#F016 集まりの場こそ美しく着心地良く
この数年間、人と集まる機会が極端に少なかったので、オケージョンの服をアップデートしていない人も多いはず。私自身、買わなくては、と思いつつ、正直まだコロナ禍の前に買ったものが現役です。フォーマルな服は、1年の中で着る回数が少なく、デザインも比較的タイムレスなので、生命は長いです。私は、ランバンの黄金時代を築いたアルベール・エルバスのシルクのドレスが好きすぎて、ブラックタイ・イベントなどにはやっぱり手に取ってしまいます。ロング丈で首元が詰まって背中は開いているスタイルが私の定番。黒以外は、パープル、黒に近いネイビー、ピンクベージュ、つまり日ごろから偏愛する〝くすみカラー″のドレスたちです。タイムレスとはいいながら、今年らしくアップデートするなら、ジュエリー、ヘアスタイル、シューズでしょうか。羽織るアイテムでも雰囲気が変わりそうです。
友だち同士の食事なら、そこまでフォーマルではなく、パンツスタイルで出かけることもありますね。足元もビジューサンダルとかではなく歩きやすいブーティを合わせて心地よく、上半身だけはシフォンやサテンなどやわらかさと透け感やツヤ感があるものにします。お食事の時、やはり目が行くのは上半身なので、力の入れどころは上半身と思っておくと、気持ちがラクです。シアー感のあるトップスは上品に着たいので、自分なりにセレクトのルールがあります。たとえば同じ長袖でも七分袖などの短めは避け、むしろ手の甲が隠れるくらいのデザインを選んで極力肌を見せないこと。その上から腕時計を巻いても、反対に袖で隠すように着けても素敵なんです。首元も同じで、ハイネックのものを選んでシアーな首元に大ぶりなコスチュームジュエリーのネックレスをしたり、ブローチを着けたい時はインナーを着て、シアーな生地とともに留め付ければ、きれいに着けられます。
ドレスアップのアイデアソースとしては、外国映画が欠かせません。夜会やディナーの場面が多いので、ストーリーも追うけど衣裳や調度品、使われている小物、しぐさなどを食い入るように見て、脳に情報を蓄積するんです。そういう時の執着心と集中力には自分でも驚きます(笑)。小説も、「華麗なるギャッツビー」でフィッツジェラルドが描写しているドレスやインテリアはどんなものなのか、想像をふくらませたり。アントワネット風のドレスはさすがに真似できませんが、英国貴族のドラマ「ダウントンアビー」に出てくるドレスは、華美すぎずシルエットも現代的。ハイジュエリーじゃないビジューのロングネックレスをして、肘上までのシルクのグローブの上からジュエリーを着けたり、帽子にネットをあしらったり。穴が開くほど画面を見て、自分の手持ちのアイテムでチャレンジしてみるのは私の密かな楽しみです!
IKUEさん、パーティは2週間後、映画をじっくり見てる暇はないわ!! というお声も聞こえそうですが、そんな時こそ、服だけ考えるのは失敗のもと。繰り返しのお話になりますが、まず会場のフォーマル度、立食か着席か、メンバーは? 照明は? どんなタイプの椅子? などをできるだけ具体的に頭に入れて、それならこんなファッションでそこにいる自分が素敵だな、という絵を描きます。パーティにこそ、西校長流ドラマスタイリングの考えが大事です。寒い暑い、シワシワになる、足が痛い、バッグやネックレスが意外と邪魔etc.……などという「想定外」がなく、快適に過ごせたら、きっと身のこなしも颯爽として素敵じゃないですか。
おりしも、今年のトレンドワードは『クワイエットラグジュアリー』。『静かな贅沢』の直訳の通り、ここ数年のブランドロゴを主役にした派手なデザインや装飾や柄ものは影を潜めて、素材やシルエットの上質さを楽しむトレンドです。華美ではないけれど存在感と品格が出て、オーバー40のファッションには是非取り入れたいテーマです。ジュエリーや小物も、気合が入るとつい足し算になりがちですが、引き算でポイントをはっきりさせたほうがご自身が映える気がします。
ファストファッションももちろん勢いがあって魅力的ですが、上質な素材で丁寧に仕上げた美しいシンプルなデザインのアイテムは、手にした満足感と肌に触れた際の高揚感が忘れられない体験になると信じています。年末はドレスアップして友人や家族、仲間たちと思いっきり楽しみたいですね!
こっくりとした秋カラーのコーディネート。ジルサンダーのウールのワンピースは、ソックス合わせで。シューズはトッズ。小ぶりのバッグはプラダ。