちが学ぶことでOSやハードウエア
の売れ行きは伸び、機器の進化にも貢献するという読み
があるようです。
学校教育が無料である限り、新たな教育コンテンツが
出たとしても有料であれば広がりは限定される。
カーン・アカデミーのような無料の機会が広がれば
社会に還元され、業界全体のパイを広げる側面も
あるとみています。
また米国ではハーバード大、MIT、スタンフォード大
など世界トップレベルの大学のオリジナル講義を
オンラインで無料受講できるようになっています。
2012年に米国で始まった教育サービス、「MOOC」
(大規模オープンオンライン講座)による高等教育
の無料化が英語圏を中心に進んでいるもの。
日本でも同様の動きが徐々に見られ、「誰でも学べる
ようになる」 というオンラインを用いた教育サービスは
、社会に大きな変革をもたらす可能性が大きいもの。
「学びとは本来、ひとつの答えを求めることが目的
ではなく、それぞれが自分で考えて答えを出すもの」
に向け、新しい光であるオンライン 教育サービスの
今後に、「サス学」を通して私自身も関わっていきたい
と思います。