『自分だけではなく、誰かのために』
梅雨だというのに初夏を思わせる陽気が続いています。
昨日は、息子の通う学校で文化祭。
中学2年生はクラス毎に、演劇。「ロミオとジユリエツト」
「白雪姫」などの古典から、「半沢直樹」、「ビリギャル」
などの現代劇を幅広く、楽しませてもらいました。
今時の若者たちの元気で楽しそうな姿を見ながら、
既成の価値観や枠組み、世間の常識にとらわれず、
世の中にあるものの中から自分がよいと思うものを
選び、合わせていく彼らを、頼もしく思いました。
”「ゆとり」「さとり」という言葉でひとくくりにされがちな
今時の若者たち。
しかし、彼らがつくる流行や文化を整理し、また、行動
や消費の傾向をひもといていくと、そうした言葉の
イメージには必ずしも当てはまらない、“新しいマインド”
が芽生えつつあることが分かってくる。”
2012年に情報感度の高い学生メンバーで構成する
若者マーケッター集団「ワカスタ(若者スタジオ)」を
創設し、学生と共同で若者向けの商品開発やキャン
ペーン開発などを行っている、藤本耕平さん。
著書「つくし世代 新しい若者の価値観を読む」
の中で興味深い分析を行っていて、とても参考に
なりました。
欲がなくあまり消費せず、「ゆとり」や「さとり」という言葉
でひとくくりにされがちな今時の若者たちについて、
彼らを表すキーワードは「つくし」だといいます。
この「つくし世代」の若者たちは、「1992年に小学校
に入学した人たちよりも若い世代」であり、「同じ時間
を使うなら、友達とのつながり感を高めたり、ハッピー
を共有したりするために使いたい」、と考えているそう。
その意味するところは、「自分だけではなく、誰かのため
に。」
1992年が分岐になっていることについて、藤本さんは
「教育環境の変化」(小学校の学習指導要領が
大きく改訂され、学力評価の基準は相対評価から
絶対評価へ)、「家庭環境の変化」(初めて専業
主婦世帯が共働き世代を上回った)、「IT環境の
変化」(ネットの急速な普及)、「経済環境の変化
」(バブル崩壊)、の4つを上げています。
スペンドシフトやエシカル消費がいわれる時代に生き、
SNSでつながることが当たり前である若者たち。
「昔は、家族や地域の人々がつながっているのが当たり
前の時代だった。みんなが支え合いながら生きている
時代だった。それが現在では、求めなければ、つながり
を得にくい時代になっている。
そういうことを幼少期から身にしみて感じているから、
つながりを求めたり、感じたり、確かめたりすることに
積極的な若者が今これほど多いのではないかと思い
ます。」(藤本さん)
一方で、SNSを利用しながらも、そこから自由である
術をも身に付けている「つくし世代」。
上からの押し付けを嫌い、世の中にあるものを「自分
ものさし」ではかり選択する「つくし世代」にとって重要
なのは、その情報を教えてくれたのが「誰か」。
2008年にiphone3Gが登場したとき、これに真っ先
に飛びついたのは、新しいモノ好きの30代より上の
世代。
「これは本当に使えるの?」と「つくし世代」は当初
冷ややかな目で見ていたといいます。しかし、自分に
近い同世代の人たちが「就活に使える」との口コミ
から受け入れていったそう。
膨大な情報が行き交うようになった現代社会の中で
生まれ育っている彼らは、企業が発信した情報に
対して商品やサービスには良く見せようとするバイアス
がかかっていることをよく知り、押し付けには反射的に
遮断します。
「自分が認めた誰か」こそが自分の選択判断の重要
な拠り所であるという特徴。
息子の日常を見聞きしながら感じるのは、若者たち
が日々の中で、人との関係を築いていこうと努力をし、
自分の存在意義をつくるための工夫をしながら、
自分だけでなく「自分以外の誰か」を意識しつつ
楽しみをシェアしようとしていること。
合理性がますます増していく社会の中で、仲間同士
でのちょっとした「つくし」が嬉しいという彼ら、彼女ら。
理解しつつ、大きく励ましていきたいと思います。