『慈愛あふれる良寛さんの魅力』
2016.02.11 22:00
数年前、新潟を旅した際、良寛さんの足跡を
辿ったことがあります。
息子が生まれたとき、有難くも良寛さんから
一字をいただきました。
すぐれた漢詩や和歌を詠み、多くの書を
書き遺した良寛さん。いずれも日本美の極致
といわれる高い評価を受けています。
その書のすばらしさは、並々ならぬ努力を
積みながらそのことを露にも表さず、
童心と戯れるように書を書いたところに
あるといいます。
最後に筆を放すとき、筆が紙から離れるのを
惜しむかのように、大事に、大事に、書き
終えています。実に慎ましやかに、ためらい
がちに筆を収めているそうです。
赤子のようにあどけなく、純粋に、ただ筆の
動くまま、自然に任せ、無欲で無心。
清貧を貫き、命あるものに限りない慈しみを
注いだ、良寛さん。
山を下りて里へ托鉢に出てきたものの、遊び
をせがむ子どもらといつしか夢中になって
遊ぶ良寛さん。その姿を見た村の大人たちは、
乞食坊主と呼びました。
しかし、良寛さんは単に遊んでいたのでは
ありませんでした。
流行り病で幼い命を亡くす子どもたち、
飢饉が訪れて年貢を納められない代わり
に売り出される子どもたち、を不憫に思い、
せめて里にいる間は一時の楽しさを味わって
ほしいとの慈愛から出た、手毬遊びなどでした。
良寛さんは黙っていても、人の心を和ませる
不思議な力を持っていたといいます。
それは、根底にきびしい禅の修行があった
からなのでしょう。
良寛さんにとって人間は自然の一部であり、
山川草木、この世に存在するものは、全て仏さま
だと思って大切にしたのでしょうね。