『われらをめぐる海』
”海は流れ、荒れ、たゆたい、育てる、
陸を侵食し、生命をうばう破壊者である一方で、
20億あるいは30億年の昔から、「生命の母」で
あり続けてきた。
真水に近かった海水が茫々たる時間をかけて
塩分を増し、栄養分を蓄える間、生命もまた
誕生の準備をしていた。
そしてわれわれ人類は今も体内に血液という
名の海を持っている”
(レイチェル・カーソン著「われらをめぐる海」)
ハワイのオアフ島で今年7月から、スーパーやレストランで
ビニール袋を使用することが禁止されたそうです。
違反した店は、1日100ドル(約1万2000円)の罰金。
繰り返し行うと1000ドル(約12万円)まで増やされると
いいます。
肉や魚などの一部商品を除いて、小売店ではレジ袋の
代わりにリサイクル可能な紙袋や、生物分解できる
レジ袋のみが許可されるのだとか。
ビニール袋は、魚やカメ、鳥などを傷つける可能性があり、
また、風で飛ばされて環境を破壊しやすい。
また、自然分解もされにくいことから、今回の条例による
規制となったもの。
「サイエンス」誌2015年2月は、海底に沈んでいるものを
含めて、世界中の海のプラスチックごみの総量は、
約1億3000万トン。
その量は毎年約500~1300万トンずつ増えているという
論文を掲載しました。
この論文で興味深い事実は、海に新たに流れ出るプラスチック
ごみのうちおよそ半分が、中国・インドネシア・フィリピン・
ベトナム・スリランカの5カ国から排出されているということ。
米国の海洋環境保護団体「オーシャン・コンサーバンシー」
によれば、今のまま続くと今後10年ほどで、プラスチック
ごみの総量は2億5000万トンにまで近づくことになると
いいます。
これは、「海にいる魚3トンにつきプラスチックごみ1トン」
の割合に当たるもの。
オーストラリアの海岸に打ち上げられていたウミガメの
体内からは、何と!317ものプラスチックの破片が
出てきたと聞きます。
同団体の調査によれば、上記の5カ国はそれぞれ異なる
問題を抱えているようです。
■中国:
主な問題はごみ収集のインフラ不足にある。中国で回収・処理
されているゴミの量は、全国で平均約40%で、地方では4~5%。
これを解決するには、廃棄物を管理するシステムを整備して、
プラスチックごみが海や川へ流れ込まないようにする必要がある。
■フィリピン:
すでにごみ収集のシステムが確立されているが、ゴミを収集した
トラックの多くが、ごみを河川などに捨ててしまうのが問題。
廃棄物処理場に運ぶと料金を支払わなければいけないから。
また、たとえごみがごみ処理場の収集されたとしても、多くの
収集所が川や海の近くにあるため、野外に集積されたゴミが
川や水路へ流れ込むことになってしまうという。
(http://www.huffingtonpost.jp/2015/06/19/amount-of-plastic-in-the-ocean_n_7618660.html)
「ごみ問題は地方自治体の問題ととらえられがちだが、
海のごみは、ごみが地球全体の問題であることを教えて
くれる」と同団体は語っています。
海から海岸に漂着したごみは、海流や風、海岸の地形や
向きによって、特定の地域に集中して大量に流れ着きます。
一度回収しても、その後も繰り返し漂着。
また海岸に漂着するごみは、海洋ごみの一部であり、
多くのごみは海の中を漂流しているか、海底に沈んで
いるようです。
プラスチックゴミによる経済的な損失は世界で年間
130億ドル。また、100以上の生物が生存を脅かされて
いる状況。
ドイツでは、プラスチックから滲み出た科学成分が、
動物の繁殖器官に影響を与えることが分かった一方、
カルフォルニアの自然保護活動家は、ゴミを内蔵に
詰まらせ、苦しみながら死んでいくクジラやイルカの数
が急激に増加していると訴えています。
プラスチックごみは、波などによって細かい破片となり、
海洋生物が破片をのみ込むなど、食物連鎖を通じて
人間や生態系に悪影響を与える懸念が生じています。
この問題に対して強い関心を持ち、「世界中の海のゴミ
を無くし、綺麗にしたい」という壮大な夢を持った20歳の
オランダ人青年、ボイヤン・スラットさん。