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”人と自然を調和しながら『持続可能な未来』を共創する”

『狼信仰と気の元』

2016.01.14 22:20

「先生、この間オオカミの神社に行ってきたんだよ」

サス学の授業が始まる前、一人の生徒が話しかけてきてくれました。

話を聞くと、冬休みに埼玉県秩父市にある三峯神社へ行ったところ、

狛犬の代わりに狼像が建立されていて驚いたといいます。

古来から、秩父山系には狼信仰の神社が多くあります。
昔、日本ではオオカミは草食動物から農作物を守ってくれる山の神、

つまり「大神」とされてきました。


稲作畑作を中心とする農業で、シカやイノシシ、ウサギなど害獣を補食してくれる

オオカミは、人間にとっては決して害獣でなく、むしろ農作物を食べられてしまうと

飢饉につながるため、それを防いでくれる非常にありがたい存在だったのです。


各地の昔話などで、山賊や鬼などが村人を脅し、生娘を生贄に差し出させたり、

作物を奪うことが描かれていますが、それらをオオカミが懲らしめて村人から

感謝されたという民話伝説も残っています。


山の神の使いとして信仰の対象となり、「大口之真神」「大神」と呼ばれます。
大きな口をもつ狼の意であり、「真神」としてオオカミは神に擬せられる

動物の中でも真の神と考えられていました。


江戸時代中期に外国からまず九州へ、そして日本中に狂犬病が広がります。

狂犬病にかかったイヌやオオカミは凶暴になり人を襲うようになりました。

しかし始めのうちは、猟師はオオカミを神の使いと思っていたため、

危険とはいっても銃で殺すことはできませんでした。


でも、猟師たちはオオカミのエサであるシカなどを撃ち殺し、個体数を

減らしてしまいました。また、西洋文化が入ってくると日本人は家畜を飼うように

なったため、どんどん森林を切り開いていきます。


住処や餌を奪われたオオカミは、家畜を襲う害獣として殺され絶滅していきました。

エゾオオカミは1889(明治22)年に絶滅、本土のニホンオオカミも1905(明治38)年

には絶滅。

「三峯神社」は、奥秩父三峰山山頂、標高1102mに鎮座。
秩父三大神社のひとつとして数えられ、ヤマトタケル伝説お犬様信仰など

伝説が数多く残っています。

東征中にこの地を通ったヤマトタケル命は、三峰の山々の素晴らしい風景に

感動し、イザナギ命・イザナミ命の国造りを偲んで祀ったのが起源といわれています。

修験道の祖・役小角が修業し、弘法大師空海が観音像を安置したともされています。

この三峰神社は、自然の気に溢れたパワースポットとしても有名で、

「氣守」を頒布していることでも有名。

「気」の 旧字 「氣」は、「气」と「米」を合わせた形。
「气」は雲の流れる形で、雲気( 雲状のもの)を表しています。
「气」は生命の源と考えられていて、「米」( 穀類) の意味)
は、その「气」を養う 素
として加えられました。


「气」「米」を合わせた「気」(氣)はすべての活動力の源泉で、日ごろ使う

言葉にも、その意味が反映しているものがあります。

例えば、活動の源となる気力が「元気」。そして、人は「気息」( 呼吸)する

ことで生きています。