『情報という感覚を失うとき、国が滅びる』
“終戦の放送をきいたあと、なんとおろかな国に
うまれたことかとおもった。
(むかしは、そうではなかったのではないか)・・・
いくら考えても、昭和の軍人たちのように、
国家そのものを賭けものにして賭場にほうりこむ
ようなことをやったひとびとがいたようには
おもえなかった”
(『この国のかたち』司馬遼太郎著・文春文庫)
「安全保障関連法案」が本日午後の衆院本会議で、
自民・公明・次世代の党による賛成多数で可決され
、衆院を通過。
今国会は9月27日まで会期が大幅延長されており、
法案が衆院を通過したことで、9月中旬には、参院
で議決されなくても衆院で与党が再議決できる
「60日ルール」が適用できることになりました。
与党は、従来、このような重要法案を100時間
くらいの審議で決めてきました。
政府は、この法案は14日までに113時間以上も
審議されたので、国民の理解は深まり、決める
ようにしたと主張。
しかしそもそも、この法案は11の法律から成る
もので、1本あたりでは10時間ほどしか審議して
いないことになります。
日本の本来の主権者である私たち国民は、
この国会審議を通じて「安全保障関連法案」
の全体像を知ることができたのでしょうか?
朝日新聞が14日付朝刊で掲載した11、12両日
実施の世論調査では、安倍内閣の支持率は
39%と6月調査と同じでしたが、不支持率は
前回の37%から42%に増え、支持率と不支持
率が逆転。
安保関連法案を今国会で成立させる「必要はない」
と回答した人は66%だったのに対し、「必要がある」
は19%。
この法案に反対する人たちの輪が広がっており、
14日には各地で反対集会が開かれ、専門分野を
超えた「安保関連法案に反対する学者の会」の
賛同人は1万人に達する勢いです。
発起人にノーベル物理学賞の益川敏英京大
名誉教授らが名を連ね、天文学や数学、
宇宙物理学、医学といった理系分野から、
音楽や演劇などの芸術分野まで、男女や
年齢も様々な学者・研究者が賛同しています。
事実と論理を踏まえた上で次に進んでいくのは、
憲法学であれ、自然科学であれ、学問の基本。
それを軽視すれば道を誤る。”
呼びかけ人の一人で、東京電力福島第一原発事故
の政府事故調査・検証委員会のメンバーだった
吉岡斉・九州大院教授はこういいます。
”『原子力ムラ』は人類や社会の利益と関係なく、
自分たちの都合で利権を拡大し、あの事故に至った。
『安全保障ムラ』にも同じ空気を感じる」。”
専門の科学技術史から見ると、戦後、各国で宇宙や
核など軍事関連の技術開発が盛んになった。
その後も世界は軍縮に向かっているとは言えない。
背景には原子力ムラ同様、どの国や組織にも
「権限を拡大したい」という思いがあるとみる。
”法案が成立したら次はもっと制約をなくそうと改憲論
が勢いづく。その次は派兵、さらには核保有へと
つながらないか心配だ。”
(参照:朝日新聞「安保法案NO、学問の垣根越え 学者9766人が賛同、廃案要請」)
東京都内で開かれた日弁連主催のシンポジウム
には、弁護士などおよそ200人が参加し、作家で
日本ペンクラブ会長の浅田次郎さんがこう発言
しました。
”日本が今なすべきことは、被爆国であり、戦争放棄
をうたう憲法を持つ国にしかできない真の国際貢献
のはずだ。
今回の法案は憲法の拡大解釈の限界を超えている。
どうしても集団的自衛権の行使を認めるなら憲法
改正を行うべきで、そうでなければ法治国家とは
言えないと思う。”
”自分の弱みを見せたくないという、
いじましい庄屋の感覚が全てでした。
電気でいえば、自らを情報の不導体にしてしまった。
いわば、なれの果てがここにあります。
われわれ日本民族がまじめだったのは明治38年の
日露戦争まででした。
明治という時代は、政治家も官吏も、軍人も教員も、
情報を獲得することに、生かすことに実に敏感でした。
情報という感覚を失うとき、国が滅びるのです。”
(司馬遼太郎)